換気を少し考察 その1 ダクト式換気

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上の図は当事務所が使うダクト式換気扇の仕様表である。

最近CF(循環ファン)を頻繁にご案内していたが、先回ブログに載せた日経ホームビルダー7月号の特集・・・「換気トラブル7つの死角」を読んだ時にもう一度「緑の家」の換気についての考えを整理したいと思ったから。

まず・・・法律によって設置する常時換気の一般的な種類について下に示すと

この他にも北海道を中心として使用されているパッシブ換気(電気を使わない換気)と木製建具を使った常時換気の必要が無い方法もあるが、認知度が低いので割愛した。

となり、通常第二種換気(強制給気自然排気型)は殆ど使用されないことから8種類の換気システムになる。この中で一番多く使われるのがグレーで網掛けした⑩の第三種(自然吸気強制排気型)換気のダクトレスタイプである。無論⑩は一番コストも安く単純なシステム。

「緑の家」では現在はグリーンで網掛けされた①と②を採用している。12年くらい前は青で網掛けされた⑥を採用していたが、10年前に起こった旧Q値競争や、熱交換無しであると折角の超高断熱空間において、数件のユーザーさんの「やっぱり冷たい空気を感じる」と言う意見で現在は全て全熱交換型としている。

しかし・・・⑥のダクトレス熱交換無し換気システムは、その構造が安価で単純であり、安定した換気するので今でも魅力的な換気方法と感じているのは間違い無い。一方同じ単純型で巷で最も採用例が多い⑩は、今から27年ほど前(1991年頃)に、換気効率の実測を新潟大学と共同研究したときに立ち会っていたので、そのシステムが新潟という季節風が多く吹く環境にはふさわしくないとわかった。よって28年間一度も使っていない。これは自然給気口の位置が風下にあると全く給気されないばかりか、給気口が排気口になる事さえあったから。この事は日経ホームビルダーの7月号の熱交換率19%事件と同じ理屈であり、後に説明する。

さて「その1」では「緑の家」の定番換気システムの上位に位置する、セントラル換気システムの代表であるダクト式の第一種全熱交換型換気システムについて仕様表の見方を説明する。

ここ6年間は上の換気扇(AVH-95)を使用している。メーカーは「ケィ・マック」さん。これを使っている理由は、これと一緒に販売されているオリジナル商品のサイクロンフードの機能が大変すぐれているためで、この開発で推進者の「遠藤秀次」さんのいらっしゃる「ケィ・マック」さんがセット販売されているこちらの換気システム本体が特に不具合もないので長く浮気せずに使っている。因みにこの熱交換素子はローヤルさんと聞いている。

さて・・・全熱交換型換気システムと言えばやっぱり気になるのが熱交換率。上の仕様表ではピンク色の部分でアップにすると・・・。

こんな感じで、風量が最低時であれば温度交換率95%という驚異的な数値(但し有効換気量95%なので9094%の実熱交換率)。しかし最低風量で使う事がなく一般的にはダイヤル3~4くらいで実質風量140m3/hくらいだからこの表からは90%の温度交換率(実質8589%)となる。

よくこの最低風量時の温度交換率のみカタログ表記されているが、実際の使う風量と有効換気量率を勘案しなければ正確とは言えない。風量と熱交換率下の仕様表のピンク色にあるが・・・

アップにすると

のように・・・風量にほぼ比例して下がる事になる。

この機器はブラシレスのDCモーターを使用した強制給排気型でありその能力は・・・

200Paの圧力損失時でも160m3/h以上の能力をもつ。これが後に説明するキッチンやお風呂の換気扇を使っても安定して給気ができる能力となる。この能力が弱いとお風呂の換気扇を使った途端に不安定になり、キッチンの換気扇使用時ではまともに動く事はない。

圧力損失200Paはフレキ100Φ直線35m+フードに相当で必要且つ充分の性能。ただデシカと違って風量固定の消費電力変化型ではないため他の換気扇の影響は受ける。

無論・・・この大きな能力を得るにはそれ相当の消費電力となり、75W/hの消費電力が必要である事が上の表からわかる。

つまり・・・消費電力があまりにも少ない換気扇は、圧力損失に対し不安定な風量になるので、お風呂換気扇を常時換気システムから除外する全熱交換型換気方式(全熱交換型換気はほぼ全て該当)では注意が必要になる。

そのためA.外風の影響や、B.室内の他の換気扇の影響を受けにくくするためには、何らかの工夫かエネルギー(消費電力)が必要となる。これは致し方ないことで何かを動かすときに必要な運動エネルギーであり自然の摂理である。

A・・・建物に風速4m/s(自転車であたる風の早さ)があたる時、風上側には約16Pa、風下側には約ー16Paの圧力がかかるのでそれ以上の圧力を発生する換気扇でないと逆流する。
B・・・c値0.5の高気密の一般的な大きさの建物で、全熱交換型換気扇から除外された風呂の排気型換気扇をつけただけで最高値で内外圧力差8~10Paが発生する。これ以上の圧力差が出来る換気扇でないと逆流する。日経ホームビルダー7月号で取り上げられた換気扇のカタログでは最大90%以上の熱交換率とあったものが19%に下がるかも・・・と言った事はこの事で起きた。つまり熱交換に使用する換気のファンが静圧の殆ど発生しないプロペラ型による構造であった事で、本来の想定排気量が激減して蓄熱できていなかった。最高値で8~10Paと表記したのはその2で説明するが、既にこの「その①」から換気の事は大変ややこしいな~と思われるだろう。ホントに・・ややこしいのである。

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