12月の上旬に低炭素住宅にかかわる法律が施行されました。それに伴い所謂省エネ基準も大きく変わりました。この法律改正でオーブルデザインが提案していた「緑の家」の特徴である性能を表すQ値が世の中から消えそうです。ええっーーー。
従来は断熱性能を表す数値としてQ値でしたが、このQ値は廃止され外皮性能U値となります。このU値(UA値=平均外皮熱貫流率)は建物の外皮の断熱性能を表します。「えっ同じではないの?」という声が上がりますが、少し違います。
Q値は延べ床面積あたりの性能ですから、例えば100m2(30坪)の家のQ値が1.0なら簡単に必要設備容量もわかりますし、延べ床面積は建て主さんでも知っている数値です。しかしU値は外皮からの平均熱貫流率総熱損失量を外皮面積で割っているので、外皮面積がわからなければ設備容量は算定できませんし、外皮面積は普通建て主さんにはピンと来ないはずです。というか、設計施工会社が外皮面積を明らかにしてくれるか・・・特にクローズが好きなハウスメーカーさんがね・・・。
どうして、そんな建て主さんが
益々わかりにくい数値表現に変わったのでしょうか?
言われているのは・・・
「小さな建物、大きい住宅、センターコートのあるような表面積が大きい建物では、Q値では評価が難しいとのこと。だから外皮性能にすることで、評価の偏りがなくなる」
もっともな事です。しかし私は何か腑に落ちません。そもそも何度かこのブログや当HPで申し上げているとおり、Q値を小さくしてきたのは・・・全空間24時間暖房時のランニングコストを下げるためであって、Q値が大きくてもランニングコスト下がればそれはそれでOKです。しかし新潟県ではQ値とランニングコストはほぼ反比例します。日射がない地域はQ値を下げる以外他に良い方法がないのですね。
「緑の家」の外皮面積と気積の図面。従来のQ値計算の時に必ず必要な図面。だから法改正でも全く問題ないが、殆ど建設会社ではQ値計算をしないのでこの図はない。なんとオーブルデザインでは既に6年以上前からこの図面を建て主さんに渡している。
つまり外皮面積が増える形状が複雑な建物は、同じ床面面積の家であってもQ値を下げなければランニングコストがさがりません。同じ外皮性能ではダメなのですから、Q値評価の方が目的に添っている評価だと思います。
形状が複雑な建物はQ値を下げる必要が有り(同じランニングコストの時)、だからこそ単純な形状を「緑の家」は多く造って来ました。その利点がこの外皮性能評価では見えなくなるのです。外観形状が複雑なメーカーは今回の評価で有利になるのでしょうが、これはランニングコスト下げると言う観点から本末転倒なはずですが・・・。
とは言っても、
「今度の省エネ評価は一次エネルギー評価もありますから、形状複雑のランニングコスト増も評価されるから大丈夫ではないのか?」
との声も聞こえて来ますが、純粋な建物断熱性の低さを設備(太陽光発電等)で補ってその建物の断熱性の真実が見えなくするような事にもなりますから、その点は??ですし、標準計算でどこまでその要因を取り込むかはブラックボックスになります。
外皮性能の評価で純粋によい事は、「緑の家」のように基礎が高いなど立体的に家を計画する場合、どうしても床面積に対し気積(断熱空間の容量)が大きくなります。この場合はQ値が大きくなり不利になって来ましたが、外皮あたりの性能なら有利に表現できる事でしょうか。また換気による熱損失も建物性能から切り離されて「設備」に入るようですから、純粋に建物断熱性能が評価となる事です。
この解説は久しぶりに当HPのコラムで行いたいと思いますが、何しろ今はとっても仕事が多すぎて基本設計さえこなせない状態です。何とかお正月にコラムを書きたいと思います。
コメント
大変長い投稿・・・ありがとうございます。
Q-1住宅が一つの省エネ住宅の目安でここ10数年進んできて
いましたので、聞きなれない外皮面積平均値=U値という表示になるのは確かに判りずらいですね。住宅業界でも判りずらいのは同じでしょう。 最近の地球温暖化による気象変動のおおきな現象が今回の東京地域における積雪20cmとうい現象でしょう。産業用以外のエネルギー消費構成(住宅・乗用車)
は今後益々その省力化を求められるでしょうね。その意味では
Q-1住宅の流れは表示方式が変更されえも変わらないでしょう。 例えば、外皮性能値においてもQ値においても、単純に
断熱性能値や開口部の熱還流率のみの追求だけでは省エネ
数値を改善できないという意味では同じでなければなりませんね。 BOX型の建物とL字型の建物と同じ床面積であれば
同じだというQ値は廃止という議論においては異議は無いですね。しかしながら、例えば、基礎断熱の場合の内部土間の取り扱い、換気による第3種と第1種の換気ロス計算の扱いに
おいては、問題があります。地域による開口部からの取得熱計算においても地域差を考慮してもさらに問題があります。
技術的な面では、取得外気温度の効果を考慮したり、太陽熱
(800Kcal/㎡)のアクテイブ化による外気換気温度相殺方式の考慮を数値化したり、トロンボウオール方式による蓄熱性のうちを反映させたり等々、かなり欧米には遅れをとっているのは否めませんね。
例えばゼロエネを目指す為に外壁400mm、天井500mm等々
の話では、汎用性がないので、議論としてはもう一つですね。
第3種換気における、排気熱をHPにてCOP3程度にまで引き上げたシステムに対して、第1種熱交換による熱交換値の計測の値の検証はどうか?その持続性においては問題点が無いのか(スエーデンでは減少傾向にある。熱交換換気ダクトの清掃、汚れに対応するコストは?)
例えて言うなら、建築基準法で言う換気性能を0.5回確保しなければならないことの検証ははたしてなされているのだろうか。
ゼロエネと言う為には、生産コストとランニングコストの相対的合理性の追求でなければなりません。
300万のコストをかけてソーラー発電をする。
系列電力に売電して20年で元を取る。負担は全国の需要者が
負担をする。 ハウスメーカーはゼロエネを賞賛する。という構図ではだめですね。
300万かけて独立電源を確立して超省エネ住宅の性能の相乗効果で、実質的にゼロに近ずける。大量の降雪を利雪型屋根
にして北面に堆積して外壁からの熱ロスを抑える。
地下水の循環型HPを利用して0.8KW程度の消費電力で
COP3を産出し、Q値ー1住宅で暖房負荷20Kcal-30Kcalにしてほとんどゼロエネ住宅にする。
現在寒冷地の住宅は関西地域に比較して3倍~4倍のエネルギーを使用しているといわれています。これが、I地域とⅣ地域の差となっていますが、寒冷地の住宅技術を単純に市場にある建材を積み重ねるだけの住宅建設ではなく、イノヴェーションによるゼロエネを目指したいものです。
kotaroさん、こんにちは。
>ハウスメーカーの希望に対応しているのでしょうか。
直接でないと思いますが、多少はあると思っております。
自由なデザインが阻害されやすい事と、ハウスメーカーの嫌いな気密性能表示はほぼ捨てたのですから・・・。
それよりもこの内容を決めた官僚・学者様に思惑がありそうです。というのは日本はやはり温熱環境の性能は欧州や北米に比較して劣っており、先に進んでいる欧州のような年間冷暖房負荷と一次エネルギー評価・気密性能になると、後追いを否めませんのでプライドもあるのでしょう。だからこそ欧州にはない「平均外皮熱貫流率U値」になった「勝手に」思っています(但し先に紹介した建築技術1月号にはそのあたりの他意見の解説があります)。
やはりU値のデメリットは「一般の建て主に益々わかりにくい」数値で、この数値だけを訴えてもQ値のようなインパクトはありません。気密性能も更に後退・・・風の強い新潟(関東も)では体感上の影響は大なのに。
知りませんでした。ハウスメーカーの希望に対応しているのでしょうか。小さいQ値を求めるのみでは住みやすい家にならないとは思いますが、私にとって一つの判断基準にはなっていました。解説を読ませていただきます。