思考の組み立て方・・・吸放湿物質と夏型壁内結露 その3

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前1から2では

夏型壁内結露は、

  1. 吸放湿の感度が大きい素材が壁内の外部側にある。
  2. その温度が変化が大きく、また透湿抵抗の高い材料に挟まれてそこに低温側がある

と考えていると・・・話した。

この中で壁構成材の吸放湿量について少し触れたい。

少しウエブで検索すると上の論文(研究報告)がみつかった。この紹介をしたい。尚このページの表や図は全て上の論文からの抜粋である(民間でないので使用させてもらう)。
この論文は住宅の天井や壁に使われる素材の吸放湿性能や特性を実測により明らかにしている。実験方法はJIS A 1470-1:2008湿度応答法(中湿域)である。

実測された材料は下の表の通り。

木材が中心であるが無機質系素材(新建材)も実測しており参考になる。

杉材の結果は下の通りである。

杉の無垢品と合板に加工した材料では吸湿量は1.5倍にもなる。また厚い木ほど吸湿量も多く放湿量は厚くなると鈍くなるようだ。ただし・・・この測定は温度は23度一定で湿度のみかえる方法なので、放出促進(パージ)のために温度を上げていない。つまり外壁内でおこる内部結露時のような激しい湿気放出はなく穏やかな放出といってよいだろう。

下図は無機質系の放出と木材系の放出の比較も可能である。

同条件では木毛セメント板がずば抜けて大きいが、その他の無機質材料でも木質系と変わらないか少しすくなめではあるがやはり吸放湿する材料だとわかる。

ここから私の推論となるが、

合板を使わない耐力壁であっても無機質系の新建材でも吸放湿はおこる。但し湿気の吸放出だけで夏型内部結露が起こるのではなく、内部構成と透湿抵抗比がからみあって内部結露の起こしやすさが変わるのでとても複雑になる。吸放出湿物質を使わない木造は不可能であるだからこそ・・・一般的に壁内結露防ぐには

  1. 通気層が適切に設置されていること
  2. 雨漏れや材料に雨がかりがないこと
  3. 透湿抵抗の低い素材を壁のどちらか最外部使う
  4. 吸放湿物質の温度変化をおさえる。

が現実的にできる対策と考えている。特に4の吸放湿物質の感度の高い素材の温度変化押さえることは有効だとおもう。このことはこの夏に何らかの裏付け実験をしたい。

紹介した論文は「木材の吸放出 島根県産業技術センター」でググると上の論文が見つかるのでご興味があればご覧頂きたい。

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