表題の「防止」→「防水」に修正。
「緑の家」では過去殆どの家で透湿防水シートは「タイベック ハウスラップ」(以下タイベックとする)であった。ところが昨年タイベックが生産中止なりタイベックシルバーに統一された。それは良いが価格が3倍近くにもなり、現在の多くの「緑の家」では昨年からフクビのスーパーエアーテックス等タイベック以外となっている。そこで悩む・・・。
何回か、また前回ブログでご案内しているとおりタイベックをはじめとする透湿防水シートは過去2度ほど大きな事故があった。しかしこれは他メーカーの透湿防水シートも全て同じ。逆にタイベックのほうが数量が圧倒的に多く販売されているのでその改善が早い。であるからタイベックをを指定して使用していた。タイベックは一件で1mものを4から5本使うが、当時の価格は一本4000円(建て主さんへの提示価格)くらい。他メーカー品は3000円で1000円くらいの差なら一件で5000円なので特に気にしていなかった。しかしタイベックシルバーになり一本10000円近くする。このため一件では3.5万の価格差ができる。当然年間契約して大量購入している会社は半値くらいで買えるかもしれない。3000万円の住宅で3.5万の差なら1/1000なので、無視する考えもあるだろうが、建築費はとにかくこの積み上げであるから、出来るだけ同じ性能なら価格が安い方を選ぶことになる。
ここで・・・業界のガリバーであるタイベックのメーカーさんが今までのタイベックハウスラップをあっさり生産中止したことが少し引っかかるのである。通常大量販売する商品に欠陥が見つかるとメーカーはすぐに生産中止して改善を図る。しかも価格が一気に3倍にもなる商品へ切り替えを促すことは、いくら業界のガリバーメーカーにとってもリスクは大きいはず。いまだにメーカーHPにもハウスラップの紹介ページもあるし・・・。
タイベックシルバーが遮熱性能に優れ、夏型結露を防ぐ効果がある言われても、樹脂板状の断熱材で外張りする「緑の家」では、その恩恵は殆ど無い。ましてや断熱性能の向上なんて数値にもでないくらい小さい。
そこで理由を推測するために、メーカーである旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社さんのタイベックシルバーに一本化した理由を確かめると・・・
快適・長持ちを実現するの8つの性能
旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社さんのHPからまとめた
①遮熱性赤外線の約85%を反射
②遮熱耐久性アルミニウムの酸化劣化を防止
③透湿性湿気を逃がす無数の隙間
④防水性高密度繊維が水をブロック
⑤防水耐久性防水性残存率97%
⑥強靭性施工による損傷にも強い
⑦夏型結露にも有効な遮熱
⑧防蟻防腐剤の影響を受けにくい
①から⑦まではたいした理由ではない。となると⑧が廃番の理由なのか?メーカーは時折理由として多数の項目を挙げることが多いが、実はその中にホントの理由を紛れ込ませていることがある。それが⑧なのかもしれない。もしそうだとしたら、「緑の家」では構造材は無論、通気胴縁にも防腐防蟻剤(薬品)を原則一切使わない対処法で長期優良住宅を設計しているので、従来のタイベックやスーパーエアーテックスを使用しても欠点はほぼないことになる。防腐防蟻剤との相性は建てている最中だけ水に注意すれば終わりではない。透湿防水シートの役目は「1.1次防水が突破されたときの2次防水と2.断熱材の中に外気を通り抜けないようにする」であるから、仮に外壁仕上げ材(サイディング)の一部から雨水が侵入したときにそれを壁内部に入り込ませないようにすることが目的となる。つまり水とふれあう事は機能上想定されなければならない。しかしそれに対し協会の注意喚起にある意味を考えると施工時の雨水がかりだけでなく、竣工後の雨がかり防止も必要。だが水には触れないようにとなると2次防水の役目は果たせないことが矛盾しているので致命的な欠陥となる。透湿防水シートの団体である透湿防水シート協会からの声明は↓のとおり(2011年)。
今や日本の住宅において9割以上で使われる透湿防水シート。目的を達成する製品として本来なら致命的な欠陥があるはず(防腐防蟻胴縁を使用した場合)。冷静に考えれば雨水侵入から躯体を守るはずの部材が、水に弱いので雨水にさらすなとは何かの冗談なのか・・・だから1メーカーでなく協会での声明となったはず。多くの工務店さんも防腐防蟻剤で防水性に問題があったとは今更言えないので、この問題を大きく取り上げることも出来ないのである。
そこまで理解しているのにまだ迷っているのである。つまり3.5万の差は大きいが、それでも他の理由においても(熱劣化防止)タイベックシルバーが信用性が高いなら使うほうが良いのだろうか。もし良ければ皆様からのご意見を伺いたい。
コメント
10年以上前から御社のHPを拝見し、勉強させていただいています。
デュポン社の防水透湿シートでウェザーメイトプラスという製品はどうでしょうか?
たまに新潟市内でも見かけます。
外壁材が何であれ、防水透湿シートの耐久性は重要と思います。
https://www.nahtag.co.jp/products/%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%97-%E9%AB%98%E6%80%A7%E8%83%BD%E9%80%8F%E6%B9%BF%E9%98%B2%E6%B0%B4%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88-%E3%82%A6%E3%82%A8%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%BC/
ジムオ様
コメントありがとうございました。遅レスになり申し訳ありません。
知らない商品はまずメーカーに伺うのが間違いないと思い、メーカーの担当さんに伺うと、
「タイベックシルバーの他「販売しているのはもう一つでその商品だとおもうが、それはタイベックで通気胴縁が横の時に水が下に落ちやすいようにしわ加工がされている位で、性能的にはタイベックシルバーと大きな違いがない」
とのことです。一応担当者さんに面前で伺っているので間違いないかと思います。
縦胴縁やクロス胴縁等水が流れやすい工夫があれば通常のタイベックシルバーでよいかと思います。
はじめまして。静岡県に住む一ファンです。
先日の山下様はタイベックのソフトでしたが、私からはタイベック「ハード」について。
外壁メーカーのニチハにOEM品(品番:JF2000A)としてあります。
注意点は生産数が少ないところ。
念のため(情報の裏どりもかねて)私的に暴露試験をやっていますが、
サンプルの質感はタイベックハードと同じでした。
ちなみに50年耐久を謳っている一村産業のスーパーコートEXはいまいちでした。
https://www.ichimura.co.jp/products/pdf/super_ex_catalog.pdf
(私的な暴露試験の結果)
ご参考まで。
橋本様
コメントと情報をありがとうございます。
>ちなみに50年耐久を謳っている一村産業のスーパーコートEXはいまいちでした。
リンク先の宣伝だけを見ると、防腐防蟻剤への対応が不明なので良い印象はありませんでした。
無難な透湿防水シートはやはりタイベックシルバーでしょうか・・・。
橋本様
はじめまして。神奈川県の山下です。横から失礼いたします。
勉強になりました。ありがとうございます。
以下、追加情報を載せておきます。
先程、旭・デュポン社に問い合わせたところ一般的な工務店さんでも50本単位で名入れ対応品として直接注文が直販しているとのことでした。これもOEMという見方をしているそうです。注文や見積もりの際は直接旭・デュポン社へ問い合わせればOKだそうです。ソフト・ハードともに対応可とのことでした。
つまり・・・「自分で50本買う」か「持ってるところから単品で買う」の2択なので今までとあまり変わらない気もしますね、、、
調べる機会をくださった橋本様に感謝いたします。
そして、このような情報がアクティブに飛び交うサイト運営者の浅間様にも感謝申し上げます。
はじめまして。神奈川県の材木屋です。いつもブログで勉強させていただいております。
ご存じでしたらすみません。。。デュポン社ハウスラップは公式HPに記載の通り、OEM品の流通は止めておりません。つきまして同性能品が入手可能です。
ナイス株式会社のプライベートブランド「ZENIYA(ゼニヤ)」を取り扱っている販売店でしたら情報持っているはずです。「Z’S(ゼットズ)透湿防水シート」という商品名です。
従来、ソフトとハードがあったかと思いますがZENIYAではソフトを扱っております。
いつも一方的に勉強をさせていただいており、有料級の情報でも無料公開されている姿勢に感銘を受けました。
恩返しというほどのことではございませんが情報共有させていただいた所存であります。
繰り返しになりますがご存じでしたら失礼いたしました。
山下様
コメント及びいつもご愛読いただきありがとうございます。
Z’S(ゼットズ)透湿防水シート等OEMについては知りませんでしたので良い情報を頂き感謝します。選択肢が増えることは良いことですので今後検討したいと思います。
ありがとうございました。
asama様
訂正と補足です。
同性能品が入手可能 と記載しましたが「同品が入手可能」と訂正します。
「同じような性能の別商品」でなく、名前がデュポンハウスラップからZ’S透湿防水シートになっただけで同品が入手可能です。
製造もデュポン社で性能もハウスラップのままですので浅間様にとって以前と同じものをこれからも使い続けられます。
以下まとめます。
①デュポン社のラインナップから消去される。
②しかしHPには紹介ページを継続掲載。
③流通ルートが変わるだけでデュポンハウスラップは購入可能。
上記の①と②が浅間様の混乱の原因だと思い、③をお伝えしたくコメントさせていただいたというのが今回の趣旨でした。
しかしながら③を業界人に伝えきれていないデュポン社はある程度の販売ロスが発生しているはずで今後もしかしたら追加アナウンスがあるかもしれませんね。
これからもブログ更新を楽しみにしております。
浅間様
過去記事に突然のコメント失礼致します。
兵庫の松尾設計室・松尾和也さんのfacebookの投稿でタイベックハウスラップが「消えた理由」と「復活した理由」が記載されておりました。
以下、コピペ
どれだけ聞いても分からなかったタイベック(白)が急に入手できなくなった理由と、復活した理由。。
数年前にタイベックの白がなくなるまでずっとそれ一択でした。本当に優れた製品なだけになぜなくなってしまうのか理解が出来ませんでした。(しかも業界トップシェア!)「そうまでして高いシルバーを売りたいのか!」とも思いました。
しかし、実態は完全に異なる理由からであったことをつい最近本社の方から直接伺って知りました。
コロナが急激に広がり、世界中の医療機関の方々の防護服が元々タイベックで作られていたことから、世界中から購入依頼が殺到したそうです。喫緊を要する最重要課題であったため、建築側の既存客を断ってでもそれに対応せざるを得なかったそうです。。で、コロナがかなり収束してきたこともあり、再出荷が出来るようになったとのことでした。
それならそうと言ってくれれば。。。なぜそんな大事なことをきちんと公表しなかったのか。。。それは未だに理解できません。。
コピペ以上
ハウスラップ、名前が変わったようです。
https://www.tyvek.co.jp/construction/product/housewrap/?fbclid=IwAR3ouJVRcLY7-anHbGgSY2ytI6fVB6yebisrEkYmCTlfMrAC2jSVlLtSCnw_aem_AXYyUjYOzpqbvRRNA9tc3K74EmCEOvht_jqn1T8hRh_rKle3Hf-OPTwg74ti5ci_Rac
山下様
貴重な情報をありがとうございます。
「復活」・・・ですか。
しかも理由が「コロナで医療の衣類のため」
メーカーの理由(建前)がそうなのかもしれませんが、仮に突発事項でハウスラップを廃止してタイベックシルバーにほとんどの顧客を移行できていたなら、再び単価の安いハウスラップを販売するメーカーのメリットは何もない・・・というよりわざわざ2倍以上にあがる売り上げを自分から下げる方針はたてません。もっともらしい理由ですが普通に考えれば、単純に顧客が離れていって思ったほど売り上げが伸びていないから再び販売したと想像できます。しかも住宅業界はタイベックシルバーを使える高額建物は順調ですが、とにかく安価にという一次取得者むけの建物は低調になっておりますので、わざわざ単価が2倍以上になったタイベックシルバーを使うより他社のシートに乗り換えるでしょう・・・との自己分析です。
で、緑の家はどうするのか・・・悩みます。
mkt様
いつもありがとうございます。
3.5万程度の差ならやはりタイベックシルバー・・・ですよね。これだけ普及した透湿防水シートはもう戻れない構成部材なのでしょうね。
専門的な知識はないのですが、
透湿防水シート自体の性能、品質、信頼性などがタイベック社とそれ以外のメーカーさんとの間で差があるのであれば、タイベックシルバーになってしまう値上げは仕方ないかなと思います。