Q値に関する断熱、換気の基本⑥ 全熱交換型換気扇お勧めの境界

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算出条件 全熱交換型換気扇7台 延べ床面積 175m32

オーブルデザインでは設立当時から換気はダクトレス第1種換気扇(熱交換無し)を使って来ました。それが3年前にダクトレス第1種換気扇(全熱交換有り)もラインナップに加わりました。これは熱交換率が上がると同時に消費電力が下がったためです。しかし現在の少なくなった消費電力でもそんなに熱交換型換気扇が有利でないことがわかります。

ではなぜ熱交換型換気扇を使うのか?それは・・・

Q値計算値が有利になるからです。
実際の経済性、低炭素性はそう大きくありません。
でもQ値は現在の住宅の断熱性の指標ですから、
今後も使用してまいります。が、暖房方法の効率も一緒に評価する
Q値以外の断熱評価(年間冷暖房負荷+α)が一般的になった時は、もしかしたら・・・

熱交換換気扇に戻ることもあります。なぜか・・・

まず、おさらいですが
Q値計算では換気による熱ロスは

住居内の気積V×0.5回/h(換気回数)×0.35(比熱)

です。

ここに熱交換を組み込むと見かけの換気回数を下げる事ができるため
Q値が下がるのです。でも熱交換率が90%であっても

気積V×0.5回/h(換気回数)×(100%-90%=10%)×0.35(比熱)×です。

熱交換型換気扇は消費電力が多いためその分を差し引かなければなりません。Q値計算では熱交換は暖房しか勘案できない条件ですから(国のマニュアルによる)、かかる消費電力を冬期のデグリーデーにプラスしてどのくらい実質の換気回数が減ったか算出します。これを「見かけの換気回数」と言います。
冬期のデグリーデーのデータは150日以上ですから普通は手計算では大変です。Qペックスなどのソフトを使うと良いでしょう。

さてこれからがオーブル独自の比較ですが・・・

熱交換換気による熱回収量とその可動消費電力でエアコン稼動による暖房出力量」を算出しました。すると

熱交換型換気扇の運転に使う消費電力でエアコンを運転した時、外気温に見合ったCOP(定格COP6.5を想定)でので得られる熱と換気扇で回収する熱の比較を計算

こんな結果です(このグラフは一番上の図)。

定格COPが6.5以上のエアコンなら平均外気温が4度を超えると、そのまま熱を捨てて換気しても、その熱交換型換気扇を動かす消費電力でエアコンを運転した方がエネルギーロスがありません(換気の顕熱交換率66%)。
つまり新潟県なら1月~2月では熱交換型換気扇でも効率が良いでしょう。しかしこの月以外はあまり意味がないことがわかります。厳寒期でも平均気温が4.5℃以上の関東は熱交換型換気扇は要らないことになります。勿論消費電力がこの条件より下がり、熱交換率が高ければ熱交換型換気扇の意味があるでしょうが、常時換気するトイレやお風呂を熱交換しない換気ならエアコ運転の方が良いとも言えます。

このように熱交換型換気扇は新潟を含むより気温が低く、暖房デグリーデーが大きい地域が有効(低炭素性)です。また、換気の廃熱を新鮮空気で熱交換するのではなく、換気排気口にヒートポンプ室外機を置きそれで熱回収する方法が昨年建築雑誌に載っておりましたし、他HPでも実践していらっしゃる方が見受けられます。大変合理的で良い方法だと思います。但し、排気口に室外機をいつも設置するのは美観的にできない場合は多いので標準化はちょっとまだできません。近い将来ここを上手く解決して取り入れたいと思います(排気ダクト式になりそう)。

 こちらは熱交換率90%の時。平均外気温度6.5度までなら熱交換換気扇使用の効果が高い。つまり関東なら熱交換型換気扇よりエアコンの消費電力で作るエネルギーの方が経済的で低炭素。夏の比較も時間がある時に考察する予定です。

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