窓に原則FIXを使わない3つの理由

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「緑の家」では窓にほとんどFIXを使わない。特に2階にFIX窓のご要望があったときには建て主さんに何度か確認する。

近年のエアコンの普及、そして樹脂サッシ枠の熱貫流率が悪い事(枠性能がガラスより悪い)、日射の取り入れ面積拡大のため、また長期気密維持のために巷の住宅の窓にはFIXが使われることが多くなったと聞いている。でも「緑の家」では積極的にFIXを使う提案をしない。何故「緑の家」では使わないのか・・・

FIXとは日本語で「はめ殺し」という物騒な名前である。しかしこの名前は言い得て妙と思う。エアコンが普及する以前は、日本の気候にとって窓が開かないことは通風がとれない致命的な欠点のある窓となるため、あっても半分役立たずの窓として「殺す」という少し怖い名前が付いたのだと想像する。しかしエアコンが普及し、通風がなくとも快適に過ごせることが出来るようになったのに、又「緑の家」は夏期の通風を禁止までしているのに、なぜ積極的にFIXを使わないのか?

理由は次の3点である。

矢印のところは何かわかる?

理由1.窓裏(外部側)が掃除できない。

2階の窓外側の掃除ができない。これは住んでから少しするとイライラさせる原因となる。
私がまだ駆け出しの設計者であったころ、ビルや店舗でかっこいいと思っていたFIX※を住宅で使おうとしたら、先輩から「掃除ができないということで間違いなくクレームになる」と言われた。確かに高気密高断熱住宅の窓は、結露が内側にほとんど起きないため内側のガラスが汚れることはまず無い。子供が素手で触れば汚れるが、結露により埃を吸着して自然とよごれる事がなくなる。そうなると外部の汚れが目立つ。特に埃が舞ったあとの外側ガラスのくすみは、せっかくのクリアーさが命のガラスを台無しにする。しかしこのくすみは雨で落ちる事もあるが問題は生物による汚れ。例えば蜘蛛の巣などに取り付いた汚れは、雨ではまず無理。埃は高圧洗浄機を使って落とせるとの話を聞くが、高圧洗浄機を使ったことのある人はそれが現実的ではないとわかる。高圧洗浄機は圧縮空気で水を飛ばす機構上、細分化された水滴が霧となって遠くまで飛散する。仮にお隣が5m以内にあれば確実にクレームがくる。一方ゴムホースで直接水をかけるのも同様。2階まで水を飛ばせば跳ね返った水は辺り一面に飛び散る。それでも雨降りの日に行えばよいかもしれない。問題なのは蜘蛛の巣。水流程度では落ちる事はない。また乾いた鳥の糞も物理的にこすることが出来なければまず洗い流せない。つまり・・・当初は良いが年数を重ねるとどんどん汚れが蓄積される。

蜘蛛の巣が張られたサッシ。これは水流だけでは取り去ることは難しい。

※FIX程ではないが片引き窓も清掃が難しく、網戸、ガラス戸を外すなどの大がかりとなり敷居はたかい。お勧め窓は内開きかドレーキップ。引き違いは長期気密維持が一番悪いので薦めない。

理由2.外部での日射遮蔽が難しい

電動外部ブラインドで日射遮蔽を完璧に行った「緑の家」
電動外部ブラインドで日射遮蔽を完璧に行った「緑の家」を内部からみる。

1の掃除ができなくてガラスが汚れていても吹き抜けなど高所などにあり、近づいて見ることが出来ない窓は多少の汚れは問題ない。しかし日射遮蔽を2階外部につけようとするとFIXではそれが簡単にはできない。高気密高断熱住宅にとって夏の日射が家に入ることは致命的欠陥になる。ご存じの方も多いが、日射遮蔽を室内側のカーテンだけですませる家において、夏の冷房負荷のほとんどが窓からの日射熱である。シミュレーションでは8割以上になることもある。つまり外部で日射遮蔽をすれば8割の冷房負荷の90%を削減できる。そう家全体の冷房負荷を外部の日射遮蔽をするだけで70%削減できてしまう。夏期のエアコンの電気代が約7割へるということ。外部の日射遮蔽の代表は、簾、タープスクリーン、雨戸でありこの全てが室内側からの設置や操作が必要となる。この時に窓がFIXだと外部からの設置しか考えられず高所となる2階窓はまず難しい。最近では電動で動かせる外部ブラインドがあるが、これが窓価格より高価になるので敷居はたかい。

開けられる窓を計画し簾をかけて日射遮蔽を行った「緑の家」

2階窓の簾のかけ方は以前のブログで↓
https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2020/12/22/post-31229/

理由3.法的な制限と避難性が低い

火災による死因別死者発生状況の推移 出展:総務省のHP

あまり知られていないが、FIX(はめ殺し)の窓は万一の時に脱出することがなかなか難しい。仮にボヤが1階で起こったときに煙は直ぐに2階に上がる。息が苦しくなるので人は窓を開けようとするが、FIXでは無理。ガラスを割れば問題ないが、人の心理としてペアガラスを割る勇気(結構な力)がボヤ程度で起きるか・・・となる。仮にボヤでも火災の死因の2位が一酸化炭素などのガスを吸い込みで気をうしなったり、窒息で亡くなる事を考えると、大事なことはガスを吸わないための排煙と早期避難となり、この2つに関連するのが開けられる窓となる。

次ぎに法的な規制としては、一般的な住宅でも居室床面積に対し1/20以上の開けられる開口面積がないと、無窓の居室となり排煙設備が必要な場合がある。排煙設備に変わる窓として有効な開口面積が床に対し1/50以上あればOKであるが、FIXでは不可だから排煙設備が必要となり、設備は大がかりであり現実的ではない。

80%以上の窓をFIXにしたある「緑の家」。排煙窓として1/50だけ開けられるようにした。ガラスの外部拭き取りは、オーナーさんの手持ちの高所作業車でおこなうとのこと。

以上のような3つの理由でFIX窓を2階に使う場合はお勧めはしていない。但し理由を説明した上で使いたい・・・との考えには賛成する。今着工中の「清五郎の家」でも2階に大きなFIX窓がある。当然外部遮蔽のため建て主さん発想のある部品を特注することになった。そのような理解が得られればFIXはよい選択であるが、特に2階にFIX窓はやはり・・・無難とは言えないだろう。

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コメント

  1. とうちゃん より:

    拙宅でも、所々FIX窓を使っておりますが、ご指摘の通りに虫の巣が出来てしまっております。長ーい箒でとったりしておりますが、想像以上に面倒です。

    そして、もう一つの盲点だったのが、外部のガルバリウム鋼板の波型の凹凸の所にも虫が巣をつくっております。
    日射の強い、東、南、西には作られるなくて、北面だけなんです。
    これも、想定外でした。(涙)

  2. izmd より:

    お返事ありがとうございます。
    これからも更新を楽しみにしております!

  3. izmd より:

    初めてコメント致します。大変勉強になりました。
    生物による汚れは水では落ちない、、、車で散々体験しているのに、考えが及びませんでした。
    最後に書かれている、建て主さん発想の外部遮蔽について、どのような部材を使われるのか教えていただけませんか?

    • Asama より:

      izmd様
       コメントありがとうございます。
      >どのような部材を使われるのか教えていただけませんか?
      特別なことではなく簾をかけられるようにした部品をステンレスを使って特注しております。詳しくは完成時にご案内します。