昨日2回目の耐力壁チェックにスタッフと2人で伺った。予報では雨であったため2人で行なえば時間短縮と集中してできる。しかし検査中は降らずに楽にチェック出来たことはついている。いつも雨が降らないことからこの2人は晴れ男と晴れ女と思っている。
第一回目の検査はほぼノーミスで完璧に近かったが、今回は間柱部分で継ぐ箇所の釘の縁距離に多数のミスがあり、手直しとなった。天候に左右される場所での人の行う事はいつも必ず同じ調子になるとは限らない。やはり法律のとおり建設会社さんのチェックと工事監理者のチェックのダブルチェックが必要と思う。
さて雪が降ると特に思うのがその家の許容積雪量である。特に今回は雪の堆積量を2.5mとして構造計算しているので耐力壁が多く必要で、その検査枚数も多くなった。その積雪量だが・・・
長岡市では市が定めたその地域にふさわしい積雪量は2.5mである。2.5mの雪に耐えることができれば、原則雪下ろしが必要無い建物であると思ってよい。当然100年に一度は2.5m以上降る事も考えられるが、その確率ならやむ得ない。
今回は当然2.5mの耐雪住宅である。この時に気をつけたいのが、建物の高さである。耐雪住宅は屋根勾配を緩くしないと、堆積した2.5mの自重落下力が増えるので、雪止め方法や近隣周囲に配慮する必要がある。自重落下を防止しやすいのがアスファルトシングルのような表面が滑らない素材。しかしこの素材は最低勾配が三寸くらいなので、今回の奥行きのある町屋住宅では屋根高が高くなる※。そこで屋根勾配が一寸でも可能なガルバニュームの縦長尺葺きを選んでいる。このことで床高が1.5mもある背の高くなりそうな「緑の家」でも、周囲の家と屋根最高位置はほぼ同じくなり、2.5mも雪が堆積したときに無難な形態となる。※多雪市街地で奥行きのある敷地では原則妻入り屋根形態にはしない。これは妻入りだと雪が隣屋根とくっつきやすいのでトラブルの原因になる。
他の耐雪住宅の時にも申し上げているが、周囲より屋根高が低いと雪の吹きだまりとなり、雪の堆積量が増える。一方他の住宅より背が高いと屋根のかけ方にもよるが周囲住宅に圧迫感を与えることになり、建て替えならまだよいが、新たに住まうときには周囲の住人にいらぬ気を使わせてしまい無難とは言いがたい。
今回の屋根高は周囲とほぼ同じで且つ道に面した車庫の軒高も低いので、仮に2.5mの雪が屋根にあっても圧迫感は低いと思われる。以前ある「緑の家」の耐雪2mの設計時には、1.5m積雪したときに前面道路に近かったので近隣住民から雪下ろしはしないのか・・・と催促を受けたこともある。この時は屋根素材がファイバーシングル葺だったので、全く雪がずり落ちないことで安心はしていたが、周囲の人は屋根素材が特別だと思わないので、雪が落ちそうに見えるのだろう。
以前は雪下ろしも出来た私であるが、この一年で雪下ろしはもう出来ないと悟る。そんな事だから、これから30年以上も住まい続ける住まいは、最近では雪下ろしの心配が無いように、最低でもその都市の適切な堆積量で設計する事が無難と考えている。もし心身共に頑強な30才で家を造っても、30年後は60才である。60才で雪下ろしの心配をすることが如何にストレスになるかは、60才にならないと実感できないが、その時にはもう既に手遅れである。ちなみに新潟県における各都市の適切な雪の量は、大体以下のとおりである。これより少なくする場合には、「雪下ろしをする家」として、法の但し書きを採用する家となる。
適切な積雪荷重 | 主要な都市 |
1.0m | 新潟市東区、西区、中央区 、北区 |
1.2m | 燕市 |
1.3m | 新潟市秋葉区(一部除く)、柏崎市街地 |
1.8m | 長岡市与板 |
2.0m | 三条市(山間部をのぞく) |
2.5m | 長岡市(太田地区等の除く旧長岡市) |
3.0m | 長岡市越路 |
3.2m | 長岡市小国 |
「「緑の家」は随分過剰な積雪量を見込んでいるな」と思っている方もいらっしゃるだろう。しかしこの積雪量でも国が定めた性能表示制度では耐雪等級は1で計算する。この更に上位ランクに耐雪等級2があるが、流石にそれはご希望がない限り設定していない。つまりこの耐雪量でも過剰設計とは言えない・・・と私は思う。
この今朝白町の家では、光中庭がありその効果がよくわかる。