2年前に紹介した国総研(国交省)でとりまとめた「共同研究成果報告書 木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」は1800ページを超えるとても濃い内容で、これさえ読み上げれば、高耐久が期待できる家造りをマスターする事が可能である。そんな国総研から再び濃い内容の資料・ツールが2019年11月に発表された。それが上の「木造住宅の耐震評価ツールを用いた耐震診断マニュアル(案)」である。
既存木造住宅の耐震評価は、人によって評価に違いがでやすいアナログ的な手法で進めるしかなかったが、このツールを利用すればデジタル的に進める事が出来、平等な耐震評価となる可能性が高い。
使うツールは数年前に無料でダウンロードできる耐震診断ソフト「ウォールスタット」である。一度開いた事がある人はこの名前を聞いただけで「おっ」と思うだろう。元々は新築住宅時の耐震チェックという事で開発されたソフトだと認識していたが、上のHPでは既存木造住宅の耐震診断法とある。なるほどこのソフトを使うのか。
昨年末「安易なリフォーム・リノベーションは薦めない」という連載をブログで書いたが、まさにそれを裏付けるような内容である。このソフト使った事がある人はよくわかるのだが、平成12年に施行された新耐震基準に沿っているので、引き抜き金物の設定、偏心、水平面剛性評価を踏まえた入力が必要である。
つまり既存住宅を現在の耐震性に合わせるために耐力壁を強化すると、やはり強い引き抜き力が算出されるので、それに見合った引き抜き金物とアンカーボルトが設定される。そのアンカーボルトは基礎が造られるときに埋め込まれる事が原則なので、どうやって現場で整合させるのか。コストを考えると実質修繕は難しいだろう。今回基礎は健全との前提であるはずだが、耐力壁を強くすれば鉄筋の有る無しはたまた配筋量によっては地震時に発生する短期応力で基礎が破壊される可能性が高くなる。
つまり何度も言うが、一番最初に造っている基礎の修繕は上の構造を撤去するなどしなければならないので一番難しいのである。しかも耐震設計を支える根本的な部位である。
間違いなく家の性能の順番は、
耐震耐風性>耐久性>快適性・使い勝手・意匠・大きさ
である。無論同時に達成出来ればよいが資金が決まっているので一般的にはこれが思考順番となる。
そして耐震耐風性が一番であるなら施工順番から考えて
基礎>2階床剛性>1,2階耐力壁>屋根剛性
の順番となり、最終的には基礎が一番大事だとわかるであろう。だから「緑の家」は基礎にここまで拘るのである。
さて・・・
「木造住宅の耐震評価ツールを用いた耐震診断マニュアル(案)」↓
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1084pdf/ks1084.pdf
参考に・・・2年前に紹介した1800ページを超える超資料で
「共同研究成果報告書 木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」↓
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0975pdf/ks0975.pdf
読み応えあり(専門的であるため一般ユーザー向けでは無い)。