結局骨抜き?25年から始まる構造審査義務化

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年から普通の住宅にも構造審査を実施するとの宣言が2年くらい前にあったが、残りあと1年半のこの時点では、どうも本気で構造審査をする考えはないようである。上のHPにいくと現段階の資料が見ることができるので8月7日の資料を是非見てほしい。

意図的ではと思いたくないのだが、ネット検索で「4号特例廃止」とか「4号建築物見直し」と入れてもここにはたどり着かない。当たり前である。この題名として「改正建築物省エネ法・建築基準法の円滑施行に関する連絡会議」として4号特例とか構造審査とかというキーワードは表題には一切ない。しかしエンドユーザー(建築主さん)や実務者としては省エネ法改正よりもっと大きな変更が住宅の構造審査義務化であったはずである。

まず一般的な平屋なら構造審査はなし。一般的な大きさの2階建てなら構造図の添付は求めないとのこと。
一般的な大きさの2階建てなら構造図の代わりにある仕様書を添付すればOK。今までと変わるのは壁量計算書の添付だけかもしれない。これでは構造審査の義務化とはいわない。つまり40年前に戻っただけ。

我々建築士は建築主の代理として建築確認申請や長期優良住宅を審査機関に申請する。その際、最も時間と手間がかかるのが「構造審査」である。構造審査では確認申請時には添付しない構造計算書又は壁量計算、柱脚柱頭金物種類表と共に構造図として基礎図、各階伏せ図(柱や梁の大きさと位置が記載された図)、構造詳細図を添付して審査を受ける。いわばこれらがなければ構造審査は不可能である。なぜなら梁や柱の接合部がそれらに記載してあり、この表、図そのものが「ザ・構造」だからである。

しかし国交省が主催する上の会議で配られた資料には「構造図の添付は必要無い」・・・が、構造の審査の方法となっている(案だがそうなる可能性はとても高い)。図面がなくても審査できる・・・これはどんなに建築構造系の達人でもかつて出来なかった未知の新たな技が生まれた瞬間であるかのようだ。

建て主さんに説明すると驚かれると思うが、現在木造住宅の実に80%以上(90%近い)が、木造部分の構造図作成を法的な設計者が関与していないとの事。これはさきの構造セミナーで実務に関わる講演者が言っていた。では誰が書いているかというと、誰も書いていない。しかし木造加工図というプレカット図をプレカット屋さんが書いているとのこと。これを構造図として大半の実務が行われる。しかし法的には実際に構造図を作図していなくても、設計者に構造安全性の責任があり、それ以外の人は責任がないとの建て付けとなっている。

複雑で何を言っているかわからないと思うが、このことをまとめると「現在の実情として木造住宅の木造部分の構造図が確認申請時にはないので、これでは2025年に実施される構造審査義務化で構造図がないことで建築業界が混乱することは必至。そのため構造図無しで構造審査が行われるように法律を改正する」とのことだろう。

構造審査を行政が行うと決めたのに、やっぱり構造図審査は世の中が混乱するし行政がその構造の責任が負えないのでしません・・・これに疑問を感じない建て主(国民)さんがいるのだろうか?事実構造図は複雑であり建築物の根幹をなす。いつも申し上げるとおり、構造の安全性は何をおいても第一にくるので、建築基準法も団体規定を除くとそのほとんどが構造と耐久性に関する条文がほとんど。断熱材や気密性の温熱性能、省エネ性は別の法律で決められている。とこれが、この連絡会議は省エネ法の下に構造の義務化がぶら下がっているような表題になっているのが理解できない。省エネの前にまず構造の安全性だろう・・・と建築士は感じていると思う。

実は私は元々構造審査義務化より先に違法をした建築士および所属団体の罰則強化だと思う。日本の悪いところは、入り口が狭くする事だけ考えて出口はゆるい。だから未だに居室化された違法な小屋裏収納の写真が、大手を振って専門誌に載っているのではないだろうか。

この会議のメンバーには消費者の代表らしき影はなく全て業界団体の理事など。一体誰のための法律なのだろうか?確か建築基準法の目的には「『国民』の生命と財産を守る」とあり「住まい手」が主役であるはずなのに・・・。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. WATA より:

    憶測ですが、4号の構造審査は壁量計算のみになるのではないかと思われます。
    建築主事試験(建築基準適合判定資格者検定)でも外力と壁量計算の問題しか出てませんので。
    これなら、平面図に壁倍率の記号と計算式を数行書けば済んじゃいますから。接合部や基礎は特記仕様書に適合させる旨を記載して終わりなんじゃないでしょうか。

    • Asama より:

      WATA様

       情報とコメントありがとうございます。
      やはりそんなかんじでしょうか。それなら行政が「構造のチェックをする」というニュアンスは大げさであり、単に「耐力壁数量チェック」でよいのでしょう。もしかして当初からその予定だったのを勝手に盛り上げてしまった私が悪いのでしょうし、そのことで利益をえる業界もあるので大げさに報道されたのでしょうか。