構造最優先が「平等」と考える理由2・・・の実証

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つい最近「基礎に埋め込むスリーブ(ボイド管を含む)が適切に配慮されていない」とのコメントがあった。確かに排水管のスリーブとベタ基礎の相性はとても悪い。

上は2年前の「緑の家」の基礎現場である。ピンクの矢印部分に「緑の家」では初めてみる配管があってびっくりした。「緑の家」では通常この配管は行わないので、全てやり替えて頂いた。理由はこのやり方では対白アリ対策として甘いからである。しかしこの方法で施工されたところみると・・・

この方法で行っている現場は長期優良住宅の認定を受けるときにどのようにやっているのだろうと思ってしまった。

上の図は長期優良住宅のマニュアルから抜粋図である。詳しくは14年前(2009年掲載)の当HPをご覧頂きたい↓。

https://arbre-d.sakura.ne.jp/main/column/10-2/

つまりまず原則はコンクリート構造内やその下に配管を埋め込んではならない。次ぎにやむ得ない場合として1.さや管により容易に維持メンテナンスが出来る場合と2.住宅構造部に損傷なく取り替えできる外部の土間コンクリート下等のような配管の場合だけが許されているのである。そして巷では1のさや管が普通に行われており、それの現場がまさしく下の写真である。

ベタ基礎では平らな部分はスラブという重要な構造体で、特に外周囲部分は応力が集中する部位。

で、この写真をみると構造系の人は眉をしかめると思う。スラブの主筋と立ち上がり梁の主筋にスリーブはふれており、しかもスラブ内を400mm通っているため、その400mm部分の全ての鉄筋は「かぶり厚」を確保出来ていない。鉄筋は錆びる(酸化)するので、コンクリートで覆っていないと錆による膨張でコンクリートに深いヒビが入り、そこから水が浸入して更にヒビを拡大させるので、土に接する部分では60mm以上、立ち上がりなどで40mm以上、室内からは床で40(梁は30)mm以上のかぶり厚が必要と「法律で」決められている。よって上の状態であると、NGとなる。よく補強筋を追加でいれておけばよいとの考えがあるが、かぶり厚の少ない鉄筋が残っていると、そこが先に錆びて膨張して破壊され、そのヒビで他の鉄筋にまで悪い影響を与えるので、やはりかぶり厚のとれない鉄筋は除去(切断)しておくのが良い。

「スリーブ程度の鉄筋のかぶり厚がないところがあってもよいのではないか・・・瑕疵担保のチェックでも指摘されないので・・・」という考えは、全体の構造を把握しているその建物の設計者が判断することで有り、工事監理者(第三者管理でも)が判断することではない。そのために設計者には法的に重い責任がある。

ネットで「スリーブ 基礎 配管 貫通」で検索すると、このようなスリーブホルダーによる貫通部分の正しく施工された写真はほとんど出てこない。当然長期優良住宅でなければスリーブホルダーの必要はなく、かぶり厚やスラブの構造だけを気にすればよいのであり、斜めに配管を入れないことでかぶり厚を容易に確保出来ると思う(スラブを直角に貫通してからスラブ下で水平配管)。しかし長期優良住宅ではスリーブホルダー等つかって斜めに抜かなければいけない。さて・・・大がかりな配筋補強をしているのだろうか。

次ぎにやむ得ない場合の2の住宅構造部に損傷なく取り替えできる外部の土間コンクリート下等のような配管の場合であるが、これは「緑の家」では大変有利。もし布基礎であり土間コンなら土間コンは構造邸でないこと、そして床下1400mmあるので容易に土間コンを切って取り替える事ができるので、スリーブホルダーも要らないと判断できる。ただしこのあたりは審査官の解釈でかわるかもしれないが、構造に損傷を与えることなく容易に取り替えできるため理屈では問題ない。

排水管スリーブがおかしかった2年前の現場は上の通り綺麗に撤去され「緑の家」の標準であるピンク矢印位置に修正されている。

ここで・・・

なぜ巷ではスリーブホルダーによる地中貫通配管にするのかというと、「手間がかからずコストが安価になるから」である。そこで思い出してほしい。数日前に私は↓

構造最優先が「平等」と考える理由1
昔から「過酷事故や大災害時には子供や妊婦・老人を優先して避難させる」その理由がわからなくいつも考えていた。しかしあると...

を書いている。まさしく今日のブログの内容が上の事なのである。このようなスリーブ・かぶり厚まで理解している建て主さんはいらっしゃらないし、私もいちいちこのことを建て主さんに説明することもないが、構造・耐久が第一優先だから自然と優先で計画するのである。

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コメント

  1. Alfa147 より:

    記事に取り上げていただき,ありがとうございます.

    ・かぶり厚さが不足していても,塩ビ管が触れているので鉄筋は錆びない
    ・基礎梁部分を配管が貫通して補強筋がなくても,柱のピッチが狭いためそこまで大きな負担はかからない

    など様々な解釈はあるようですが,べた基礎である限り,立ち上げ部で貫通の方が無難なのは間違いないと思います.

    スリーブホルダーによる地中貫通配管の方が安い,とのことですが,基礎外側を深く掘り下げて地中で給水管と接続したり,スリーブホルダーに加えて中にもう一つ汚水配管を追加することを考えると,施工の手間や材料費を比べてもそこまで安くなるようには思えないのですが,どうなのでしょうか・・・
    給水の場合はホルダーの中に直接配管するのでしょうが,その場合にも隙間を埋める防蟻処理なども考えると施工不良も起きやすくリスクが大きすぎる気がするのですが,土の下に埋めて見えなくなれば問題ない,という考え方なのでしょうね

    • Asama より:

      浅間です。

      >施工の手間や材料費を比べてもそこまで安くなるようには思えないのですが,どうなのでしょうか・・・

      それが・・・安価になるのです。住宅建築は不思議で化粧をした仕上げの方がそのままの仕上げより安価になります。最も良い例がコンクリート打ち放しの基礎で、仕上げをした基礎の方が安価になります。
      地中内配管が安価になる理由は・・・当然施工に気を使わなくても良いからで、多少曲がろうが、多少が傷がついた配管だろうが、そのままにできる施工が安価になります。また地中内貫通なので玄関横にあっても見えないので気になりませんから、最短の配管施工が可能です。また防蟻シールとか防水シールなどを丁寧に施工して写真を見ることはありません。構造上重要な基礎スラブ周囲の貫通部分一つとってもこの有様ですから。

      >土の下に埋めて見えなくなれば問題ない,という考え方なのでしょうね

      残念ですが仰せのとおりです。面材耐力壁のめり込んだ釘でも同じで、あっという間にタイベックが貼られ見えなくなりますから問題ない、と考えているのかも・・・と思います。

      • Alfa147 より:

        浅間様

        材料費よりは、仕上げの楽さ、雑な施工の目立ちにくさを優先した方が、現場の作業的には日程管理上手離れが良く、効率が上がったように感じるのでしょうね
        耐力面材への釘のめり込みに関しては、以前から何度も記事にされていますが、結局は釘一本打つ時間を減らそうとするあまり、少し手元が狂ったりしても気にされないのでしょう・・・(作業の価値に見合った十分な時間、対価が与えられていない、というのもありそうです)
        筋交の材料不適による交換など、結果的にやり直しが発生すれば、手抜きによる見かけ上の効率などあってもないのと同然になってしまうわけですが、現場の意識も低いまま上げる機会もなく、施工マニュアルに書いてあっても読まれないのであれば、やはり誰かが監督するしか方法がない、というのが現実的な管理方法になるのでしょうね
        第三者検査を行う会社の中には、原理原則まで十分に理解されていない会社もあるようで、自分は施工不具合があっても対処がされていれば問題なし、と書くだけのレポートしか見たことがなく、基礎などのあとから見えない部分の瑕疵発生防止には無意味で、当てにはならないと思っています(正直、手離れ重視で根拠もない、大丈夫です、これが標準なので安心してください、には飽き飽きしています)
        工務店を選ぶならまだしも、その下請け業者まで選ぶことは現実的には無理ですので、工程での不良未然防止ができる設計者・監督者をいかにして選ぶか、が重要なのかな、と思います
        木質パネル工法化が進めば、工業化でよりバラツキは減るのでしょうが、制約も増えるでしょうし、結局現場合わせの部分も少なからず残ると思うので、建築現場の難しさを感じます