2010.05.13緑字加筆
「色々調べてセルロースファイバーが一番良い」
とある建て主さんが言っていました。
さて、その言葉が頭から離れないで詳しく調べてみました。
その結果、オーブルの結論は全く依然と変わらず
「その建物の主旨にあった物であればどれでもよい!」
と言う事です。
住宅用断熱材は沢山の種類があります。
代表的な物は(青字はオーブルがよく使う物)
1 グラスウール
2 ロックウール
3 ウール
4 植物繊維(木質繊維)
5 セルロースファイバー
6 プラスチック系板状断熱材
7 〃 現場吹きつけ断熱材
8 植物系板状断熱材(コルクボード等)
です。
6のプラチック断熱材には更に5種類※に分けられますが、一応ひとくくりにします。
さて、なぜ「その建物の主旨にあった物であればどれでも良い!」のか。それはいつも申し上げているように、全て国やJISやISOの公的試験規格に「断熱材」として載っているからです。だから断熱という機能ならどれを使っても正しい施工ならしっかりと断熱材として機能します。
建築業界にはとーーっても不思議な現象があります。
それは、国やJISやISO等の国際機関の資料より、イチ建設会社やイチ工務店の説明を大事に受け取ると言う全く理解しがたい習慣があります。まず他の家庭に関わる商品分野では考えにくい習慣です。
どうしてこんな事がまかり通るのでしょうか?とっても不思議です。
さて、どの材料にも適材適所があります。一番多く使われている安価の優等生であるグラスウールやロックウールですが、これは土の中では使えませんし、常時水の多い所では使えません。逆にプラスチック系板状断熱材は熱が高くなる煙突周囲や給湯器等では使えません。
また住宅と同じくらい温度差ができる冷蔵庫ではグラスウールやロックウールは使いません。これは同じ厚さならプラスチック系板状断熱材方が約1.5~2倍ほど性能が良いので、グラスウールやロックウールを使うと冷蔵庫が一回り大きくなるからです。
また自然素材の断熱材を使いたい希望があれば、セルロースファイバー(古紙)やウール(羊毛)、コルクボード(木)、木質繊維系しかありません(藁もあるらしい)。しかし自然素材である以上虫の被害が必ずあるので、ホウ酸系の防虫処理をします。これで自然素材といえるかどうかは考え方次第です。私は自然界での分解機能が阻害された物はできれば自然素材と呼びたくありませんが、ホウ酸は水溶性なので外部では使用できませんが、ホウ酸は自然界では分解されず、また水溶性なので解体廃棄時には、環境に対し負荷が大きい欠点があります。またセルロースファイバーに直接触れて見るとわかりますが、繊維が細かいので(埃みたい)必ず気密シートとセット使用でないと、家の中にセルロースファイバーの綿埃が出来る事になります(特に第三種換気で室内が負圧になるとき)。木質繊維系(+INTELLO)はまだ一般的でないので情報がありません。
古民家で太い柱や梁を見せて生かす事が簡単にできるのがプラスチック系板状断熱材です。この断熱材は薄くても性能が高いので外張り断熱施工が容易です。グラスウール断熱材でも外張り断熱施工はできるのですが、厚くなり施工も複雑で断熱材以外でコストアップなりやすいです。
このように全ての素材には一長一短あり、その特性を踏まえその建物の主旨にあった物を使えば良いでしょう。やっぱり、正しい使い方をすれば、どの断熱材でもOKです。そうでなかったら、国やJISやISOが規定しその断熱材としての試験方法まで策定しておりません。あえて感覚的な事を言えば、新築住宅で現場で吹き付ける断熱材は吹き付けられた木を汚すので嫌いです(再利用不可)。
次の点もよくいわれますが・・・、
プラスチック系板状断熱材の経年変化と燃焼し易さを欠点にとらえているところがありますが、それも別に問題ではありません。最初からその経年変化分を加味※して造れば良いだけです。経年変化の少ないグラスウール等は、施工部位(電線や配管、筋かい周囲など)で断熱性能が基準値より落ちるのに対し、プラスチック系板状断熱材はその心配は無用ですからお互い様です。
燃焼性問題は以前ホームページのコラムで話題にしていますのでそちらをご覧ください。
とにかく性能評価は国等の情報が確かで、一企業や一工務店の情報を鵜呑みしてはいけません。
※プラスチック系板状断熱材の経年変化は「住宅用省エネルギー基準解説 21年度版」では下の表が付録にあります。但しこれは防露措置の計算用であって、断熱性能評価である熱損失計算は初期値である数値OKです。専門家でもグラスウールが優位になるように間違って宣伝している人がいます。心配な人はこの数値で計算しても良いかもしれませんが・・・。
当事務所で良く使うプラスチック系板状断熱はフェノールフォーム(ネオマフォーム)ですが、このメーカーにより更に独自の経年変化対策が施されています。
出典:(財)建築環境・省エネルギー機構『住宅の省エネルギー基準の解説(第3版)』
当事務所ではいつも公的機関が発表する資料により客観的中立立場で正しい情報をお伝えしたいと考えてます。