金塚の家 耐力壁チェック その2 内部の筋かい

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この絹のような艶が杉の無垢材の特徴。材木屋さんが綺麗に仕上げてくれた。

基礎の仕上げ以上に光る杉の無垢柱が金塚の家にはある。

コーナーサッシの手前のキッチンに120角の無垢の杉柱を計画する。

「緑の家」で頻繁に使われる一本柱の空間。その時は強度面で有利な集成材を使用しないで、見た目とさわり心地の最高な「杉無垢材」を使う。当然無節か上小節で芯去り材である。これは私の拘りである。集成材柱に比べ約10倍と一桁高い無垢の杉柱であるが、やはりそれでも使いたい。床柱のような一点豪華主義ではなく、柱が隠れる大壁になった現在の工法では露出する柱こそ杉の良さを感じてもらいたいと思っている。ドア枠、窓枠材もふんだんに杉無垢材を使うが、柱の無垢材はやはり別格の存在感である。

今回このコーナーサッシの隅柱は隠れるタイプのおさまりとなるため、見せる柱が必要だった。外部風景を見て頂ければ納得頂けると思うが、この方位に大きな窓が最適解と感じた。

さてようやく耐力壁のことになるが・・・

下の写真をみて「なんか違和感」と感じた人は建築関係者だろう。一般の人にはわからないはず。

「なんか太い筋かいだ」

と感じるはずである。そのとおりで通常倍率2の筋かいは90×45の断面寸法で設置される。しかしこちらは・・・

なんと125×45であり1.3倍も大きい断面を使っている。その理由は何度となくこのブログで説明しているとおり・・・断面欠損をみているからである。しかしその場合でも105×45で良いのだが、その節等の欠点が無い105×45が市場には少ないとのこと。

120mmの断面寸法があれば、90×45の時に必ず跳ねられる上のような節があってもOKとなる事が多い。この部分は端部に近いので座屈のトリガーにならず90mm以上残っているの問題なし。

そこで施工されているヨシダハウスさんは「ええい、和室に使う鴨居材の120×45でどうか」と材をおごる事で手戻りや検品にかかる手間を省いている。筋かいの材料欠陥で地震時には計算どおり耐力が保てなく破断したり、折れたりした現場写真をみている。筋かいは材料品質が重要となる。

次に筋かいの端部金物である。

下の写真を見て建築関係者でも?と感じる方は限りなく少ないと思う。筋かいプレートに注目してほしい。プレートのビスを打つ前の仮設置写真であるが・・・

左右の筋かい金物の形状が違う事に気付く方はまずいない。これは金物が足りなくてそのようにしているのではない。適材適所として使用するとこうなる。
「緑の家」では柱と梁の接合部にHSS金物という接合方法で行っている。これは通常のプレカット工法と違い、柱と梁、土台を直径約2.5cmの鋼管パイプで接合している。このため一般的なホゾ接合に比べ剪断力を評価できない架構である。このためまず筋かいプレートは柱のみ接合するタイプはNGとなり、このようなBOXタイプで柱と横架材と筋かいの3点でせん断力も伝えて接合する金物が良い。これはグレー本にも明記されており(許容応力度設計2008年のP73に記載あり)、金物接合工法では当たり前の事である。細かい点であるが筋かいは構造の要である。

柱のみに取付型の筋かい金物はHSS工法では使わない。カナイHPより転載
「緑の家」ではこちらのタイプを使う。カナイHPより転載

また左右のプレート種類が違うのは・・・一方は合板の上で接合している金物で、もう一方は合板レスで直接梁に接合している金物になるため。合板の上で接合する金物でも梁に直接接合可能ではあるが、HSS工法などの金物接合では梁に金物切り込みスリットがあり、それにビスが干渉しやすいのでわざわざ代えているのである。

2種類の筋かい金物を適材適所に使う。このようにする事で計算どおり耐力を発揮する。

地震で筋かい金物が外れている報告を見るが、このように正しい計画と施工がされていたかの検証報告をみたことがない。ほとんどが金物があるかないか、正しいビスで行っていたかどうかだけである。これは検証するチームのほとんどが、施工までしっかりと現況把握していないことが原因である。筋かいは簡単に見えて正しく計画実施するのは実は難しいのである。

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