事務所移転と「緑の家」が目指すものはS造も その2

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突然始まった事務所の移転で工事は急に進む。移転といっても3階から2階への引っ越しである。

今回は当事務所の入っている鉄骨4階建だての屋上にある雨どい不具合も修正することになる。上の写真で右側の雨どい周辺だけ異様に黒ずんでいる。これは集水桝が錆びて穴があき、竪樋に水が入ることなく雨どい周囲を伝わって排水され続けたからである。この黒ずみは主にコケ類と泥であり、これが繁殖すると表面の塗装膜を犯してALCを容易に破壊する。ALC自体は水に(氷ると凍結破壊)弱いので、強い塗装で保護することがALCを使用する条件であるため、塗膜メンテは重要である。

30㎝角の集水桝を2個取替えるのにこれだけ大掛かりな足場となる。ステンレスのほうは新たに製作したもので、奥左の白色が腐食した集水桝。

こちらは雨どいを外して集水桝の交換を行っているのショット。たったこれだけの部材を変えるのに高い足場を用意し、半日かけて交換をすることになる。費用もそれなりにかかるが(数十万)、雨どいは壊れたままにするとすぐに建物は傷んでしまう大切な部材だからやむ得ない。ただ、この部材は45年ほど交換していないので役目はしっかり果たしている。

さて新事務所のほうは材料の荷揚げが始まっている。

トラック一台山盛りの木材

トラックに積んであるものはなんと木造住宅用の柱。しかもオール杉でつくった集成柱。「緑の家」のスタンダートは欧州赤松の柱であるが、杉LOVEの浅間が選ぶのは杉材である。なぜ「緑の家」は欧州赤松で今回は県内産杉なのか・・・。それは杉のほうが耐力2~4割くらい弱いので、雪国での2階建て住宅用には欧州赤松のほうが材を倹約できるため。そして今回の構造はS造なので、構造柱ではない木の柱は杉の強度があれば十分。このため杉の柱としている。つまり木造でも平屋なら杉柱も選べることを意味する。もし杉の構造に拘りたい方は平屋という「緑の家」の選択肢がある。今年竣工した「美幸町の家」でこの杉の集成材を使用し、その良さにほれ込んでいる。

木造住宅用の柱材が全て化粧材として紙に包まれている。

で・・・その柱の断面をアップで見ると・・・壁じゃくりがすべてにある。つまり・・・全て真壁構造となる。

白い矢印の壁じゃくりがすべての柱に刻まれて搬入される。断面も杉特有の色味があり杉LOVEである。

真壁構造とは柱がそのまま室内に見える構造で、今回の計画では梁までほぼ室内に丸見えとなる。当然梁も杉である。これは意匠に拘ったことが第一理由ではなく、柱の外側にはる断熱材を板状にすることで、気密シートを省略しかつ仕上げ材としても使える板状断熱材をそのまま室内の壁として使い、コストを限りなく抑えつつ、断熱性能とざらついたありがちな構造用面材露出をやめ、手ざわりに配慮した結果の構成。

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杉の柱が建つだけで室内空間は杉の香りになってしまう。

仕切り壁だけのリノベーションなのに柱梁をHSS金物で組んで、まるで倉庫内にもう一つの家をつくるイメージである。そのため土台も敷かれ、この土台がコンクリートスラブにアンカーボルトで固定される。そして土台上には柱が建ちまるで2重構造の空間をつくる。

構造や外風、雨水を負担するところ全てS造。そして人が触れたり、触ったり、また快適性の源になる断熱性は、S造から切り離した木造部分となる。このためメンテナンスは別々に考えることができることがこのS造にリノベーションをするメリットである。

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