疑義は深まる
べた基礎下の断熱材は構造材なのか?その3

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その2から続きです。

ものごと判断には、その歴史を見るとよいといわれており、この「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」の歴史を知ることが必要です。

基礎断熱工法は平成5年には既に北海道で一般的に行われて、本州にも基礎断熱を行う設計者がでてきました。ところが当時の国そのものだった住宅金融公庫(今の住宅金融支援機構の前身)では基礎断熱を認めておりませんでした。

しかし高まる要望で平成10年の秋に「追加仕様書」という特別な措置を行って認めることになりました。このように期の途中で認めた仕様変更は私が知る限りこの基礎断熱だけです。

このように20年前の公庫の資料も事務所には保管されている。建築物にとって歴史は重要な情報である。

その期途中で特別に出版された仕様書には既に次のような記載があります。

住宅金融公庫 平成10年度の別冊仕様書から転載

「居住空間(リビング等)が高湿となっている場合は、床下内も高湿度となり耐久性に支障となる結露やカビの発生が考えられる」・・・と

昨年今年の建築学会でそのような論文が発表されたと、またこのブログでも紹介しましたが、カビや高湿化懸念は20年以上前には既に予想され、わかっていたのです。それなのにこの一文を軽視されたか、それとも人の意見や論文には興味が無いのか・・・20年経った今でも実証論文がまだ出てくる不思議さ・・・。進歩がないというか・・・この事だけでもこの仕様書は実務的な重要な英知が記載されている書と評価出来ます。

そして・・・その平成10年の断熱材の施工位置の記載は・・・

明確に北海道とその他の地域を分けて記載されており、その他の地域のなかでもイエシロアリの活動が盛んな地域は、その基礎の断熱材の位置がこの当時は内側に限定されております。

次にそれから10年後の平成19年度の「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」=フラット35の仕様書から考えます。この19年に始めて住宅金融公庫の仕様書から「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」に変わりました。

そこには↓のような記載があり、平成10年住宅金融公庫とほぼかわりない内容ですが・・・

その分最後には「地中に埋めた断熱材は・・・あるいは何らかの工夫をした上で基礎の外側に施工する事が必要である」

と平成10年の記載より緩和され外貼り断熱も可能と示唆できる文が差し込まれております。但し具体例は避けております。

この記載をよく覚えておいて下さい。

次に最新版である平成28年度版の「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」です。

そこにその2で紹介した記載があるのです。

つまり、平成10年ではイエシロアリが生息する地域では基礎外断熱は不可。平成19年ではイエシロアリが生息する地域でも何らかの工夫をする事で可能にしたのですが、最新版(実際は平成25年版から記載あり)では基礎外貼り断熱材のハードルが再び上がり、イエシロアリがいる地域だけでなく、断熱材を地中に埋め込む場合は・・・となっている事に注視して下さい。そしてその可能にする条件がキッチリ示され、1、防蟻剤入り断熱材と2、ベイト工法の併用なら可能とハードルが上がっているような記載です。つまり平成19年の緩和からその数年間後には、防蟻剤入り断熱材だけでは厳しく、そのほかの薬剤予防等の併用が必要となり、厳しくなった訳です。しかし巷ではこのベイト工法と併用する基礎外断熱工法は殆ど聞かれません。普通に考えれば、19年からの数年間で臨床実験ができ、その結果厳しくをせざるを得ない事になったのでは・・・。

これをどのように解釈するかはユーザーさん(建て主さん)の判断です。

さて本題・・・この「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」にべた基礎のスラブ下に断熱材の記載があるか調べました・・・。

ありません。・・・ないのです。

まずべた基礎の図が少ない。更にべた基礎のスラブ下に敷き込む断熱材図は一切無い。

おおーあったと思ったら布基礎での土間コンの下の断熱材。これは構造のべた基礎スラブでは無いので違う。

マイナーな地下室の基礎にも断熱材が記載されているが、内側のみ。

実は平成24年の「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」には、自身で行った基礎の種別調査結果があり、平成7年にはたった3割だったべた基礎における住宅が、平成25年には8割を占めるまでになっているとわかっているのに・・・無いのです。

・・・

更に、

さらに

最新版の平成28年度版には24年時の調査があり・・・

べた基礎の採用率が92%にふえ、このことからべた基礎が今の住宅の標準基礎と言ってあたりまえと思われます。更に基礎断熱も11%と、市民権を得た断熱工法でしょう。ですがべた基礎のスラブ下に断熱材の記載が無いのです。チョーマイナーな地下室の断熱はあるのに内側・・・。これは意図的にスラブ下断熱材を避けているとしか思えない。

・・・

これで国内の主だった国監修の仕様書、解説書を調べましたがべた基礎スラブ下に敷き込まれた断熱材の図を見ることはありませんでした。

ただ・・・何度も申しあげますが、北海道内限定で造られた道監修の解説書にはその記載があり、また「住宅金融支援機構」の「木造住宅工事仕様書」にも北海道では基礎の外側ないし両側が望ましいと記載があり、寒冷地と温暖地をしっかり区分けしております。また寒冷地は凍結深度などからべた基礎が不利で通常少ないことも加えて書き添えます。

調べれば調べるほどこのべた基礎下の断熱材には、はっきりした記述がなく、是非ここは国交省で音頭をとって頂き、樹脂系断熱材がコンクリート同様の耐久性が期待できるのかを明らかにして頂きたいと思っております。つまり構造材と同様に扱ってよいかどうかの指針をお願いしたいと思います。それまでは設計者の個人判断での使用と・・・いえるでしょう。

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