高気密高断熱に必要な「気流止め」とは?

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気流止め・・・って聞いた事がありますか。

建て主さんから質問がありましたので少し詳しく説明したいと思います。

技術者(実務者)として説明する時は、公の資料(法律や告示または法律の基づいた解説書)で行う事が重要と何時も申し上げておりますので、今回も同様にバイブル本に添って説明します。

まず気流止めの存在を私が知ったのは高気密高断熱住宅を自身で設計した30年ほど前の一棟目です。

当時は断熱材の正しい入れ方の中で出てきた文言で気流止めとの言い方ではありません。室内及び断熱材の気密性維持の材でした。それから15年後の平成14年に始めて国で出版されたバイブル書↓の緑色の本にもまだ記載がありません。しかし当時高気密高断熱を勉強した人はこれらは当たり前の事で、今でも「気流止め材」として意識しておりませんが当たり前の断熱手法です。最近は「気密性数値より気流止めが重要」との表現もありますのでそれらを踏まえて解説します。

平成14年出版の高気密高断熱の最初のマニュアル

国のマニュアルでも15年前から「壁内気流の発生」とあり、その対策は気密シートが基本である図しか載っていない。この気密シート(防湿シート)が気流止めとしての基本構造。

次のその11年後法律改正により新たに出版されたのが解説本がこちら。

こちらも国監修(IBECは実質国交省の外郭団体)のこちらの解説本。

25年版に記載される基本的な気流止めが必要な理由は↓こちらです。

わざわざ基本事項とあるのは、他にも色々なパーツで気流止めのような事象があるのでそれらと混同しないような見出しとしてあります。その内容は平成14年本と全く同じ記載で変りありません。

赤線や赤色は私が書き込んでおりますが、簡単に要約すると

  1. GW(グラスウール)のような断熱材内部に簡単に空気が出入り出来る構造は不可
  2. 間仕切り壁上下部が断熱空間外とつながっている構造は不可

となります。

これを理解するには、14年本と同じ図の次のページに記載されている図をみればよくわかり・・・

壁のような煙突効果を引き起こす上下に長い断熱部位がある場合は、上下に隙間があるとその断熱部位の中を空気が流れ断熱効果がなくなるので、従来の木造軸組工法では必ず無意識に発生する外壁上下部及間仕切り上下部に気流止めを設けなさい・・・との内容です。

冷静に考えれば当たり前で、私共が高気密高断熱という言い方が多いのは、地上における断熱性は、移動する空気(気流)によって移動する熱が多いので気密性を先に考えその後断熱材を設置するよ!という意味合いが強いのです。

快適性において高速道路上で走る車に一番大事な性能は気密であり断熱性ではありません。冬に少しでも窓を開けていれば、車体にどんなに厚い断熱材があろうと車内は寒いままです。一方気密性があれば、断熱材が薄くとも(実際の車は結露しない程度断熱材しかない)暖かくなる事は体感上わかりますね。風速20m/sは過剰だけれども、その半分の時速40km(風速10m/s)でも同じ体感です。

このことに気づけば建物の気密性を確保する事は何より重要視されなければいけません。その延長で考えると断熱壁内でも同様の考え方となり、特にGW系は静止空気によって断熱性を担保しているので、上下高低差によって無風でも煙突効果が生まれる断熱壁内の気密性は重要となるわけです。

よって次のページには・・・

のような気流止めのある壁の図があります。天井の断熱材上部にはないのは、一般的に煙突効果が発生しがたい構造であるため上部を省略しても影響は限定的のためだからです。又次のページには・・・

とあり、気密シート(防湿シート)で壁上下を密封している図があります。天井上部には基本的なくてもOKです(天井下部は気密シート)。

私共「緑の家」は気流止めとしてできる限りこの気密シートでGW等を密封するやり方を選んでおります。これは乾燥した木でも一年の気候変動では伸び縮みを繰り返しており、気密材としては気密シートに比べ安定性に劣るからです。ですので14年前のバイブルには気密シートによる気流止めしかなく、これを国が広く広めるために気密シートを家中に貼らない簡素?な高気密高断熱の家でも採用できるように「乾燥した木」でGWのような断熱材の密封を考えたのです。

GWと同じ繊維系の未完成断熱材であるポリエステル。繊維系はこの中の微細な空間に静止空気が有ることで断熱性能を得る。

さてここでお気づきだと思いますが、

GWのような断熱材は、この断熱材自身の空気密封が必要ですが、プラスチック系の板状断熱材はそれ自身が密封(内部にフロン類似ガスを内包)されておりますので、単体で使うなら断熱材自身の密封は必要ありません。またGWと組み合わせて使う場合は、GWと密着させて施工すれば(合板が間に入っても同様)断熱材の性能劣化はありません。元々断熱材構成は各部材密着が原則です。GWだけに気流止めが必要なのは、GW自身が断熱材として未完成な素材であるためです。これを体感上でわかるのは、羊毛のセーターですね。風が吹かなければ大変暖かいセーターですが、風が少しでもあると断熱材の役目は全くありません半減しますよね。例えばGWにゴアテックスのパーカー(これが気流止め)を着て初めて本来の断熱効果が得られます。これが上で紹介した1.の要約文になります。

2は説明の必要は無いと思いますが、まだ多くの工務店さんでこのよう基本的な事が理解されないで施工が行われているので、マニュアル本ではあえて図を交えて説明しております。

最後に、

建物の気密性数値(0.9cm/m2以下)より気流止めが大事ということはありえません。これは・・・先ほどの高速道路上の車と同じく建物の気密性があって初めて次の断熱性(と計画換気)が出来るという基本中の基本であって、気流止めとは未完成な断熱材パーツの正しい施工方法で有り、プラスチック系の断熱材自身には必要ありません。複合的な使い方の場合は、それらが密着してそれらの分離層において空気が容易に流れなければそれで問題ありません。無論、断熱外とつながる間仕切り下の気流止め無しは論外です。

念の為・・・予め袋に入った気密層と一体型のGWはこれ自身は気流止めがいりませんが、この袋の気密層を連続させて家全体を気密施工を行う事が事実上困難なため、高気密高断熱と言われる建物にはまず使用しません。

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