建築業界ではガリバー的な業界紙である「日経アーキテクチャア」の今週号に、「戸建ては断熱等級7までを新設」との見出しがおどっている。
国では2025年の省エネ義務化に向けて等級7へのスケジュールが組まれているようだ。等級7とは、「緑の家」でのAグレードと同等、Bグレード以上となる超高断熱性能である。超高断熱住宅を2009年から提供してきた私を含め、多くの超高断熱住宅に従事される関係者はこの方針に拍手をしているはず。
しかしこの断熱等級に引き上げる前に3月までに結論をはっきりさせて頂きたい事がある。それは一年前に辛辣なブログだったこちら。
つまり基礎断熱時の基礎周囲のU値である。
2021年4月から実施されている新たな基礎周囲のU値は1.57w/(mk)※である。これが当面は2021年3月まで使っていた計算値0.19w/(mk)※2でも可能との暫定的な取り決めがもう1年続いている。新たな基礎周囲のU値と以前のU値では8倍も差がでており、これをある「緑の家」のUa値にあてはめると、以前の基礎U値で計算するとUa値は0.25w/(mk)で等級7をクリアーしたのが、新たな基礎U値とすると0.32w/(mk)になり等級7をクリアーできない。そもそも0.07w/(mk)もU値が大幅に悪くなっている。
※一定値の1.57以外にVer17の表3aにより1.60~0.98まで決める事ができる。
※2 基礎外周U値0.19は「緑の家」の場合。
等級7という超高断熱基準を設けるアナウンスをするなら、同時に現在の問題点である基礎断熱時の基礎外周U値の悪くなった説明とその方向を3月まで提示してほしい。
他の細かい事では断熱材を取り変える事で調整できるが、基礎U値は0.07も変わるので大幅な設計仕様の見直し、例えば外壁付加断熱が現在の60mmから100mmにしないと基準をクリアー出来ない事態で困る事になる。
多分大手メーカーには事前に基礎U値がどのようになるかがオフレコでアナウンスされるのであろう。そうでなければ工場で外壁を半完成品として生産する大手プレハブメーカーとしては急な評価変更は製造ラインがとまってしまう。多分ラインを組むには2年前から準備が必要となるはず。私達一般の設計者にも是非途中経過でもよいからこの方向性と何故このようになったか聞かせて頂きたい。これほど大きく同じ部位での熱貫流率が変わることはかつてなかったこと。そして建て主さんが一番困るはず。なぜならここまでちがう熱の逃げ方をするなら、基礎断熱を止めて床断熱にしたいという人もいるだろう。また初期投資を大きくして基礎内外断熱や布基礎にしてスラブ又は土間コン下に断熱材を敷き込む方法もある。
いつも申し上げるが、これが構造関連ならこんな曖昧な事は長く続かない。構造の評価に問題がありそれを放置したことで何か事故がおきれば人が亡くなるからだ。そのため一年以内に整合性をはかり、現場が混乱しないようにするはず。しかし温熱評価は、評価方法(設計・施工も)に多少間違っても人が亡くなる事故はまず無い。だから曖昧の期間が長くてもそのままにしておけるのである。これを考えても構造・耐久>温熱・デザインとなるので、環境系が甘く見られるのである。
それでも国の温熱評価は重要な設計指標である。これが揺らいでいるなら巷の設計者は右往左往してしまうので、等級7を新設するときめたなら、同時に基礎断熱の外周U値の算定方法をどちらかに決めてほしい。下は一年前のそのブログである。