まずは上の図をクリックして日本とドイツの紫外線の量の違いを理解。
明らかに紫外線の量に違いがあるのがわかる。これは紫外線だけではなく、気温も、雨量も、湿気の量(絶対湿度)も同じ。地域ごとに特性があり、まずそこから把握する。話は少しさか戻り・・・
上は住宅瑕疵担保責任保険に申請する個別3条の申請用紙である。住宅瑕疵担保責任保険とは法律で定めらている「住宅を建築をするときに施工会社さんが入らなければならない半ば強制保険」である。これに入らなければ国にそれ相応の「供託金」を預けなければ住宅建築請負契約はできない。よってほぼ100%の割合でこの瑕疵担保保険に入っている。当然保険だから守らなければならない決まりがありそれを国交省が下のように取りまとめている。
上のとおり第一条にこの法律の趣旨と定義で第2条にあるとおり関係法令で「雨水防止」の根拠、そして第3条に本基準に従わない場合の取り決めであり、私が何度も申し上げているのがこの3条でこの中である部分だけの仕様を変えたい場合の申請を「個別3条」という。
で、どの部分を変えたいかというと・・・
この5ページ目にある「乾式の外壁の仕上げ」=木貼り(サイディング)のことである。この第10条の4項で「外壁開口部の周囲は(中略)シーリング材を用い、適切な防水措置を施すものとする」とあるが、木貼りの外壁の場合、これに該当せずシーリングをしないことが多い。そこで個別3条を申請することになる。
上の写真のとおり「緑の家」では木の外壁の時には窓と外壁はシーリングしないで施工することが多い。例えば右のように青いシーリングを施すと木が暴れた時にシーリングを切ってしまい、一般的にその補修を10年間施工者は無償で行う必要がある。そもそも木の外壁の特性を考えれば特にベベルのような動きやすい外壁とシーリングの相性は悪い。
住宅瑕疵担保責任保険が開始された10年以上前のその当初はやむないが、すでに15年経過してこの仕様規定は何ら変わりないのであるから、やはり個別3条を取得することが誠実な工務店であろうと考えている。
一方どう考えても個別3条を取得できない木の外壁があると思うがそれは一体どのように個別3条を取得しているのだろう。「緑の家」の軒の出がしっかりありかつ窓上には庇まである仕様でも、個別3条取得は少々難儀である。であるのに・・・木の外壁をすのこ状に貼り(ファサードラタン)、これ自体は別に問題ないが、通常二次防水のシートが一次防水を兼用することになる。紫外線だけを見ても先進国で最も高い日本でそんな環境負荷の高い状況のシートがたった0.5mmで可能な柔らかい素材を見たことがない。もし一次防水がない(2次防水がないともいえる)ということは通気層がないという解釈ともなり、通気層が必須の住宅瑕疵担保責任法の設計基準からも逸脱する。しかしすでに巷にはこのすのこ状の外壁の建物が結構あるのだから、瑕疵担保保険は通常OKになっていると考えられ、知っている人がいらっしゃれば勉強不足なので是非その30年ほどの設計耐久性が必要な一次、二次防水兼用のエビデンスを教えてほしい。
そのシートを製造している国はドイツであり冒頭の図の通り、ここでようやく冒頭の図に戻るが、ドイツの1.5倍ほど多い日本との紫外線の照射量一つとっても大きな開きがある。当然ドイツには梅雨もないし、なんといってもエアコンの普及率が15%以下と夏暑くなりにくい。環境条件が全く違う。
有名な格言で「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」 がドイツではあり、これは「愚者」は自分で失敗して初めてその原因に気づき、その後同じ失敗を繰り返さないようになるという意味で、これでは経験したことからしか学べない。それに対し、「賢者」は自分が経験できないことも先人たちが経験したこと、つまり歴史(論文等)を学ぶことで、まだ自身で経験していないがその失敗の原因を想像することができる、ということだと思う。私は過去の他人の失敗から他の失敗も想像し、同じ失敗をしないようしたいと思う。但し時には冒険も必要であるが、それは自身の家か親族の家で行えばよく、他人の住宅で行う必要がないと考えているし、もしどうしても行うなら説明を行い同意があればよいだろう。そのくらいの慎重さが求められるのが、日本ではまだ歴史的にも経験がないすのこ状に外壁を貼る薄いシートの外壁である。特に嫌だなと思うことは、他の人のが勧めたので真似をして作ったと最初から逃げ道を作ること。技術系の職業なら自身で物事を良し悪しを決めたい。
さらに申し上げれば・・・
長期優良住宅の対応も疑問である。すのこ状に貼られた木の板がもし外壁と考えるなら、外壁の下地である胴縁は、地面から1m以内であれば防腐防蟻剤を原則使わなければならない(ヒノキやヒバの芯材ならOK)。この時に薬剤だと透湿防水シートを犯すと考えられ、仮に使用可能としても、すのこ状で隙間があるので薬剤成分の劣化が促進され、隠蔽時より薬剤効能維持が不可能だと想像できる。一方ホウ酸系を使えばホウ酸は水溶性なので雨水が普通に入り込む外壁胴縁では一年も効果はないはず。そもそもシロアリの活動がほぼないドイツ等(択捉島と同等以上緯度で平均気温が低い)の真似をすることが果たして良いことなのか・・・等々でせっかく良きイメージの木の外壁が、これらによって悪いイメージとなりオーナーさんに悪影響とリスクを及ぼすことが予見できるがそうでないことを願っている。