提言16
空き家の傷みを抑えるためには換気を止め除湿する事。その2

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2023.09.12 宣言通り外気のデータを気象庁から敷地内データに修正しそのため文章とグラフも修正した。

1日の温度と湿度の変化で吸放湿する数種類の壁の実測データ。RH60~70%付近で吸放湿が入れ替わる。ソースは画像上に記載。

今回の「空き屋の傷みを抑えるためには換気を止め除湿する事」は提言16としたい。2007年から始まった提言だが既に16にもなり過去の提言には、その提言した年代をみれば既に常識になっている事もある。過去の提言は・・・

① 超高断熱はCO2削減ではなく、将来のエネルギー高騰時のため。2007年

② 原発は廃棄物処理ができないから反対。2009年

③ 関東以南では熱交換換気より高効率エアコンで回収。2010年

④ 温暖化防止の美麗句はやめて、大事に精神を。2009年

⑤ 少子化対策は必要なし。それより少子化でも経済が回るような政策を。2010年

⑥ 家の長命化は「サッシの取り替えの納まり」から。2009

⑦ 日本では家の超長命化(超長期住宅)は目指さない。2012年

⑦-2 フラットスラブのべた基礎 2013年

⑧ 風呂換気扇は不要になる 2013

⑨ 超高断熱の家にはドレーキップ窓が基本 2014年

⑩ 通風はカビの危険増(新潟の基礎断熱の欠点)2015

⑪ 網戸必要無し 2015

⑫ 家の性能が下がるので24時間除湿をする。2016年

⑬ 日中の通風(風通し)では室温は下がらない 2018

⑭ 土縁はむしろ夏のため(仮説) 2018年

⑮ お風呂、トイレに窓は要らない!2020年

緑字が建築関連である。最初は建築以外のことについて言及している。

最初から15年以上経た今読み返しても何れの提言も90%考えに変化はない。そのくらいだから提言として発信している。特に⑦の「超長寿命化(100年以上)は目指さない」など当時は異常として見られていた事は、時代が変化するにあたり受け入れられていると感じる。⑧の「風呂換気扇は不要になる」もその典型。今はその良さを知った人からは大絶賛、既成概念を疑う必要がある・・・ことは常に意識したい。そこで今回も換気を止めてエアコンを・・・という常識外のことを提言している。ところでこれらの記事の年代を読み返した場合は年別一括表示がよく、たとえば・・・

https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2010/

を貼り付けるとこの場合なら2010年のすべての記事にジャンプする。2011年なら最後の2010を2011に変換し貼り付ければ2011年がすべて表示される。

さてその2ではその1で解説したまとめである。

夏期の湿気発生メカニズム

図C 建物窓密閉時の屋外内温湿度データ。日中に室内湿気の量が屋外を上回る。
図D 建物窓解放時の屋外内温湿度データ。夜間に室内湿気の量が屋外をわずかに上回る。赤い部分は蒸し返しによる室内湿気が屋外より多くなるときである。

「離れ」とは家の名称。図Cはその1の図Aと同じでデータで建物の窓密閉時のデータとなる。図Dは同様の家の窓解放時のデータであるが室内の北側押入のデータも加えている。いずれも日が昇ることで「離れ」の室内温度が上がり室内RHが下がると、露点温度が上昇する。そして図Cの窓閉の家は、外気温が下がりそれに連動して室内温度が下がると、露点温度がわずかに下がる傾向である。これで理論的なフローは、

このサイクルは夏型結露と同じ軽度の「蒸し返し」である。

次ぎに図Dの窓解放時の理論的なフローは、

窓開け窓閉めで網掛け部分が変わる。

通風があると日中室内に放出された湿気は通風の気流に運ばれて速やかに屋外に拡散するが、もし通風が足りなかったり、通風をしなかったら室内の露点温度が屋外より上昇し、室内RH(相対湿度)も上昇する。この時に北側の壁面など日射による上昇がない部分は、RH(相対湿度)が他の部分より高くなりカビの発育適正湿度帯(RH《相対湿度》80%以上)にはいり、短期間でカビが生える。この湿気発生メカニズムがわかればカビ防止策も考えられる。カビはRH60%以下なら容易に増殖できないからである。上の2つのデータから空き家の通風はそれなりにカビを防ぐ効果があるといえる。

夏期のカビを防ぐ方法 1(空き屋)

夏期の室内におけるカビを防ぐにはまず吸放湿物質からの湿気の放出させない事である。木造なら木そのものが吸放湿物質なのでそれをなくす事はできない。

このためまず吸放湿部材の温度上昇を抑えることにつきる。これには2つのルートを遮断する必要があり、まず外壁、屋根からの湿気を流入させないため気密シートを施工し同時に気密シートの室内側にまでに日射の温度上昇の影響が及ばないように断熱性をあげる。つまり高断熱高気密化した外皮とすることになる。次ぎに窓からの日射で室温が上がりその影響で吸放出物質の温度上昇を抑える必要がある。これは雨戸等の日射遮蔽部材を外部でつかうことと同時に通風(20回/h以上)を行い室温上昇を防ぐ。しかし通風は昔とは違い防犯上留守中は不可能である。

夏のカビを防ぐ方法 2(空き屋)

室内の(気密層から内側)温度ムラを防ぐことである。

これは以前押し入れのカビ発生の原理をブログで説明したとおり、温度にムラがあると温度の低いところはRH(相対湿度)があがり、それが続くと短時間カビ発育温湿度にはいりカビが発生する。しかし留守であると室内戸をあけて布団を移動したり、ベットやマットを移動することはできないので非現実的である。

夏のカビを防ぐ方法 3(空き屋)

室内に増えた湿気を除去する。

吸放出物質からでた湿気を除去するためには1.窓開け、2.室内で除湿がある。1は空き家では無理なので2となり除湿機かエアコンを使用して湿気を除去するのが現実的である。留守中の閉めきった空間で湿気を除去すると屋外より室内空気のAH(絶対湿度)が低くなる。このときに換気をすると湿気が流入する。本来換気は湿気の排出のために行うのであるが、人が住んでいなければ湿気が流入する換気を行うことは逆効果(冬期以外)。換気扇をとめ、屋外からの流入を遮断することで、透過してきた湿気やわずかに残る隙間からの湿気のみ排出すればよいことになる。つまり住んでいるときより湿気排出にかかるエネルギーは小さいため電気代も安価になる。

まとめ

もし建物がしっかり気密施工のされた高断熱高気密住宅なら、壁内や屋根からの湿気の流入が抑えられるので、通風よりエアコンを使って毎日4から5時間以上その期間の最低気温より低い設定で稼働させることで、カビ防止ができる可能性が高い。本来なら吸放出物質と外皮を通して透過する湿気量を把握すれば、エアコンの設定温度や可動時間を決定できるのであろうが、これは研究機関に是非お願いしたい。今後高性能住宅の空き家が今後増えるであろうから、その時に住宅を傷ませない方法として換気扇を止めてのエアコン稼働は、従来にはない発想方法である。一方別荘などお持ちのかたは、是非この方法を試して頂きたい。管理人を雇うよりエアコン稼働をして遠隔監視や操作をすれば確実だろう。

一方高性能住宅でない空き家は、一度試して見る価値はあるだろう。但し高性能住宅より湿気の流入は多いため、エアコンの稼働時間を8時間くらいにして行い様子を見ながら減らせば良いと思う。

従来からいわれていた空き家を傷まないようにするために換気扇を常時稼働する事は、効果が無いと言うより外気からの多湿空気をもたらす逆効果になることも考えられる。可能なら日射遮蔽を行い、換気扇はOFFは必須でエアコンを稼働が最も効果的で現実的なカビ防止であると結論づけられる。但し新潟県以南の温暖地が条件である。

運用注意点

相当古い空き家である古民家は、カビだけでなく小動物や昆虫で建物が劣化するので、対策としてエアコンでは不十分である。管理人を雇い通風しつつ小動物を追い払うという従来の方法を行った上でエアコンを使うという方法はやはり効果的だと考えられる。こちらは「て・こあ」で検証しているのでデータが揃った時点で公開したいと思う。

またエアコンの連続運転では、ドレン水内のバクテリアが異常増殖し、ドレン管を詰まらせ、室内に大量の水漏れを引き起こす。このためバクテリアが異常増殖することを防ぐために、ドレン管内を乾かす時間がほしい。このため拙宅は連続運転をあえて行わず、運転時間を一日の1/4~1/3にとどめている。過去多数のヒアリング調査からドレンを漏れを起こすのは、外気温が高い時期でエアコンの連続冷房運転を行う機器に限られている。よって誰も監視できない空き家のエアコンの冷房運転は、タイマー運転でOFF時間をつくるとよいし、その程度で必要な除湿はできると思われる。またネットと繋がっている場合は、水漏れセンサーと監視カメラを設置するとよい。

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