新潟の家 屋根の拘り・・・③ 重い屋根を支える柱の工夫

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表玄関 町家であるため玄関や門は武家屋敷とは別物。玄関上部左右に神棚?があり写真のとおり土間は巨大である

最近はあまり他の建物を見に行かないのですが、先回お話ししたとおり「ワクワク」するもがあり渡辺邸の改築現場を見に行きました。そのまとめです。

時間の都合上、30分程度しかいられなかったのですがその時の興奮は建築士としての心がざわめくような「ドキドキ」で、大変興奮した一時でした。
因みにこの大変暗い工事現場内を撮影するため新たにコンデジを購入するほどの入れ込みです。これは後日紹介します。

渡辺邸の平面図と断面図です(カタログより抜粋)。

建物高さはほぼ10mと、私どもでもこのくらいの木造2階建てをよく造ります。しかし実際の建物はそれより大きく感じられ、空間の使い方が秀逸なことを感じます。

そして何のより一番凄いと思ったのが、木の強度を限界まで使い切るその当時の大工さんの眼力(技術)でしょう。上の平面図でグレーの楕円が下の写真のところです。緑の矢印が内観1の写真でピンクが外観1の写真です。

 外観1 大屋根と大きい下屋の重量まで細い柱で支える。実用重視の他の古い古民家と違い洗練されている。

 内観1 冬囲いの支柱がありわかりにくいが、この写真で柱は6本だけ。

こんな大きな屋根が載っているにもかかわらず柱は5寸角(15cm)程度の大きさで10本で支えています(豪雪地帯の関川)。これは今の木造軸組工法では不可です。今の軸組は(法律では原則)柱が土台の上と決められているため、重い屋根は土台の木のめり込みで柱の大きさが限定されるためです。ところがこのような伝統工法では柱は直接置き石の上に立てられます。加えて座屈防止効果がある鴨居や長押を設置するので純粋に柱の圧縮強度を最大限生かし切る工法になっているようです。大事な柱を生かし切る当時の知恵がこのような工法を育んだのでしょう。

木の繊維方向と直角のめり込みは非常に弱く、繊維方向のめり込みには非常に強い性質を生かし切った工法です。実は「緑の家」でも時々柱を直接基礎(鉄)の上に建てます。こうすることでむやみに柱を大きくしなくても構造的にクリアーできます。無論構造的に土台の上の柱と変わり無い耐力を確保します。

割り箸を柱に見立て実験。土台に掛かる力は木の繊維方向と直角。割り箸は繊維と同じ方向。

 割り箸の先端だったところの土台はこのように凹む。これがめり込み。無論割り箸先端は全く変化無し。

 柱は直接石の上に。こうすることで木の強度を使い切る。柱の色が違うのは、根継ぎと言われる補修で腐った柱の根本だけを新しい木に取り替えているため。このつなぎ方が独特で伝統技術そのもの。見事!

 の強度使い切る柱の根本の一例。通常は緑丸のように土台に柱が載る。非常に大きな力掛かる部分は水色丸のように柱は土台には載せない。この部位は引き抜きが強度のためこの金物を使用しているが、圧縮(めり込み)でも有効な納まり。

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