熱交換型個別換気扇のエビデンス

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「緑の家」常時換気標準使用のロスナイ。所謂全熱交換型個別換気扇のこと。これを1件で4から6台設置する事が多い。

超高断熱高気密である「緑の家」の換気システムは2種類あり、標準で採用する全熱型個別換気システムはとても単純な換気計画である。

寝室では2つロスナイを設置するのが「緑の家」。音の小さい弱運転を2台運転し換気量を確保する。

装置の大きさは巾は約40cmで高さが約20cm。青で示したように給気SAと緑色のRA(環気)がある。その離隔距離はわずか20cm。吹き出し口は5cm角相当。

このロスナイ(商標登録録商品名)を使うと、必ず・・・

「換気がショートサーキットして効率が悪いのでは?」

と言った評価がされるが・・・

では何故これだけ多くのロスナイに似た全熱型個別換気扇が大手メーカーから販売されているのだろうか?

しかも、これら全熱型個別換気扇はシックハウス法で定めれた24時間換気が出来るとまで記載されている。

もしショートサーキットして本来の換気が出来なければ大きな問題になるはず・・・

ーーーーー

実はこれはもう15年前のシックハウス法が施行されるまでに建築学会で解決済みである。

この頃の論文を知らないと

「ロスナイは換気がショートサーキットする」

との妄想を頂く事になる。

15年以上前の論文はPDF化されていおらずここで紹介するには手間がかかるので、何回か

「換気についてこのマニュアルが最も住宅の換気について正確に且つ詳細にわたって記されている」

と紹介した本からロスナイのような一つの装置で部屋を換気した時についてのエビデンスを抜粋する。

著者はこの分野では第一人者である「小峯裕己先生(千葉工業大学)」。この本は大変価値があるすばらしい本であるが残念なのは非売品で書店にはないはず。

常時換気は一時間で居室の半分程度の空気が入れ替わることが現在定められている。しかしこれは新鮮空気が入った瞬間に完全に混合している事が前提であるが、通常は気体が完全に混合する事はなく濃度分布が生まれる。この濃度分布をできる限り同じくする事、あるいは入った新鮮空気が排気口に向かって順次空気齢が高くなるようにする事が一つの目標となる。これらの内容と解説がこの本には掲載されている。

この本にある解析結果を下に抜粋する。

解析はCFD解析(流体のコンピューターシミュレーション)であるが、実測においてもほぼ同様の効果が得られる事を当時は論文発表があったよう記憶している。

障害物(タンスや机)があると、流速があるロスナイなどが若干有利になる事は明らか。

上のような解析結果が条件を変えて(夏、冬、中間期、障害物ありなし)数十ページ記載されている。

結果はロスナイなどの単体で行う換気が個別型換気システムでも、第三種換気(給気口は壁穴でドア下アンダーカットが排気口)とさほど変わり無い結果が得られており、もしこのロスナイのような個別型換気システムを否定するならそのエビデンスを示す必要がある。

以上のようにオーブルデザインの「緑の家」では構造をはじめエビデンスの明確な設備器機を当初から採用している。

無論ダクト式の集中換気システムもお勧めしており、この二つのメリット・デメリットを天秤にかけ、どちらを採用するかを建て主さんにご判断頂いている。

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コメント

  1. Asama より:

    赤林先生
     
     何時もありがとうございます。

    もっと詳しく深い研究発表論文のご紹介をありがとうございます。
    100mm以上は最低給気排気口が離れることが条件とは知りませんでした。他の換気種別による解析もとても参考になります。この辺りは論文を読み込む事が苦手な読者さんもいるのでまたブログで読者に紹介(解説)させて頂きます。

  2. 赤林伸一 より:

    http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/ronbun/heisei19/kaji.pdf
    の図の8でしょうか。確か黄表紙にも投稿済みと思いますが。
    給排気口の間隔が100mm以上有れば全体が換気されることを示しています。