無難な仕様 サッシと通気 その3

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昨朝は熊本城を見ながら食事ができご機嫌である。

最初に・・・いま私は「熊本LOVE」である。

バス停やいたるところで目が合うと知らない人でも「おはよう」とか声がかかるその感じや、熊本城の復興を心から喜ぶ市民、そして街中の若人の活気に感動する。この感じは遠い昔のバブルに近いころの地方都市の活気。その賑わいは楽しさの原点と思わずにはいられない。いま熊本はそんな地方都市で最も住みたい都市になっていると思うし、私も心からそう思う。

その3では通気層の流れた空気の出口はどこへ・・・ついて説明したい。

まず通気層の空気はどのように流れるのだろうか。そもそも地上での空気の移動は2つの原因がある。1つ目は温度。空気に温度差が生まれると空気が動き、基本的には暖かい空気が上へ上昇する。2つ目は圧力差。隣り合う空気に圧力差があると高いほうから低いほうへ空気は移動する。通常この2つで空気は動いている。通気層は主に温度差で動くことが多い※。太陽に外壁が熱せられたりすると通気層内の温度があがり空気が上昇する。また室内が屋外より高い温度の場合、通気内に熱は伝わり空気の温度がわずかに上がるがその影響はわずかなためこれは無視してもよい。つまり温度のよる影響は日射のみと考えてよい。
※5寸勾配の屋根通気層内の風速は隙間27mmで0.8m/sがMAXとの論文結果がある。壁面も論文があるが現在検索中。

一方その上昇が起きるのも新たに入る空気があるからで、通常入り口は外壁の一番下の水切り辺りである。一方出口がないとこれも空気が動かないので出口も大事であるが、それが通気層の出口も兼ねる小屋裏換気口や棟換気口になる。

片貝に建築された「緑の家」の冬季の様子。屋根の雪は耐雪住宅の場合2~3か月堆積する。
こちらは棟換気あるが、埋もれた時を想定して軒裏換気だけで小屋裏換気面積を満たす。

「緑の家」が小屋裏換気で「軒裏換気」を標準にしている理由は、以前もお伝えしている通りシーリングレスを標準としたいから。しかしもう一つ大事な理由がある。それは雪国でないとわからない理由のためこのブログで取り上げることは少ないが・・・棟換気は雪でふさがれる期間が長くあるからである。特に見附市から南の豪雪地(長岡など)は、一度雪が積もると屋根の雪は2か月はそのままある状態が続く。特に耐雪住宅にするとこの期間はさらに増え3か月も雪が屋根にある年さえある。そのためこの期間は棟換気があっても換気される可能性がとても低い。しかしこの冬季期間の小屋裏換気(屋根下通気層)はとても重要で、気密シートのタッカーやボード釘の貫通部分から湿気が断熱材内にわずかであるが流入し、それが屋外へ抜けないと内部結露を起こしてしまう可能性が高くなる。よって換気(屋根通気)は重要な時期となる。また壁体内の通気も出口がふさがれることで機能が低くなり、同様の危険性がある。

軒裏換気口をもうけている「緑の家」

このため「緑の家」ではできる限り軒裏換気による小屋裏換気を標準とし、豪雪地でない地域(見附市から北)は勾配天井の場合のみ棟換気を許容している。
もちろん棟換気と軒裏換気の併用でよいと思うが、その時は最低でも軒裏換気の換気効率で設置しておくとよい(下図切妻型なら(ハ))。これは通気層の出口も兼ねるためできるだけ大きくしなければならない。このことを忘れている設計者も多いだろう。

こちらは棟換気と軒裏換気の併用した小屋裏換気の「緑の家」。給気側では基準の4倍、排気側では6倍の面積。棟換気口がなくても基準値を満たすように設計している。

シーリング材が住宅ではつかわれないころ(1960年以前)の屋根は、屋根頂上に通気孔を設けるような工法はなく、入母屋か切り妻による妻換気か、面戸板の隙間から起こる軒裏換気が主であったことは、その方法がシーリング材に頼らない「無難な」小屋裏換気方法であったことを意味する。

設計者ならだれもが知っている小屋裏換気の図。

その一方で軒裏換気にも弱点がある。そのもっともたることが「効率が悪い」こと。先ほど申し上げたように空気の移動は温度差と気圧差で起こるが、屋根頂部のもうける棟換気は温度差換気の最もよい効率を示すため(上に出口と下に入り口があること)、上図(ロ)型なら軒裏換気の開口部面積の6倍以上の有効面積を必要とすることである。ただし(ハ)型の切妻や入母屋なら倍程度でも同様とみなせる。上写真の「緑の家」のように小屋裏換気を最悪の状態でも基準を満たすように設計することが「無難な」通気層の出口となり、通気層の空気も問題なく排出するにはそのことを考慮した余裕のある設計が必要である。当然国の監修に近い住宅金融支援機構のマニュアルにもその記載がある。

住宅支援機構の仕様書の図

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