無難とは「難がない」という凄い事。
屋根の架構方法とプランの関係

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5年前に「『緑の家』は無難な家を目指す」と宣言している。

周りの人に無難な家を造るというと、皆さん怪訝そうな顔になる。無難とはさして優れておらずありきたりな物という印象のためである。しかし茶の世界にも「無事」という言葉があるそうで、これは平穏無事ではなく・・・

「求めなくてもよいことに気づいた安らぎの境地」

との解釈があるようだ。

なかなか深い意味だとおもう。

家とは何か?と問われたら、それは答えに困るが、実は学生のころ次のように習ったことを思い出す。

「家は雨風露をしのぐこと」である。

凄く言い得てシンプルである。

雨風露をしのぐとは、雨や風の影響を受けにくい空間を作ることである。雨や風をしっかり防ぎ、露という湿気まである程度しっかり防ごうとおもったら、外気との遮断であり、シェルター性がしっかりある事につきる。それが今の文化では耐震性の高い高気密高断熱住宅になると私は思う。つまり強風の親分である台風でも壊れない事は無論で雨漏れがしない、出来れば音もしない家であり、またどんな寒波が来ても家の中にまで影響を及ぼさない仕様であり、どんなに暑く湿気のある時でも内部まで湿気が届きにくい事だろう。このように高耐震の高断熱高気密がしっかり出来ていれば、他の家の仕様はおまけのようなこと。そのおまけが大事な事もあるが、まずは耐震性と快適性につきる。

この高耐震の高断熱高気密住宅が長く維持できる性能、所謂耐久性が私の申し上げる「無難である」になる。

近年デザイン性の高い住宅が多くなり、それは大変よいことであるが耐久性を考えないデザイン性は、一般の住宅としては成り立たない。住宅におけるデザインとは耐震性と耐久性を損なうことのない制限がある中のデザイン性と私は常日頃合からブログで伝えている。

またデザイン性を縛るもう一つは「価格」であり、オリジナル性の高い部材の組み合わせは手間がかかる。手間は建築の中で最も単価が高いので私はいつもこの手間を減らす事と出来るだけデザイン性の両立に苦労している。

外観のデザインを決定づける屋根・・・「緑の家」の屋根が単純な形が多いのは、以前紹介した「無難」が原点にあるが、もう一つの屋根の無難が・・・将来の可変性と自由な間取りを低コストで行える「和小屋組」を採用する事例が多いこと。

和小屋組とは・・・

和小屋を構成する基本的部材は垂木、母屋と母屋束と・・・振れ止めである。

上の図のように小屋束と母屋、垂木で構成される小屋組が地廻りと同じレベルの横材で鉛直荷重を受ける架構方法である。下の間取りに関わらず好きなように屋根形状を計画出来るので、その汎用性から日本の多くの木造建築はこの和小屋を基本として造られている。大事な点は、「地廻り」と「振れ止め」でありそれが守られれば自由な階下プランがメリットになる。例えば下階の耐力壁と小屋組の振れ止めとは別位置に考える事も可能となる。

和小屋組の基本的骨格を示す。
2階建ての基本的構造計画はビルと同じように四角い箱を2段積んでその上に三角の屋根の箱がくると考える。その時箱の上面となる黄色い部分とピンク色の床は平らな面が基本となる。

2階建て地廻りをしっかり計画し、建物の構造を1階、2階、小屋と完全に分けて考える小屋組である。その考えは一般的な「箱物」・・・つまり鉄骨造やRC構造と同じ。四角い箱を重ねて層を造りその一番上を勾配のある屋根としてつくる方法。

2階の床地廻りがピンク色部分。
2階の床地廻りと同じ高さが床面でピンク色部分。
小屋裏の地廻りとなる桁が黄色い部分。
小屋裏と地廻りと同じ高さが小屋裏面黄色部分。
こちらは画像の入れ間違い
1階はピンク色の四角い箱と2階は黄色の四角い箱でおのおの耐震性が確立される。

和小屋組は上の2層(1階と2階)の上にもう一塊の物体を考えるイメージである。すると・・・2階の耐力壁で負担することが可能になる。

小屋裏面から上の緑色部分が和小屋組の屋根となる。
1階はピンク色の四角い箱と2階は黄色の四角い箱でおのおの耐震性が確立される。

一塊と考えるが故にその和小屋は小屋裏空間を使わないので、細い部材で小屋組の一体性を確保できる事が特徴である。それが振れ止めだったり、小屋筋かいと呼ばれる部材である。この振れ止めが前提で和小屋組が成り立っている。

2階から和小屋をのぞむ。ここから見えるだけでも11本の振れ止めが密に入っていることが伺える。

地廻りが揃い、細かい部材で固めた一塊の小屋組は、基本的には小屋組の振れ止め位置と2階(もしは1階)の耐力壁と揃える必要はない。このため屋根形状を単純にしつつ2階の間取りは複雑にもできるし、ワンルームのような単純な間取りも可能。

つまり2階の箱がしっかりと地廻りで計画出来れば、屋根=小屋組は一塊の物体として独立させて考える事ができる。このようなメリットがあるので、日本の一般的な木造建築物は寺院も含め和小屋が多く、建築基準法も和小屋が前提であるため小屋裏には「振れ止め」を設ける規定がある。振れ止めとは小屋組(屋根空間)における耐力壁のことであるが、これさえあれば小屋組の耐震性は無難になる。一塊となる小屋裏には本来耐震性以外の役割を求める事はしない=茶の湯の無難にも通ずる無難である。

つまり・・・上の写真でもわかるとおり基本的に和小屋には小屋裏空間を使わないことである。2階のプランの自由が約束されている和小屋であるが、その自由と引き替えに小屋裏を使う事が出来ないくらいに振れ止めと小屋裏筋かい、束を入れる事になる。もし小屋裏をみせたり、ロフトとして使う場合はそれなりの制約(2階とプランとの整合性や、強い耐力壁)が必要となり、構造計画の難易度が上がる。

白山裏の家で計画された小屋裏露出の場合の振れ止めに変わる強度の高い小屋裏筋かい。

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