提言16
空き家の傷みを抑えるためには換気を止め除湿する事。その1

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2023.09.12 宣言どおり外気のデータを気象庁から敷地内データに修正しそのため文章とグラフも修正した。

2023年で築31年の旧拙宅では、この一年間人が住まない家となった。

何回がブログに上げたとおり、現在旧自宅になった寺泊の家は人が一年間住んでいない。通常人が住まないと家が傷むと言われ、20年くらい前にも5年ほど住まない時期があった。その時はしっかり第三種換気を24時間行っていたが、時折帰ると少しカビ臭があるような感じで、よい空気とは言えなかったが、今年は換気を全て止めたら全く臭わず昨夜まで住んでいたような感覚。さてどのように管理したのか。

自分でもびっくりだが・・・24時間換気は約一年間完全に止めている。でも家の空気は気持ちがよい。

その理由は・・・

エアコンを一日の内5時間ほど毎日ONしているからである。

そうエアコンONだけで換気はしない。何をしているかというと、室内の湿気を取るために冷房除湿と再熱除湿運転を行っていたのである。

2010年当時の寺泊の家。緑色部分が2000年あたり増築した空間で、断熱区画されている。

どのような家の条件か?

拙宅は新潟県長岡市寺泊で1992年に延べ床24坪で竣工した高断熱高気密住宅である。当時の性能は旧Q値で1.8w/m2k程度、C値0.9cm2/m。6年後に8坪増築し32坪として、現在32坪+ビルトイン車庫であるが、居住部の24坪と8坪は断熱区画されている。

家の傷みとは何?

一年でおこる家の痛みは・・・ずばり「カビ」である。人が住まなくなって一番最初におこる痛みが「カビ」「カビ臭」である。数年から数十年経つと外壁や屋根の痛みが始まるが、カビは一年でも発生することが多い。これを防止すれば家の傷みはほぼ解決できるといってよい。

空き家としての期間は?

人が住まなくなったのは昨年の11月である。それ以後今年の9月まで住人はいない。一ヶ月に一度トイレは使うので水が便器内で溜まっているが、それ以外は観葉植物が2~3つあった(途中で半分枯れた)。

どのように管理したのか?

昨年の11月から現在まで24時間換気扇は基本的にOFF。4月までエアコンもつけない。そして4月下旬から6月の終わりまでエアコンの除湿運転4時間ほどをタイマーで毎日繰り返し運転とし、当然換気扇は全てOFF。その後7月からこの8月終わりまでエアコンの除湿を冷房運転に切り替え5時間運転。時間設定は深夜時間を割安料金にしているので3時から8時まで5時間ONしている。エアコンの設定は25度。これだけである。但し今年は6月20日~6月28日まで窓の取り替え工事を行っていたのでこの期間は窓がなく所謂通風状態であった。しかし梅雨が明けたのは7月21日だったので梅雨時に閉めきっていたのは4週間もある。

換気は必要無い。

「換気は大事だ。人が住居していなくとも換気装置はONが原則」と一般的に言われるが、実は違っていた。条件によるが人が住んでいない住宅に換気は必要無い。

換気と通風

世の中で換気と通風は混同されている。換気は室内の空気を屋外空気で希釈して屋内で発生した湿気や匂い、二酸化炭素を屋外へ排出すること。シックハウス規定では0.5回/h以上となる。一方通風は夏期に屋外空気を大量に室内にいれ涼をえたりすることで快適さを得る行為で、論文によると外気とほぼ同じ室温になるためには20回/h以上必要(夏期)になり、換気とは全く別物。人が住まない家では涼を得る必要がないので換気だけになるが、換気だけではカビ臭は防げなかった。

一般的に冬期は換気で湿気の排除は可能だが、夏期は換気だけでは湿気の排除が出来ず通風で湿気の排除を行うがこれが問題となる。

湿気の発生原因

ここがポイントである。人が住んでいない家では湿気の発生由来が人以外となる。人が発生由来である湿気は、息、汗、料理、洗濯、観葉植物などほぼ活動全てと言ってよい。つまり人が住まなくなった家では湿気の発生はないはず。しかし実は家自体が勝手に湿気をつくりだす。

下のグラフは2023年8月27日から31日9月3日~4日にかけてのotomo vie cent※の住宅の室内外温度と露点温度データである。
※otomo vie centとは新潟県出雲崎で築30年程度の民家。現在は倉庫と和室として使われているが、人は住んでいない。断熱性能はほとんど0で、気密性もない普通の家。

図A 窓密閉時の屋内外温湿度データ。

この住宅は現在誰も住んでおらず、しかも田舎であるため24時間窓を3カ所、玄関も網戸で24時間開け放して通風をしている。所謂昭和の頃の住い方で、夜も窓は開け放したままなのであるが、田舎なので防犯上の心配はない事で可能になっている。間取りは8帖と6帖、トイレと洗面台がある「離れ」と呼ばれ、母屋に付属した平屋の住宅。窓を閉め切った状態での2日間のデータが上の図。

露点温度がポイントとなるので最初に説明。
露点温度とは、難しい話を無視して簡単に表現すると、「空気に含まれる水蒸気の絶対量を表す」。露点温度が高いとその空気は水蒸気(湿気)を多く含む。屋外露点温度は周囲環境で変わるので出来るだけ近いデータとする。

夜中0時では室内温度が屋外に比べ高いが、明け方から一気に屋外温度が上昇し、日射や壁天井からの熱伝達によって少し遅れて室内温度も上がる。ここまでは理解できると思うが露点温度に目を向けてほしい。気温が上がるほど何故か屋内の露点温度が屋外より上がっている。露点温度が上がる現象とはつまり室内空気中に湿気が増えたことになる。しかしこの建物には人が住んでいないし、洗濯物も観葉植物もない。どこからこの湿気がきたのか。当然屋外の方が露点温度が低いので屋外からの流入ではない。それはこの建物内にある水分の吸放出物質から放出された水分と考えられる。一般的な吸放湿物質とは通常有機物全てであり、代表的なものとして、「衣類、本、木材、畳、家具・・・」である。これら吸放湿物質はそれ自身の温度があがったり、周囲のRH(相対湿度)が下がると吸い込んでいた湿気を空気中に放出する。明け方になり急激に気温が上がると当然連動してRH(相対湿度)は下がる。一般的に温度より変わるが、RH(相対湿度)が60%より下がると吸放湿物質は溜め込んでいた湿気を放出する又60~70%を超えると逆に吸収するとの研究結果がある。つまり日射により外皮部材の温度があがったこと、また室内温度が上昇したためRH(相対湿度)が下がったことで、吸放湿物質から湿気が放出されこれが室内側に放出されることで湿気を生み出していると考えられる。

その2に続く。

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