超高断熱住宅を全棟実施した10年前から床下エアコン暖房のことについてよく聞かれたし、数年前までは床下エアコン暖房の講演の講師も何回かおこなった。その時にいつもあること言っていたが、ほとんど人は「はて?」という顔をした。それは
「床下暖房より冷房の方がむずかしい」・・・と。
まず床下エアコン暖房についてだが、まだ誰も口にしていない頃から「温度ムラ防止は床下内の静圧をあげることで簡単に解消できる」と私はいっていた。
今や誰もが口にする当たり前の理論的な事であるが、5年前の床下暖房の実践者の間でも誰も
「床下エアコン暖房は床下内の空気圧を高める事が重要」とは言っていなかった。その当時の専門雑誌にその証拠はある。
このように記録が残るので紙媒体はありがたい。
住宅の設計で重要な事は、
「家は多くの人が20年以上借金を背負って建てるので数年で理論が変わるような技術を導入してはいけないし、慎重になるべきもの」
と言うこと。そこを大事にしているのでオーブルデザインのHPやブログが20年間保存閲覧できる状態にある。
そんな点を踏まえて今年も大事な提言を改めてご紹介している。
そう、
超高断熱高気密の住宅では冷房が最も難しく、そのためまず一番大事なことは日射遮蔽である・・・と。
超高断熱高気密の住宅で暖房は至って簡単である。わずかな熱源で暖かくなるので居住後に寒いという指摘がまずない事である。ところが冷房は難しい。メンテナンス経費も含めセントラル空調を導入できる予算があれば解決する事は簡単であるが、多くの家では予算的に難しい。そこで仕切られた部屋があるときに様々な工夫(全館冷房する工夫)をする設計者が多いのである。それは良いことであるが、暖房と違って冷房の難しさは・・・冷気が悪さをすることである。
そして今日の本題で「冷気が悪さとは」についてであるが、
冷気は取り扱いを間違うと多湿被害=カビとなる。
冷風の拡散が遅く更に滞留するとその部分の温度が冷えることでRH(相対湿度)が高くなる。RH(相対湿度)が高いとカビの着床から発芽が短時間(3日から30日)で起こり菌糸が伸長しカビの発生となる。一度生えたカビは根絶も容易にいかないばかりか、変色をもたらす。
冷気を扱うときには細心のメンテナンス(目視が最適)を考えないといけないのである。また昨今の冷房連続使用でエアコンのドレンパイプが詰まり、ドレン水が室内に逆流する危険性が高いことからもメンテナンス性は最優先される。これが暖気を扱うときには全く必要無い。暖気は直接温風を同じ場所に吹きかける場合だけその部位の天然素材は避ければよい。
ともかく、
- 冷気は直ぐに拡散が原則で貯めないこと。
- 冷気を貯める、通す場合は冷蔵庫のような構造を想定し作る事。
- 冷房はバックアップ用機器があるとよい。
を考慮して設計する事。きっとまた数年後にはこの事が実証され多くの人が認知することになる。
3のバックアップは今回の千葉県の停電でわかるとおり、夏のエアコンの故障は生死も左右する場合もあり、そうでなくと最も我慢し難い生活必要機器のトップであると確信した。個人的にはTV、冷蔵庫、洗濯機のどれかが突然壊れても会社に出社できるが、真夏にエアコンが数日間壊れるとまともに就寝できなくて仕事にならない。他の物は外で代用できる(コンビニ、コインランドリー)が、エアコン故障時はホテルで宿泊くらいしかない。しかし家族もいるのでそれは現実てきではない。特に近年の故障しやすいエアコンではやはりバックアップのため、冷房用エアコンは無理に1台にして組むより2台体制がよい・・・と考える。