Ⅴ地区新潟以南の超高断熱住宅は全て遮熱ガラスがよいかも その1

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2017年に完成した伊達の家。南面はすべてガラス壁のような家としたがそれはある理由がある。

超高断熱高気密住宅は、冬期お日様を室内にできる限り呼び込み無暖房住宅にすることが一つのステイタスのように言われている。しかしそれは周囲景観に恵まれている家では本当にそうなのだろうか?・・・とまたエコ派から反感をかいそうなつぶやきである。

南側は全て広い多目的空間で主に蓄熱部となる。

上の写真のように、黒い床で蓄熱まで行ってできる限り太陽光を受け取るような計画となっている「緑の家」がある。当然ガラスは日射熱取得型である。このようなプランにしたのはこの伊達の家の「主の部屋」が写真のような温室になるところではなく全て北側にあるからである。

南側の部屋は完全に蓄熱室のような使い方で、住居分は全て北側にある。

つまり話は簡単で、南側の部屋は冬期の熱をためる日射があるときには原則だれもいない部屋となる。そうでなければ暑くて窓越しの日射で体や顔がほてってそこにいられなくなる。そのように南側の部屋は全て蓄熱室として割り切っているのが伊達の家である。この蓄熱室に溜め込んだ熱は夜間に北側の部分に配って暖房をすることなく暖かさを得ようというものであり、日中は日射は避けるように北側で生活する。

これは敷地が大きく、そして家も通常より相当大きくないと(ほぼ倍の面積)できないないので特殊な住まいとなる。

当然冬期以外(春、夏、秋)は当然日射が入れば暑くていられないので下の通り外部ブラインドで日射を完全にシャットアウト。

冬期以外の晴れの日は外部ブラインドを全ておろし日射をカット。当然外部も見えにくくなる

つまり冬以外の晴れた日にはほとんどこの部屋で窓から外を眺めることはない。

そう、この部屋の南窓は景観を楽しむというより日射をいれる装置のようなもの。窓外は気にしないくらいの感じの住い方になる。確かに緑豊かな自然を窓から楽しむということは、伊達の家のオーナーさんには必要ない。つまり日常がそのような木や草を育て糧にする生活なので、あえて休日も緑を眺めるようなことをしなくてもよい。つまり・・・・この場合だけは南側に日射熱取得型のガラスがふさわしい。

一方下は今年竣工した原村の家である。こちらも同様に冬期日射が多い地域であるため南側に大きな窓が集中するが、こちらの真南のガラスは一部を除いて日射遮蔽型となる。

南側であっても中央の窓以外のガラスは日射遮蔽型としている。

上写真のタイル張りのところだけが日射侵入タイプのガラスであり、その他は日射遮蔽ガラスである。こちらはこのタイルところだけが普段人がいないことが可能な場所で、その他のところは常に人がいたり作業したり、くつろいだりするので、日射遮蔽タイプでないと顔などが暑くなっていられない。つまり折角窓外の自然の景観を楽しもうと思っても、日射侵入型のガラスだと日射のあるときには冬期であってもレースのカーテンが必要になるが、日射遮蔽型ならレースのカーテンはあえて必要でない。

南側にある窓の内、2/3は日射遮蔽型ガラスとしている。

当然南側にあるこのインナーバルコニーを覆う全面ガラスも同様で、日射遮熱ガラスである。

冬期はガラスで覆い景観を楽しむバルコニー。

このため日射が強く入り込む冬期でも、この場所に座って景色を眺めたり、くつろいだりすることができる。つまり日射熱を最大限確保するより、そこに快適にいられる時間の長さを選んでいるのである。

オールシーズン開けて過ごすことも可能。

超高断熱高気密住宅を設計するときに設計者や建築主が間違う選択がここである。冬期晴れるから暖房エネルギー削減のため窓ガラスは日射侵入型がよいと判断する。しかし私はその敷地、暮らしに合っていれば、冬期の日射熱など捨てるくらいでもよいと考えている。日射が多少体にあたっても気にすることなく、外部との視覚的つながりを保てる日射遮蔽ガラスが、先進諸国の中で最も緯度が低い本州以南では良いと考えている。

その時に問題となるのが・・・「色」である。

左が裸眼で見たときの再現色でグリーンかぶりしている。右はフォトショップで自動補正した色。

上の写真はガラス越しに見たときの体験色を比較したものである。左は実際の目で感じた時の色(カメラで撮影したまま)で、右はフォトショップで自動補正した色である。撮影したこのFUJIのコンデジカメラの色再現はいつも優秀で、記憶色に近い色を再現するので多分こんな感じだった。この色の差が許せない人には日射遮蔽をお勧めしないが、私はこの程度なら景観をみて顔が火照らないほうを優先する。つまり真北以外は日射遮蔽型を選ぶ事を原則としたい。

真夏7月に海に沈む夕日を室内で楽しめる程、日射遮蔽ガラスがよいと思わなかった。

この夏、旧自宅のガラスを変えて初めて気付いた高性能トリプルサッシの色のこと。最初は驚いたが、この景色を日射を受けたまま快適に見ることができる幸せ感に気付いた。そういえば日射熱取得型のペアガラス時代に連れ合いは、冬期でもこの窓から日射が入るとレースのカーテンをした。まぶしくて暑いから・・・とのこと。その当時私は折角の冬期の日射がもったいないというと、「そんな事より、快適性と気持ちよさ優先」と言い切っていた。今年ペアガラスをトリプルの日射遮蔽型に変え夕日景色を堪能。改めてこのことを気づかせて頂いたことに心から感謝する。ありがとう、日本海と夕日そして・・・。

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コメント

  1. Asama より:

    Miyazaki様

     こんにちは、浅間です。

    >セオリー通りだと、北面は遮蔽型ですが、この窓は採光で重要な場所なので、あえて日射侵入型を使おうかなと思っています。

    内窓且つ北側で採光重視ならその一択だとおもいます。例えば可視光線の減衰が少ない日本板ガラスのESクリアー又はクリアーがよいでしょうね。

    コメントに関係ないと思いますが、新潟県で真北窓は南窓より大事な開口部だと私は感じております。

    • Miyazaki より:

      お返事ありがとうございます。
      自分で考えた結果が、セオリーで言われることと違うと、これで大丈夫かなぁと思うときがあります。
      浅間さんから賛同の意見を頂いて、安心できました。

      新潟県の北窓の重要性は感じています。冬も夏も安定して明るいですよね。
      特に雪が積もったあとの明るさは、ほっとする感じがします。

  2. Miyazaki より:

    ちょうど内窓を入れようとしていて、北面のガラスで迷っている場所があります。

    セオリー通りだと、北面は遮蔽型ですが、この窓は採光で重要な場所なので、あえて日射侵入型を使おうかなと思っています。
    浅間さんはどう思われるか、意見が聞きたいです。

    実際に物件を見てないので何とも言えないかもしれませんが、イメージとしては、場所は2階で、家の中心に南北に廊下が通っています。それに並行して階段も設置してあります。廊下の窓は、北側に半間の腰高窓、南に一間の腰高窓があるだけです。廊下の奥行きは6間あります。
    曇りの日だと北側は暗いと感じる時が多い空間です。