今年だからこその研究で、今回の最も時勢的な研究で選抜論文として通常の倍の4ページにわたる論文の紹介。内容は「換気の悪くない空間」と厚労省がステイツメントしたことに関連する研究(多分問題提起)である。当然この論文のF.A.は恩師の赤林先生である。
先に私が感じた結論を言えば、感染症対策として厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」はほとんど意味のない数値であり、感染症対策として根拠はないと感じた。この換気に限らず今回のコロナ騒動は科学的なエビデンスを無視する事例が大変多く、なぜこんなことになるのか・・・を考えさせられる。
このような普通の研究者が尻込みするような内容を研究し発表できるのが恩師を慕うところで私も見習いたいところである。
最初に申し上げるが、内容をお伝えしたいが4ページ分は全て濃い内容なのでこの論文の全文を見たい方はメイルを頂ければPDFでお送りする。
上図は厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の30m3/時一人の換気が行われる部屋を想定して、ウイルスを含む飛沫に見立てた粒子の濃度分布である。給気口と排気口の位置、形状をかえた4パターンで若干の違いがあるものの、総じて空間中に多くの飛沫が残る結果となる。
上図は厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の2倍となる60m3/時一人の換気が行われた時の結果である。先ほどの30m3/時一人と大きな差はない。
上図は厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の30m3/時の換気と同時に空気清浄機によって飛沫を除去する換気方式であるが、先ほど2例とは違いcase6では飛沫の残留がほぼなくなる。
このほか厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の3倍にあたる90m3/時一人の換気をシミュレーションした図もあるが、空気清浄機ありのcase6には及ばず飛沫は残留する。その4つで給排気口変えた結果を並べたのが下の図である。
最も確実なのがモデル6の天井カセット式の空気清浄機を設置した例であり、他は大小差はあるが、最小でも20%ほどは飛沫が残留する結果になる。飛沫の残留率がどの程度、今回の感染症に影響があるかはまだ知見がないが、言えることは・・・
通常の換気では飛沫で感染する感染症を効果的に防ぐことはできないと考えられる。よって厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の30m3/時の換気がどの研究結果によって得られた結果なのか・・・そのエビデンスはあるのか?が問題となるであろう。このステイツメントによって多くの飲食店をはじめ学校、医療施設は多大な換気をおこない、通常をはるかに超える光熱費を多く使ったはずである。省エネには熱心に国が推奨する断熱や換気方法で評価されるのに、多大な換気を行って過エネ換気を行ったのに感染予防効果が少ないとなれば、一生懸命努力し、資金を投じた事業者が報われることはない。そもそも専門家間においては当初から厚労省がステイツメントした「換気の悪くない空間=30m3/h一人以上」の30m3/時の換気のエビデンスはないはずと表明していたはずである。今回のCOVID-19では多くのことがあぶりだされたと考えるのは私の誤解だろうか?
むろんこの論文結果は一例であるが、そもそもなぜ従来から感染症は隔離と陰圧管理を行ってきたのかを皆がしっかり考えたほうが良い。ただ単に人のため希釈する換気なら多少の想定外は許されるが、感染症対策の換気は目的が全く違うから効果のないことを努力しても徒労に終わるのである。