断熱材を選ぶとき、こんな図を見たことがある人がいるはず・・・。
この図は平成14年(今から17年前)に発行された「次世代省エネルギー基準と指針」とほぼ国が発行した書物のP204にある図。
よくこの図が悪意もって使われるところを見る(繊維系断熱材の批判)。
まずこの本だが・・・上のような書籍であり、平成14年から10年間くらい高断熱高気密のバイブルであった。そのP204 をひらくと・・・
この図の説明が前のページの図から始まっている。
P203を見る前に先にこのページの赤部分を拡大すると、
この表をみるときこの赤線部分が重要となる。
「壁内通風が生じる・・・・略・・・すなわち通気性の無い材料により各断熱部位を空間的に独立するための措置を講じることが重要である 図9.1.1(b)」
と普通に読めば、大事なことは壁内通風を抑制することで断熱材を丁寧に入れることの前の前提条件である。表題も「壁内通気が・・・及ぼす影響」とありなぜならその前のページには・・・
表9.1.1の説明がある(「表」との文字が改行前にあるのが嫌み)。
それによると・・・
(a)は壁内通気が無い状態での適切な施工であり、
(b)から(d)は壁内通気がありその上で隙間が生じた施工と書いてある。
つまり・・・断熱材に隙間があるかないかだけでは無く、その前提条件が「壁内通気有り無し」なのである。
ご自分でも上の文言をみてほしい・・・。
では・・・
壁内通気とはなんぞや?になるのだがそれが図9.1.1である。
この図のタイトルに「壁内通気のある無し」とあればわかりやすいのであるが、そもそもこの書は専門家しか見ないマニュアル。通気を断熱材の隙間として間違ってとられることなんて考えていないはず。
簡単にいうと、
図右側のように外壁内の上下端が気密処理されていないと(タイベック側の防風処理も)、断熱材の効き目はなくなるよ!
と言いたいのである。決して断熱材の入れ方だけでこんな数値が半分になることはない。
それなのに・・・
壁内通気のことは一言もふれず、断熱材の施工でこんな差ができるGWやロックウールはだめで、現場吹きつけ発泡断熱材がよいのである。
と宣伝や解説しているところが多い・・・。
これは明らかに悪意のある使われ方である。
密閉された断熱空間にあるわずかな断熱隙間は極わずかな性能劣化を起こすが、上の表のような著しい劣化はない。これは皆さんも体験しているはず。寒い日に同じ洋服をきても、腰のあたりが少しめくれているときと、しっかり腰元がふさがれているときは、著しく暖かさが違うことを・・・。どちらも服が肌に密着する状態にはほぼ関係ない(断熱材の隙間と同じ)。さらに襟元も空いていればほとんど上着は役立たずになる。
同じように断熱材の下に空気が入り込む隙間があると通気され断熱性能は著しく低下する。大事なのは断熱材の気密化なのである。
コメント
別記事でしたが、先日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。
私もこの記事で紹介されるまでこの図の意味を誤認していました。
確かに押し込みすぎて全体の厚みが減れば話は別でしょうが、しわが寄っただけで大きく性能低下することは考えにくいですね。
そのしわの隙間を通る気流が本当の原因とは他で説明しているところは知ってる限りなかったです。
気流止めが重要とはこういう意味もあるのですね。
さく様
コメントありがとうございます。
そのとおりで、情報操作する意図があるかどうかわかりませんが、論文やマニュアルなど使い方でどのようにも印象を操作することができます(私がブログに論文の原文を貼り付ける理由がここにあります)。
この表でも、繊維系断熱材の気密性の重要さを知っている人は何にも感じないのですが、普通の人がみれば、繊維系断熱材を使うことを躊躇しそうな内容です。
私たち技術者からみると、ある情報は条件によって真反対にもなること知っているので、専門分野の関連は原文を探しみることを行います。すると今回のようなことになる訳です。
気流止めとは難しい言葉となっていますが、羽毛を始め柔軟性ある断熱材はダウンジャケットの表面のナイロン生地と同じで、ダウンに入る空気を遮断する基本的な構成部材で特別な考え方ではないのですよね。