高性能な家の窓及びガラスには寿命がある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ある家のペアガラス内部での結露とカビ、汚れ。

窓につかうガラスは一般的に半永久かなと思っているはず。確かに単板ガラス(真物一枚ガラス)はほとんど劣化しない。しかし・・・超高断熱高気密住宅に使うペアガラス及びトリプルガラスは劣化し、その寿命は30年から35年と考えている。実際過去には10年くらいでカビが生えたペアガラスがある。

ガラス単体では半永久的な寿命があるはずが、ペア又はトリプルガラスにしたとたんに寿命が30年から35年となる。運がよければ40年、運が悪ければ20年以下となり、ガラス単体のように半永久性ではなくなる。これはガラスの間に入っているガスが抜けることによって大気に置き換わり、内部で結露しカビが発生しトーメイガラス窓としての役目を終えるためである。ガラスの間のガスを封入しているのは有機素材(シールゴムなど)であり、有機素材が故に劣化が少しずつ起こる。ほんのわずかな穴や隙間でもガスは抜け大気に置き換われば、水蒸気もはいり結露することになる。ガラスだけの交換はできるのでガラスに寿命があってもそれは仕方ない。しかし枠を含めたサッシ全体でも劣化はおこる。

「緑の家」の特徴としてAグレードではサッシ簡単交換仕様が2009年から標準となっている。これは以前からお伝えしているとおりサッシ自体の性能を考えると引き違いサッシの寿命が20年から25年と推定されるからである。この寿命の主原因は、気密を確保する気密パッキンの劣化による。気密パッキンはEPDMを使う事が多いが、このゴムの劣化は20年くらい経つと顕著に表われる。この気密パッキンのみ交換すれば良いと思うが、20年後に専用交換部材はなく汎用部材となるため当初の気密性能は保証されないことが多い。一方ドレーキップ、開き窓のような押しつけ型サッシであれば、気密パッキンのレ劣化が顕著になっても、押しつけさえしっかり行われれば30年くらいは気密を保持できる。よって「緑の家」ではできる限りドレーキップ窓を標準とする。FIX窓はシールによって気密維持が出来るのでやはり30年くらいは気密維持として問題ない。

この30年後パッキンのみ交換するのかを冷静に考えると、ガラスも寿命を迎えていることが上から想像できる。しかしサッシ全般の交換は通常外壁を剥がさないとできない構造になっているため、一部だけ外壁を変えることも出来ず大がかりな工事になる。このためサッシ交換を我慢し、気密の衰えたサッシをそのまま使うか、気密パッキンだけ交換するか、気密パッキンとガラスを交換するか迷うことになる。30年後は現在よりさらに高性能なサッシが安価に手に入るだろうから、感情としては全交換したくなる。

この時に外壁を剥がさなくても窓交換できるようにして設計すれば、窓単体での交換が可能になり、気軽に一か所からでも交換をするようになる。

現在の多くの家の作る工程は・・・

基礎

柱・梁など木構造

屋根下地

屋根仕上げ

サッシ取付け

外壁下地

外壁仕上げ

内部下地

となり、なにかを取り替える場合は屋根下地と屋根仕上げの除いてこの逆順で壊すことになる。

例えば柱・梁を交換したい場合は、それ以降に工事した部材を全て外す事が原則となる。つまりサッシを交換したい場合は、外壁を外す必要がある。

これを「緑の家」では・・・

基礎

柱・梁など木構造

屋根下地

屋根仕上げ

外壁下地

外壁仕上げ

内部下地

サッシ取付け・サッシ枠取付け

でも可能な設計にしている。実際の施工は下の写真のとおり・・・

外壁が仕上がっているがサッシの取り付けはまだ行われていない。

外壁は仕上がっているのに窓サッシはこれから取付けるという奇妙な光景になる。多分こんな光景はほとんど人は見たことがないはず。普通はサッシが外壁より先に施工される。

家の長寿命化(60年)を真面目に考えると、開口部の単体交換仕様は欧州と北米では普通である。日本の住宅は30年程度でスクラップアンドビルドだったので従来は無視していた仕様だが、昨今では一考する仕様となったといえる。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. 横澤 謙二 より:

    福島県会津在住の者です 築20年の外壁窯業系サイディングが北側とサッシ周りが痛んできました。外壁材メーカーでも載せていない胴縁クロス工法に驚きました、その発想に家に対する強い理念を感じました。現在は横張りなので張り替えの時に、縦張りした時の横胴縁の通気の弱さを懸念していましたが、嬉しい技術です、こんな設計屋さんが近くあったら思うところです。