真夏のCOVID-19と換気

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まだしっかりと確かめないのに記事として書いて恐縮だが・・・

昨日の40度越えの三条市内の小学校では、エアコンONであるものの窓を少し開けて授業をしているとのこと。これは少し非科学的な考えでは無いかと思う。

ご存じのとおり、昨日の三条市では明け方で31度となり、授業が始まる9時には35度を超えていた。

そんな中、ある情報によると市内の小学校は窓を少し開けて授業をしているとのこと。すると・・・窓際は暑くてたまらない席となり、廊下側は寒くて長袖シャツを持っていくそうだ。もしそれが本当なら(自身の目で確かめていないが)それは残念な事である。

私たち建築士はその建物を設計するときに当然空調設備まで携わる。法令を守るだけで無く、子供達が如何に快適に授業を受け、安全に過ごせるかを考えて設計するはず。それがもし暑くてたまらない席があったり寒くて辛い席があったりしたら、何のための設計なのだろう。

窓を少し開けて空調するということは、外風に大きく影響を受けるだろう。
窓開けで必要以上の外風が入ると冷房負荷は大きくなり、設置されているエアコンは最大能力を使って教室内を冷やそうとするだろう。すると・・・エアコンの風が吹き出される場所では、更に温度が低く強い風になり寒くなるし、窓際は当然外風がはいるので暑いまま。そもそも空調はある程度閉じられた空間で使うように考えて設計されているので、窓が開いている状態はイレギュラーである。

都内電車も4月から窓を開けて走っているらしいが、私が乗ったときは満員でなかったのでそれでもOK。暑い外風が当たる場所は避けて乗ればよい。また仮に不快な場所になったとして短時間で他の場所に移動する可能性は高い。しかし学校は席が固定されているので約1時間は同じ所に留まらなければならない。

そもそも小学校の教室に定められた風量以上の換気必要なのか?

コロナ禍の前から現在の教室の換気(40人低学年)は文科省によって

必要換気量 10立方メートル毎時人×40人+20立方メートル毎時人×1人=420立方メートル毎時以上

か、

建築基準法の部屋の容積あたりの規定換気回数以上

が規定されているが、換気回数が0.5回なら当然前者のほうが大きくなるので一教室あたり概ね500m3/時以上の換気がされているはず(運用がただしければ)。

ところが昨日文科省が発表したマニュアルでは・・・

で・・・コロナ渦ではどのくらいの換気が必要か?という回答にマニュアルの34ページには・・・



とあり、換気の徹底とされているが、ここにはまず大前提の機械換気設備のことが一言も無い。最近の学校では空調が当たり前なので先ほど示した換気設備は設置されていると思うがこのマニュアルにはそのようなことは書いてない。

また赤いアンダーラインを入れたとおり、「気候上可能なかぎり」との前置きがあるので昨日のような酷暑日では空調が優先されるべきだと思われる。

さてその窓開け換気と称される根拠が上のページにある。

最近有名なスパコン富岳のシミュレーションによるとあるが、まずこの富岳という文言が必要か?いまやCFD解析は普通のパソコンでも可能である。またシミュレーションでは条件によって結果ががらりと変わる事は、一度シミュレーションを行った事がある人は当たり前のこと。ここでは窓から流速1m/sで一様に入る状態との条件設定だが、この窓が風下側だったらこの結果は全く違う。外風は揺らぎや風向きが一定で無いので、このような窓開けは建築では一般的に「通風」と呼ぶ。この窓開けを「換気」と呼んでしまったなら、今我々が確認申請の度に計算する機械換気による換気量は必要無く、

「換気の計算が無いので確認申請はおりない」と建築主事に言われても

「窓を開けるから問題ありません」

で片付く。

換気とは「特定空間で外気を取り入れ汚れた空気の排出することで空気質を維持することを目的とし、特に住宅では決められた風量を決められた場所から出し入れすること」になる。窓開けでは無風、強風、温度差、窓の開閉状態で換気量が大きく変わるのでこれを常時換気と分けており、現在では機械換気が設置が義務となる。

もし窓を開ける事が社会常識として常時換気と認められれば、折角16年間育んできた換気設備は住宅には必要無くなるだろう。

また更に言えば、恩師である先生曰く

換気の良い空間の定義がされていないのでみんなどんな風に換気すれば良いのか困っています。私は換気すれば必ず風上、風下が生じるわけで、風上に感染者がいれば風下の非感染者は飛沫を浴びることになる感染症対策におけるよい換気方法はまだ決まっていない。

令和2年7月9日赤林先生のコメント

とのことで、全く同意。多人数が集まる空間において感染症対策の換気なんてほぼできないのかもしれないのに、建前だけで窓を開けて空調環境の破壊をするような行為は残念でならない。これを考えると果たして窓を開けて冷えたところと暑くなりやすい席をつくった事による体調不良発生のリスクと、窓を開けないで適正の換気量で過ごしたときのCOVID-19感染リスクとどちらがよいのか・・・になる。

さてもし上のシミュレーションで推奨の窓開けCase2で行った換気量を見ると、先ほどCOVID-19流行前の小学校での推奨換気量の2倍程度の一人当たり30m3/hとなっているが、これが皮肉にも「緑の家」で行っている常時換気量の一人当たり25m3/h以上とほとんど差が無い。もし家庭内でトイレや厨房排気をすると30m3/hになるので同じ換気量であるが、この程度なら小学校に設置する換気量を最大30m3/hに可変できるように更新すればよいだけのことで、窓を開けるという現代建築では非科学的な感覚にたよる必要はない。

今回のCOVID-19では、今までのことを根拠無く覆すような非科学的な行為が至る所で黙認されていると言わざるを得ない事が気持ち悪い。

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コメント

  1. 赤林伸一 より:

    通常学校には機械換気設備は付いていません。エアコンは熱い寒いの問題ですから設置しますが、換気扇は空気の良し悪しで生徒も親も文句を言いませんから新築で常時換気0.5回/hの換気扇が付けば良い方でしょうか。それでも3密を解消するのに窓を開けることになります。これに効果があるかどうかは不明ですが、何か起きたときの保険なんでしょうね。感染者発生して親に文句を言われたら、暑いのを我慢して窓を開けておきましたと答える事が出来ます。研究室のHPに教室のシュミレーション結果を載せてあります。

    http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/Elementary-school_2020.pptx