柏崎の港の前に建つT邸の10年目有料点検に伺ってきました。
表面も裸足で歩けるほどまだ大丈夫。 当時の価格は今より大巾に高い。
2003年から設計がスタートしたこの建物には、「緑の家」で初めてアイアンウッドのバルコニーの採用が決まりました。この提案と推薦をして頂いたのは建て主さんで、ここから「緑の家」ではアイアンウッドが標準になりました。
14年前にこのようなアイアンウッドを使ってバルコニーを作った家は殆どないと思われますし、10年前でもまだヒノキや杉の赤なら濡れる屋外でも大丈夫とか言われていた頃、「緑の家」はこれ以後(13年前から)迷わず全棟採用しました。今では昨年の東京オリンピックメイン会場設計者が設計した長岡の「アオーレ」でも使われております。そこからみると建て主さんの先見性は見事です。
上のように海に面したとても環境の厳しい場所において、13年経ってもどこにも問題がでていないこの木・・・名前はウリンと呼ばれる南洋材(フィリピンからインドネシア)の木です。
むかし私がまだ設計者として若い頃(設計事務所に勤務していた頃)、木は気候の寒い北の方が生長が遅いので目が詰んだ良い木がとれ、南の方(暖かい地域)の木は、育ちが早いので目が大きい粗雑な弱い木になる・・・と現場で大工さんから教え込まれました。しかしこれは正しいところと間違ったところが混在しておりました。
正しいところは、同じ樹種の木なら目が詰んだ方が強いといえますし、古い大工さんは国産材しか扱っていないのでこのような言い方になります。
間違っていることは、
暖かい地域の木のほうが腐朽菌や虫に対して強い木が多いことです。
近年は世界各国の木が簡単に手に入るようになり、南洋材のほうが本来腐朽菌に強い木ということが普通の設計者にも理解されるようになりました。
確かに考えればそのとおりで、
南の地域は高温多湿なので、木の腐朽菌の活動は大変活発で更に白アリも凶暴な種が沢山います。そんな中で木自身が自分を守れなければ直ぐに種が根絶してしまいます。だからそれらに対応して強くなります。そんな木を温暖な地域である日本に持ってくれば、それは強いでしょう。逆にフィンランドのような寒い地方では、腐朽菌は殆ど活動が出来ないし、白アリでさえいませんから、そんな中の木を温暖地である日本に持ってくれば、ひとたまりもありません。
国産の木では直ぐに腐る雨がかりの木の手摺であっても、木の弱点のホゾや欠き込みをして組み上げていても、全く問題なく13年経過しております。
こんな木を教え使わせて頂いた建て主さんには感謝しております。
床の水平を機械でチェック。室内はこのようなオートレーザーレベラーが便利。
さて10年点検では・・・
レベルで床の水平を確認しましたが、築後3年目で震度6強~6の中越沖地震を受けているにも拘わらず3/1000以内に全て納まっております。
太さ240角の柱も建築時のまま状況でホットしました。
両隣の建物は赤紙(立ち入り禁止)を貼られた強い揺れに見舞われた地域にも拘わらず被害はほぼ無し。ただ外構と車庫の土間コンクリートが割れたのですがこれは致し方ないと思います。
こちらは竣工直後の写真。こんなアクロバットな吹き抜けのある家なのに耐震等級2。
やっぱり耐震性は等級2以上が基本です。この耐震性を事務所設立時から愚直に守ってきたのが「緑の家」です。そしてその結果がこの建物なのでしょう。