思考の組み立て方・・・吸放湿物質と夏型壁内結露 その4

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さて・・・白山浦の家の実施設計と鳴和台の家の引き渡しが終わりようやく一息できるつもりが、基本設計がまだ数件手つかず状態・・・。まだまだ厳しい状態は終わらない。しかし夏型壁内結露は今が旬(この時期だから関心が高い)のでこの「思考の組み立て方・・・吸放湿物質と夏型壁内結露 その4」最終話だけはアップさせてほしい。

その1で約束したとおり、

繊維系断熱材(GW)とプラスチック発泡系断熱材(ネオマフォーム)の夏型壁内結露の起こり具合を比較する。

容易用意したのは、

このような高密度高性能GW(グラスウール)である。グラスウールの主原料はガラスであり、ガラスは吸水しないし吸湿しないはず・・・よって比較対象のネオマフォームより良い結果がでると思った人もいると思う。しかし私は実測する前からGWを現場で実際使用する時に使う間柱(木)などだけのせいではなくこのGWも吸放湿すると推測していた。だからGWではより安全側になる木を一緒に入れない単体のGWで実測した

実測方法はその1と同じで

まず実測材料が雨や夜露に当たることのないように、ポリエチレンで「ラフ」に包み外気にさらした状態で丸一日助走期間とした。これで所謂外気とつり合っている状態をつくる。

厚さの違いは断熱性能が違うから。ネオマフォームはλ=0.018でGWは0.036だからちょうど2倍になる。

実測の日の朝4時54分にポリエチレンのジップロックにおのおの入れて実測開始!

8時まで曇り・・・その後薄曇りで時折日差しがある程度の普通の日である。

4時間後・・・

すると・・・
GWだけの袋が著しく結露しているのがわかる。

中の温度を測ると・・・

ほとんど同じ。

つまりこの結露の違いは温度変化が因子ではなく材料の吸放湿の感度であると言える。

GWの袋は4隅にびっしり結露水が見える。

に対し、

フォノールフォームのネオマフォームは

一隅だけわずかに水滴がつく程度。

この時の外気温は

28度だから、冷房していない温度帯であり真夏なら常に起こりうる外気温。低い側の温度が28度でも、透湿がほとんど出来ないポリ袋の中であれば完全に結露する。

その40分後も変わらず・・・

このあと室内に保管し始めると結露水はなくなっていく・・・。

このように、材質的には吸放湿がないガラスでも繊維質にすると吸放湿する物質に変わるようである。しかもこのGWには撥水剤が塗布されているのに水ではなく湿気(水のガス体)には関係ないようでありこのような現象はまだよく理解されていない。

冒頭に申し上げたとおり、GWで作った断熱の壁は必ず木の間柱が入る必要がある。この木が吸放湿する感度が建築材料中最も高いことはその3でお伝えしたとおり。一方ネオマフォームの外張り断熱は木を使わないで全てネオマフォームで外部一層目をつくる。
つまりGWで作った付加断熱とネオマフォームで作った付加断熱は夏型結露の危険性が違うのである。無論、条件はあくまでも両側の透湿抵抗が同じとき。このことを建築専門誌である「建築技術」の8月号(7月下旬に発売)に投稿した内容にもおり込んだ。その時はこのような実測による裏付けはないが、

現在ある文献や発表された論文を読み込み頭で組み立てれば容易に想像できる。

これが本題の

「思考の組み立て方」

となる。これで「緑の家」の壁面構成が11年前から変わらずネオマフォームが一番最外部として完全外貼りで使われている理由の一つを紹介した。「緑の家」には理由があって超高断熱の壁となる。

木の下地はなく、ほぼネオマフォームだけで構成される外壁第一層目の外貼り付加断熱。

これでこの連載はひとまず終了。4話読んで頂いた読者さんにはご静聴頂き感謝する。尚、ご意見反論等あればコメント頂ければと思う。

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