木の家といえば木の構造が思い浮かぶと思う。木の構造は日本では大きく4つに分けられ、「軸組み工法」、「2×4工法」、「ログハウス工法」、「その他(ハウスメーカー)」となる。県内で一番なじみの深いものは、軸組み工法であり、当事務所もほとんどこの構造で家を作る。最近この軸組み工法が2×4工法のよい所を取り入れ、プラットフォーム(床に合板を張り強くする工法)や耐震壁に合板を使うことが普通になっているため、両者は同じような形になってきている。しかし決定的に軸組み工法と2×4工法の違いがある。それは鉛直荷重をどの部材で支えるかということ。軸組みは無論「柱」で荷重を支え、2×4工法は壁で荷重を支える。ここが大きな違い。今日のブログは少々専門的な表現や記述が多いので読み飛ばして頂ければと思う。
軸組み工法の柱は、梁から荷重を受け取り柱で支える訳であるが、その接合部がとても重要なポイントとなる。昔はこの接合部を大工さんが刻んで作る「仕口」と呼ばれるものであるが、現在は「プレカット」と呼ばれ上写真の通り工場でこの「仕口」が機械加工される。この丸みのある形状のプレカットは軸組みの半数以上を占めるくらいまで普及しているが、当事務所ではめったに使わない。それは・・・
このプレカットは機械加工なので仕口は数種類程度の形状で統一される。そこに問題がある。新潟県は空間が大きく造られる家が多い。また雪の荷重で、関東の家より大きな力が仕口にかかる。図を見てほしい。これはプレカットで加工した仕口部分の模式図である。雪や床の加重は梁を通して柱にかかる。たとえば梁一本で約1000kg(10KN)の力がかかると、両端部には500kgづつに分散され柱に伝わる。この500kgをたった梁の端部15mm×120mmの断面で力を柱に伝えるのが今のプレカットの仕口である。するとこの15mm×120mmの面積では、片側529kg(松の場合、杉なら340kg)までなら木が押しつぶされなく支えることができるが600kgならNGとなる。瞬間的にはこの2倍1000kgまで大丈夫であるが、それでも1000kgというとそう大きい数字ではない。
一般的には床の積載荷重(梁用)が130kg/m2で、固定荷重が65kg/m2であわせて約200kg/m2で構造計算する。すると床の広さ10m2で2000kgになる。これは片側1000kgの重さとなりその広さは10m2で畳6枚くらいである。このようにあっという間にMAXの重さになり余裕がない。一方当事務所が標準としているクレテック金物を使った軸組みであると、529kgのところ1800kg迄大丈夫となる。瞬間的には3700kgまでOKという。この差は大きく、クレテック金物を使えば耐雪住宅や、12帖以上の広い空間をつくる時に有効であるため13年前から当事務所では使っている。
さらに地震時に梁が受ける引っ張り耐力もプレカット仕口ではクレテック金物より大きく劣っている。クレテック金物は少々高いが耐力的に今までの仕口とは大きく違うものである。
では、昔ながらの大工さんはどうしてかというと、大きい荷重がかかるところは、梁と柱の接合断面積を増やすように仕口を選んで加工していたのである。ところがプレカット加工では、工場でオペレーターが計画、加工するシステムで、いちいち細かい梁の力加減に対応できずに大きな力がかかっても小さな断面積の加工となる場合が多い。運任せに近いシステムともいえる。ただ、標準的な家や耐雪住宅でない場合は安価でよいシステムである。