
先週旧巻町に建設中の「緑の家」に配筋検査に伺ってきた。
まずこちらの情報を・・・↓
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02992/040200016/
これは昨今話題になっていた木造住宅の基礎梁におけるせん断補強筋のフックの有無が結局グレーになってしまった。
まずせん断補強筋のフックとは何か?
下は現在新潟市で施工中の月見町の家の基礎配筋↓。

と・・・
下は昨日配筋検査に伺ったやはり新潟市に建設中の「緑の家」の基礎配筋。

では何か違うことがわかるだろうか。
それは・・・まず今回の話題のフックである。

法令では原則このようにせん断補強筋には主筋へのフックがマストである(コンクリ―造基準)。ただし、安全性の確認を行ったものについては特に例外となる。この安全性の確認とは一般的に構造計算になるので、「緑の家」では構造計算により安全を確かめた後、フック付きとフック無し両方を設計している。フック無しの方は基礎梁にかかるせん断力をコンクリート断面の許容力だけで問題ないことを確認している。これは住宅の基礎が受けるせん断力はごく小さいので可能になるが、コンクリート建造物では大きなせん断力が働き、上下主筋をバラバラに歪ませコンクリート断面を壊すので、このようなフックで主筋を拘束しつつ自身の変形を防ぎコンクリートを拘束することで、梁の許容せん断力が大幅に上がる。
さて計算の根拠(せん断補強筋のフックが無いときは0として計算)は・・・下のとおりグレー本(2008年)に記載があり、フック無しは鉄筋による剪断力を「0」として計算し安全性を確認する・・・とある。


一方この赤線部分がせん断補強筋の必要性を説明している大事な箇所。ここに「主筋内部のコンクリートを十分拘束」とあり、そもそも住宅の基礎梁ではフックつけても主筋内部のコンクリートの拘束には全く影響がない。この文で想定しているのは下のような基本形で矩形の鉄筋で囲まれた梁である。

通常はコンクリートの梁といえば上のとおりであるが木造住宅の基礎のほとんどが下のような形↓

この図が示すように主筋とせん断補強筋で囲まれたコンクリート部分がないので、せん断補強筋の役目は上下主筋の変形防止だけになる。そのためせん断補強筋の役目は曖昧になり、だったらフックは無しでよいのではないか・・・という解釈で現在までフック無しの住宅の基礎が大半を占めている。
しかしフックがあれば主筋の変形だけは防止できるので効果はそれなりにあり、構造計算でせん断力の安全を確かめていない基礎梁には、やはり有無を言わさずフックを設けるのが良いということになる。だったらやはり行政はせめてこのフックのチェックくらいはマストにした方が建て主さんのためになると考える。
なぜできないかといえば、過去のフック無し且つ構造計算無しの事例が多すぎて、仮にフック有を必須に決めると過去の建物をリフォームなどで確認申請を行う場合、全て何らかの補強を必要とする建物が大多数になり、社会的損失が大きいからと想像できる。しかし社会的損失と安全性は全く別物で、建築基準法などの技術系審査は社会的損失を考えて判断するべきではなく、原則は安全か否かであり社会的損失をフォローするのは他の法令で行うべきだと私は思う。