事務所移転と「緑の家」が目指すものはS造も その18 

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色と素材で優しい空間を目指す「緑の家」


新事務所の内装は今後の住まいで行いたい「優しい空間」であり、当然温熱的にも優しい床下暖房や足に優しい杉の床で、無塗装で超仕上げの心地よさを是非体験して頂きたい。その優しい空間は今後メンテナンスにも及ぶところが斬新だと自身で思う。そこで今回の事務所で実践した「緑の家」の優しさは次のようになる。

まとめ

0.「入り子」で建物外皮・構造・熱環境を分ける

1.床が杉の無塗装 超仕上げ

2.床下暖房による裸足の勧め

3.壁も優しい色味の桐色

4.経年変化が心地よく人と壁の傷みを守る

5.人のための室内。紫外線防止が優先で95%防ぐ

6.傷つきやすい床だから優しい心を育てる

0.「入り子」で建物外皮・構造・熱空気環境を機能別に分ける

使われていなかったS造の倉庫に、入れ子としてフレームは木造になるが断熱材だけで囲った内部空間をつくる。

ここから事務所の構想は始まる。現在ある事務所が35年経過して機能的にも見た目も古くリフォームか手直しが必要だけれども、新たに別の場所を取得する余力もない。なぜなら私が管理している土地は6か所、建物は4か所にもなり仕事を兼ねた趣味とはいえ流石に多すぎる。その一方現在の事務所で業務をしながらリフォームすることは難しい。そこで考えたのが現在の事務所のある建物で空いているS造倉庫2階をリノベーションすること。しかしご存じのとおりS造は断熱的に熱橋が大きいため窓回りの断熱欠損など大きい。またこの倉庫のガルバリウムの外壁は通気工法を行っていないため、通気工法がほぼ必須になる超断熱構造では、通気工法を設けたいが倉庫の外壁をはり替えてからまだ10年少々で剥がすことは勿体ない。逆に十数年経過しているので内部リノベーションすると内外の寿命に相違がでて、もう20年すると外壁及び雨どい等外廻りの交換となる。この内外の寿命の違いを埋める方法が無いかと考えた時に、「入り子」構造が浮かんだ。そもそも「て・こあ」という築100年経過した民家を管理した時から、本州での住宅は鉄骨造のほうが向いているのではないかと思っていた。時代は中高層ビルでも木造で建てられるようなSDGsを理由とした木造信仰が強い時代に、あえてS造が良いのではないかとの考えは、天邪鬼的で悪くない。

「鉄骨造のほうが家の寿命は長い」と考えている。

そもそも皆さんもご存じの「家の寿命はカビが原因」という私の仮説。これは木造にだけ当てはまるといってもよい。つまり鉄骨造の主構造である柱梁はスチールなので、建物の骨格にはカビが原則生えないのである。しかし木造住宅の骨格である柱梁は木材なのである。木材は環境が整うと簡単にカビが生える。したがって日本の短命住宅の原因の一つと仮定できる「目に見えない部位」の例えば鉄骨造の柱、梁、耐力壁のカビの心配がない。60年後でもスケルトンにすればカビはすべて除去できるということで、家の寿命を大きく伸ばすことができる。そもそも60年後は縁もゆかりもない人が引き継ぐことも多く、スケルトンにした方が再利用しやすい。

また木造が主構造だともう一つのどうしようもないシロアリ被害でも同様で、土壌型シロアリ(ヤマトシロアリやイエシロアリ)は「緑の家」の高基礎構造+メンテナンスで十分対応できるが、アメリカカンザイシロアリ等のシロアリは柱梁、耐力壁が木造であると、ホウ酸塩処理しても大丈夫ということは確約できない。しかし鉄骨造だとシロアリで構造材が害される心配は皆無。実際凶暴なシロアリがいる南の先進国ではS造やRC造が多い。S造は生物に厳しい材料なのである。したがって超長期住宅構造(3世代)を目指す場合は、木造でなくS造がふさわしいと本気で思っている。ならコンクリート構造のRCではだめか?といわれると、やはりNG。コンクリートでは基本的に重すぎる事、及びメンテナンスが難しいのである。スチールは錆びさせなければそれでよい・・・つまり室内にある厚肉スチールは結露と漏水さえ防げば長期間錆びることはない・・・といえる。

さらにRC造でもラーメンなら良いが壁式は断熱性能の変更が厄介なのでやはりラーメン構造が基本のS造がお勧めなのである。しかも今回のように入り子構造を考えるにあたり、コスト的にもRCより都合がよい。

入り子構造はメンテナンスが天国

入り子構造であるためその隙間には各種設備が配置される。

入居後一か月ですでにメンテナンスを追加して行わなければならないことが起きた。それは給水管のメンテナンスである。現在事務所のトイレの便器はパナソニックのアラウーノを使用しているが、使用当初からなにか違和感があった。アラウーノは同じ建物で先回のリノベした2階の住居部にも使用しているが、洗浄水流を比べると明らかにおかしいことに気づかされた。そこでこの改善を行うことにした。その時に再びこの入り子構造の良さを実感する。まぁ本来は最初からそのように配管すれば問題ないのであるが、リノベの場合は以前の配管を把握することは 難しく、時としてこのようなこともあるだろう。その際はやはりメンテナンスがしやすいことの大切さを改めて知ることになる。

設備類寿命はせいぜい35年~50年

S造の屋根と外壁の外皮の中にもう一枚断熱空調だけの断熱気密パーティションがある。

まるで実験室のような入り子の特性。雨風は外皮(屋根と外壁一層目)で全て対処し、地震や台風はその外皮で守られた内部にあるS造骨格が受け持ち、人に重要な温熱衛生環境は入り子として内部の断熱パーティションが受け持つ。このように主要な性能を各部位に専門的に分担させることでメンテナンスや将来の性能アップが簡単に行える。このことが入り子構造の最大メリットである。

熱交換換気のEAはこの隙間空間に排出される。結露さえ注意すればこのこと換気の排熱が無駄になりにくい。これは換気扇本体も同様で、SA側のバッファーの結露に注意は必要。

カビが家の寿命を決める・・・という研究テーマの答え

入り子のようなそんな無駄空間ができる勿体ない建築方法はド田舎しかできない・・・との考えはその通りである。土地が高い地域は、木造なら35年ごとの建て替えのほうがメリットがあるほうが多い。しかしそのような地域でも構造がS造なら、手の届かないところで発生するカビの心配もほとんどなく、仮にあってもS造の躯体はカビやシロアリでは無被害であるため、やはり長期的にみるとS造はお勧め。今後土地が高くないところでは、当然空き家も多く市場に出てくるが、その時にS造の倉庫があればその主構造を過半以上いじらない限り、このような入り子構造でリノベーションすることはメリットが多い。私が唱える「カビが住宅の寿命を決める」という研究テーマがこのようなS造の入り子構造で大半が解決される。仮説そのものが間違っていれば意味のないことだが、10年以上前に仮説で唱えた「対カビ」問題が、木造住宅では昨年伝えた「今後の空き家の管理は窓締め切り換気扇を止め、エアコンを定期的に稼働すること」と、これに追加でこれからリノベーションや新たに建てる家の「対カビ」一つの答えを導いたと思っている。

その19では「まとめ1と2」を取り上げたい。

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