実験はむずかしい

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いつも素晴らしい業界の情報を提供してくれる専門誌である日経ホームビルダーであるが、今回は辛口よりで。

今回は「ヒノキ神話は本当か?」という特集である。

ヒノキは杉、松と並んでほとんど方が聞いたことがある木の樹種で、木の形を想像出来る人もいらっしゃるポピュラーな木である。住宅でこのヒノキを一躍有名にしたのが、私の知る限りでは法隆寺の最後の棟梁である「故・西岡常一」さんではないだろうか。ヒノキで造られた世界最古の木造建築として有名な法隆寺。この本には私も含め多くの関係者が魅せられた。

さて、ここでいうヒノキ神話とは「ヒノキのシロアリに対する抵抗性」であり、他の木よりシロアリに対して強い・・・という一点に集中している。そのため実験として4種類の樹種の木片を生きたシロアリに加害させている。その結果をもってシロアリに強い木なのかを記事にしている。

実験結果は・・・シロアリに強い樹種の順番は・・・

杉>ヒバ>ヒノキ>松

となり公的の結果とは違う事になる。

出展:住宅金融支援機構のマニュアルから。矢印の所には「心材の」と記載がある。

公的なシロアリに強い樹種は(いずれも芯材)・・・

ヒバ>ヒノキ>杉>松

となり

杉の評価が間違いなくおかしい・・・。

で、実験の写真を見ると・・・

うーーーん、杉だけ置き方が違うように見える(P30~33)。もしこの置き方ならこの結果はよくわかる。

木は水を大地から取り入れるため、乱暴に言えばストローを束ねた繊維状の構成であり、そのストローの入り口側だけ、極めて湿気の吸い込みと水の吸い上げが高い木口といわれる部位。又針葉樹は特に夏目と冬目と呼ばれる年輪がはっきり有り、冬目は芯材は無論、辺材であっても少し堅い。つまり木表方向からシロアリの侵入にはこの冬目が抵抗するが、木口方向からの侵入は夏目のみ加害する事ができ無抵抗に近い。

もうここで賢明な読者さんならわかると思うが、杉だけストローの入り口側(木口)を横にして置いてある。他の木はストローの入り口側(木口)を下にして水とシロアリのいる土側としておいている。これが意図的かたまたまなのかわからないが、たまたまなら木材の実態を知らない人の実験となるし、意図的ならそれはそれで問題である。なぜならこの特集のサブタイトルが

「実証されたヒノキ信仰の崩壊」

とここまで言い切っているからだ。最初の手順の写真では違う置き方なのだが、実際の実験時の写真は・・・。

この内容を確かめたい方、気になる方はこの本を購入して確かめて頂ければと思う。もし私の勘違いなら謝罪するが、勘違いするような写真も良くないと思う。この書籍では当方も何度か取材を受けているのでこのようなブログは控えたいと思うが、そこはジャーナリスト魂のある良本であるから辛口の評価の理解を得られると思う。

また仮に置き方が正しくても、私としては公的に評価され表記されているような事柄を覆す程の事ではないと思う。2つ上に掲載した表である公的な文章でもヒノキに耐蟻性があるのは芯材であって辺材はないとの説明がある。しかし実験の木材は心材とは見えない。心材でない材料で「崩壊」とまで言って良いのか?

芯材と辺材の違いは↓の当ブログで紹介している。

木の耐久性 心(芯)材と芯持ち材の違い
木の種類によって耐久性が違う事はご存じでしょう。でも耐久性のある「檜」でも辺材は耐久性がない事は13年前の当HPコラ...

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