屋根に使う遮熱材(輻射熱反射材)の偽科学は×! 2010年の建築学会論文から 

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さて暑い日が続きますので、又その関連の話題です。情報は2010年 建築学会の大会で発表される論文からです。

「屋根下に遮熱材を使った時の効果」を東京都市大学の近藤研究室(近藤靖史教授)で実測を交えた研究をされたようです。

以前から当ブログで、
住宅では遮熱材(輻射熱を高効率で反射する材料)を断熱材の代わりに使っても殆ど意味がなく、断熱材と一緒に使って効果が多少ある。昔からそんな事はわかっているので、国のマニュアル本である「住宅の省エネルギー基準の解説」本にもそれなりの事で記されている。
と言ってきましたが、その事を裏付けるような論文を見つけました。

実際の家と同じ条件で実験を行っている。断熱材はフェノールフォーム=多分ネオマフォームで、その表面にアルミ蒸着シート(ピカピカシート)を貼って放射率を0.54にした材料。更に比較として極限に近い0.2の放射率も計算だけしている。

研究題名は「屋根通気層内表面の低放射率化による遮熱効果の検討」で東京都市大学の近藤研究室(近藤靖史教授)の論文です。

条件
実際の屋根の下の通気層内に反射率の高い断熱材と一体となった材料の場合と反射率が低い同じ断熱材の場合の小屋裏温度等の比較です。

これなら公平で、現実的ですね。

よく遮熱材を効果的に見せるように、電球を吊した下に密閉されたBOXをおいて、片方には遮熱材で、片方には遮熱材無しでという状況を造って、その密閉されたBOXの温度比較という、現実の家ではあり得ない条件で「どうだ!」と自慢している会社がありますが、全く無意味です。こういう実験で惑わせる事を偽科学と呼びます。事実を知らなくて勧めても罪ですし、知っていて勧めていたなら詐欺に近い手法です。

論文の結論は・・・

「屋根通気層内表面の低放射率化を行うと小屋裏内の温度を低下させることができ、夏期の冷房負荷を軽減できる傾向にあるが、その効果は大きくない。一方、冬期においては日射熱取得の妨げとなり、低放射率化した方が暖房負荷はやや大きくなる傾向がある。」以上論文の「まとめ」の全文

となっています。今まで国の技術書のアナウンスと全く同じですね。

詳しくは大会会場でご確認下さい。なおこの論文は日本建築学会で全論文の入ったDVDを販売してますのでご購入下さい。全論文が入って10600円です(高いかな?)。

簡単に解説すると、夏期は反射する遮熱材があった方が無いよりマシ程度、その平均的な温度差は僅か0.5度。よく大げさに紹介される7度の温度差があったとか、10度以上あることは無かったのです。こういう実験は、条件を少し変えるだけで全く違う結果が出ます。今回のように実際に使われる断熱材(多分ネオマフォームで厚さ50mm)であれば、遮熱材の影響は少なく、断熱材が薄いほど大きな影響が出ます。こんな事は技術者なら常識ですが建築業界は技術者不在なのでしょう。今も堂々と宣伝している大手地域ビルダーがあり、建て主さんはだまされてしまいます。
この実測したネオマフォーム厚さ50mmでも、屋根に使うには高気密高断熱とは言えないくらいの薄さです。緑の家はこのネオマフォームなら3.6倍の180mm(SSプランの家)ですから遮熱材の影響は殆どありません。遮熱材は設置はお金の無駄になりますね。

Case3が放射率0.2と極限まで反射する素材を想定した場合。それでも年間の熱負荷は殆ど替わらない。これではお金の無駄遣いになるといってもよいかな・・・ 鏡が放射率0.1だから、0.2とは少し埃の被った鏡程度。長期間埃が着かないことはあり得ないので0.2でも維持するのは難しい。

ほんと何時も思うことは、

国が監修している技術書を信じないで、イチ建設会社やイチ工務店の言い分を信じる人が大変多いのはなぜだろう。
国が監修する時は、その分野の著名な人を集めて技術書を造ります。著名な人は殆ど大学の先生で、責任の無い国の役人と違いこの方達は何よりも名が出ることでプライドと権威をとても大事にします。無論死後であっても・・・。だから間違った記述、記載を極端に嫌いますので大きなミス、評価間違いは殆どありません。技術書を実際造る人は国の役人とは違うのです。先ずは国の基準書を信じましょう。

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コメント

  1. オーブルの浅間です。 より:

    アルミメーカのまわし者様
    コメントありがとうございます。
    住宅では殆どの人がだまされます。多分・・・
    今でもありがたく屋根に遮熱シートを敷き、その分断熱材を減らす会社があります。断熱材+遮熱  ならわかるのですが。
    数年前のチラシには、「これからは遮熱工法」などと宣伝していた建設会社さんは、最近は全く「遮熱」を宣伝していません。その時そのチラシで建ててしまった人はどうしているのでしょうか?
    建築業界は今でも摩訶不思議な常識があります。
    「国よりも一個人の情報が正しい」
    という常識が・・・。  

  2. アルミメーカのまわし者 より:

     退職前の仕事で1000度以上の炉を設計してました。
    温度が高いと輻射の損失が大きいので
    輻射を防ぐ塗料として何年かおきに懲りずに売り込みが有りました。
    うたい文句はたいがい宇宙に使用されてる。NASAで開発とか。
    磁石による燃費改善、永久機関の話は繰り返されます。
    騙される人がいるのでしょうか?