高気密住宅と低気密住宅の湿気の入り込み調査

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2024.08.08.7時14分緑色グラフ差し替え修正

グーグルマップから

今年も梅雨が明ける前の気になる調査した内容を案内する。

拙宅で現在空き家になっている寺泊の家と同じく人が住んでいないotomo vie centの離れで家の湿気の入り込み具合を調査した。
まず両家の位置関係を上のグーグルマップで示すと寺泊(高気密住宅)とotomo vie cent(低気密住宅)は直線で7㎞弱。寺泊は海から30m程度でotomo vie centは海から1500mとなっている。

実測はいつも驚きをもたらすが、最初に面白いデータがとれた。直線で7㎞しか離れていない環境であるが、露点とその推移が大きく違うのである。露点は大気中の水分の量を示し、露点が高いほど大気中の湿気の量が多いことになる。

まるで違う県でのデータのように明らかに大気の湿気量が異なる。

otomo vie centは青い線だが、夜になると露点が下がって20℃以下になることもあったが、寺泊は夜になっても変化が小さくほとんどの状況でotomo vie centより数度露点が高い。つまり寺泊の家周辺では常に高湿の環境であるということがわかる。この理由は当然目の前が海だからと考えるが、実際比較すると海からの距離として1.5㎞と30mとの違いでこれだけ大きな違いがあるのには驚かされる。いつも申し上げるが、住宅のデータを見る場合は、その地域の環境データが重要条件となり、この条件で結構変わってしまうことがある。とにかくデータは条件がすべてである。

そこで今回の主な条件は次のとおり

寺泊の家(空き家状態1年)

 

築33年 換気OFF 2階建て延床32坪(空調範囲は24坪) C値(完成時)0.9㎝2/m2 
旧Q値1.5~1.6w/m2K程(断熱窓改修後)

2階のエアコン6帖用を深夜3時から9時まで6時間冷房22度で運転。その後OFFで毎日繰り返し。家全体空調。家具などの吸放出物質はなく、ビニールクロスは不使用で全面シナベニア。

データロガー位置 一階のエアコンから10m以上離れているところで床から1m。

otomo vie cent離れ棟(空き家状態3年)

 

築31年 換気OFF 平屋 延床14坪 C値 不明の低気密
旧Q値 不明だが推定5~6w/m2K程度

エアコン8畳用を夜9時から朝9時まで12時間を冷房22度で運転。その後OFFで3日間連続運転を2週間繰り返す。タタミ、土壁、家具などの吸放出物質は多数。

データロガー位置 エアコンから3m離れた送風の影響の少ない場所で床から40㎝。

まずは室内のRH(相対湿度)の推移を下のグラフで比較する。

寺泊の家がすべての時間でRH(相対湿度)が低くカビ発生の心配がはじまるRH(相対湿度)60%を超えることが一度もない。一方エアコンの稼働時間が12時間と寺泊の6時間の倍運転しているotomo vie centでは、おおよその時間でRH60%を超えるがRH70%以下に収まる。上のグラフに外気のRH(相対湿度)を差し入れて比較したのが下のグラフ。

ご覧のとおり外気はRH(相対湿度)が80%以上が殆ど占め、時には95%にもなっている典型的な梅雨から真夏の空気。特にotomo vie centでは外気温がよって周囲の田園から湿気と風が停滞し夜間にRH(相対湿度)が上がっているが、日中は大きく下がる。これは外気温が急激にあがるためであろう。

次は室内における空気中の湿気の量を表す「露点」を見てみよう。

グラフ修正

上はotomo vie centと寺泊両方の室内露点と両外気温を並べ立て比較したグラフ。

otomo vie centのほうが最高気温が高く33度まで日中上がるが、夜間は寺泊より気温は下がる。いわゆる内陸的な温度変化。一方寺泊は小島のような外気温変化で、最高でも31度に届かず最低は夜間であるがあまり下がらず25度以上ある。

室内の露点推移が想像より差がなく似たような感じに見えるので2つだけ下のグラフにする。

otomo vie centは朝9時にエアコンはOFF。一方寺泊は午前3時にOFF。その差は6時間。

よく見るとエアコンが止まってから湿度が多くなるところで勾配が少し違う。エアコンが止まる時間が6時間ずれているそれを意図的に6時間ずらし重ね合わせる。

さらに白楕円の6時間だけを切り出してみる↓。

白い部分を切りだしたのが↑のグラフとなる。

やはり時間当たりの露点の勾配が違い、otomo vie centのほうが1.2倍傾きが大きくなる。そもそも最初の露点の位置が4度以上違うのが、高気密住宅と低気密住宅の差となるのだろうが、湿気の入り込み具合は想像より緩い。この事例だけだが高気密住宅はポリエチレンフィルムの高い透湿抵抗で(又は気密性か露点4度低くできる。またエアコンを止めると湿気の流入速度は低気密であるotomo vie centのほうが1.2倍速い結果になる。

このデータからみると、高気密住宅であっても湿気の入り込み速度は20%しか抑えられないが、絶対湿度の最低位置が違うこと、エアコンの稼働時間も半分でこの数値だから、実質40~50%湿気の流入を抑える感じと見てよいのか。また寺泊の外気の露点がotomo vie centよりずいぶん高いので、実際にはそれ以上の差があると思える。

外気条件は最悪の高湿である寺泊であるが、室内露点推移はotomo vie centより低温度になる。

まとめとするなら・・・

ポリエチレンフィルムによる高気密施工をすると、エアコンで除湿すれば低気密住宅より半分程度のエアコン稼働で露点(湿度)を低く抑えることができる。一方低気密住宅の空き家であっても12時間エアコンをONすれば、カビが容易には生えることがない湿度になるので、カビ対策としては効果があるともいえる。またこの湿気過多な過酷な寺泊外気条件で30年間24時間冷房して内部結露で害が出なかったのは重要な結果である。

今年空き家率は過去最高数となることが総務省より発表されている。空き家になるための原因は多々あるが、空き家になっている間にカビが生え再利用できずに結局取り壊しになる家も多いだろう。私が約10年前に唱えた、「建て替えの理由の第一はカビ」と考えているので、まだ使えそうな空き家は適切な雨漏り管理とカビ管理をすれば家としての価値は継続する。つまり日本の空き家をゴミにするのは耐震性を除けば雨漏りとカビ。その点今回のエアコンによるRH(相対湿度)をダウンする方法は重要だと考える。近年はネットによる遠隔操作が可能であるため、エアコンの遠隔運転も現実的となる。また感覚的には湿気の吸放出物質(土壁、畳、布団等)はできる限り少ないほうがカビの管理しやすい。

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