「て・こあ」から学ぶ事 ① 、 その② からの続きです。半年かけようやく最終話・・・こちらは今年最初の「緑の家」の提言とします。
ニワというと外にある外構の庭ではなくここでいうニワとは・・・最近でいう作業土間です。
ニワとは
古い農家の家に見られる作業土間が代表として浮かびますが、実は町屋にも通りニワや、台所と一体となった土間のことも含みます。
戦前の日本の暮らしは、農家を代表とする民家と商家を代表とする町屋(長屋をふくむ)があります。この町屋でも必ず靴で行き来できる廊下のような通りニワがありました。これは日本が、雨の多い気候上どうしても家の中で外作業があったとき必要な場所となったり、逆に湿気の多い環境において靴のままの生活は快適では無かったので、どうしても靴を脱ぐ場所の確保として座敷を造り、日常の作業は靴のままの部分としてニワとなった・・・このためニワが町屋でも必要になったと思います。
ニワが生まれた理由・・・
日本の大部分は3日に1日は必ず雨天・・・そんな雨の日でも作業ができる場所・・・それがニワだったのです。確かに私も子供の頃は、このニワで梅雨時を過ごしました。生家は家で仕事していたので、そこに吊りブランコを設置できるほどこのニワがとても広かったです。
またお米、魚、野菜中心の食事が日本の文化ということは①でお話したとおりです。考えてみれば当たり前で、一日3回もある欲望は他の寝ることと性欲を抑えて最も回数の多いことから文化の中心といっても良いでしょう。
もう一度おさらいです。ここ数千年、食の中心は、「米」です。特に水稲は東南アジアの主食で、雨の多い地域(水の豊富な地域)でしか栽培することができません。つまり日本は・・・蒸し暑い、水の豊富な東南アジア地域なのです。
米は栽培の時だけ水を使うわけではありません。戦前は一つ屋根の下に暮らす人数が多いこと、白米以外は少量のおかず、おやつなど無い事から米を多く食しました。だから昔の家では羽釜などの1升炊きがあたりまえ・・・。米を磨ぐ、洗う等その①で説明したとおり米は炊くときも大量の水が必要ですが、食後も多くの水を使います。
腕良く焦げが無いお釜でも釜にはべったり米デンプンがくっついているので、水を張っておきます。その水の入ること・・・10L以上は入ります。
何回か水洗いするのですが、戦前では井戸や小川などに行ってザブザブ洗うことになり、お釜は水だらけ・・・。これを拭くことが出来ない(羽裏は煤で真っ黒のため)ので、そのまま竈まで持ってくると辺りに水が滴ります。ですのでこれは外仕事の一つといっても良いでしょう。その時に台所が作業土間の続きなら何にも気兼ねがいりません。隣人でも友人でも兄弟でも夫婦でも気軽に台所に立ち入られます。
「て・こあ」の台所ニワ。キッチンはこの家に似合うように設計したもの
ただ現在は電子炊飯ジャーになっているのでこの外仕事が相当軽減され、米だけではにニワが必要という理由には相当無理があります。
野菜はどうでしょうか?近年は包丁もいらないカット野菜までありますが、今人気なのが家庭菜園で造った野菜や、地場の農業組合からかう土付丸ごと野菜です。一度これらの野菜を扱った人ならわかりますが、以外と下処理が大変。いらないところ取り去るだけでも流しは土だらけ。そして漬け物や生で食するためには、水洗いが相当必要。ジャブジャブ洗うと、流しの下も水が飛び散る・・・。
魚も同じです。丸ごとの魚をさばくと鱗が飛び散るわ、生くさくなるので流しを全部洗うとやはり水が飛び散ります。この時に床が土間だと・・・全く気になりません。
学んだ事は靴履きで「台所のニワ」=キッチン土間
ニワ(キッチン土間)の復活
でもニワは時代から拒絶されて無くなったのになぜ又提案するのか・・・
それは以前のニワと違い、超高断熱高気密である「緑の家」のニワは暖かく衛生的なのです。台所の床がコンクリートだったり、石・タイルだけなのです。
戦前のニワは、床下と地続きでつまり害虫や湿気、寒さがそのままニワにつながっていました。ですから、冬は大変寒くゴキブリ、カビ、ネズミも普通にいてそれを想像してしまうので嫌われ衰退したのです。ですが、超高断熱で床下暖房されたニワは、暖かく、乾燥していて清潔・・・でも靴履きの場所なのです。考えてみれば拙宅には16年前からニワ(土間ラボ)が設けてありましたが、簡易キッチンはあったのですが主台所は別だったので気がつきませんでした。「て・こあ」に伺うようになって初めて台所がニワにふさわしいと気がつきました。
日本の住いの豊かさは共同料理
これには殆どの人から同調して頂けるでしょう。日本人は食事の時に語らい、集まる事を良しとしております。何かあれば懇親会といって食事をしながら気持ちを解放させます。また日本食は共同で造る事が多いことも重要です。今でも皆大好きな鍋物は囲炉裏でみんなが鍋をつついた料理の名残ですし、同じ鍋に箸をいれてつっつくなんて食べ物を分け合う事を絵に描いたような行為です。このように日本には造りながら食べる料理の多い事・・・。そういった参加型料理が大好きな人種だからこそ、昨今の主流オープンキッチン(対面型)などが恋しくなるのです。またBQも参加型料理でありさらに汚れも気にならない・・・それだから人気があるのです。つまり今の家のキッチンには過去の食文化にあった共同作業や分け合う事で得られる豊かさ、誰でも参加しやすいような環境(汚れを気にしない)がかけてしまい、それを補うようBQにブームになったのでしょう。家で何時も共同作業していれば、外はおにぎり又は駅弁のような手軽な外食で満足していたのではないかと思います。
リビングをなくしニワ(キッチン土間)をつくろう
TV鑑賞部屋になっているリビングをやめ、台所のあるニワを家の中心にしましょう。それだけできっと家は豊かになります。無論「緑の家」の特徴の高基礎はそのまま。「緑の家」はべた基礎なのでその上にもう一つコンクリートで仕上げた床を造るだけです。小上がりがあってもいいし、他の床と同じフラットなニワでも結構です。ニワを造るだけで豊かになれます。
人が幸せと感じる場面は多くありますが、多分・・・心と心を合わせている時にどんな人も幸せを強く感じると思います。・・・その時は相手の笑顔が見られるから・・・です。人は一人では幸せを感じにくい・・・そんな生まれ、育ち方をしている生物なのです。だから共同で造り笑顔を見せ合う食事は心が豊かになれるのです。