超高断熱の等級7を設ける前に国が決める   構造チェック

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パッシブな暖房で考える伊達の家 4 超高断熱と構造の関係
日頃から住宅の設計で一番大事なことは 「構造」の安全性 と申し上げております。 ここで「緑の家」が超高断熱住宅を...
5年前(2017年)の上のブログを読んで頂ければ今回の記事がよくわかる。

ZEHの普及に伴い、

1.断熱材が厚くなり重い壁、天井
2.窓がトリプルガラスで重い
3.太陽光パネルの設置で屋根が重い

ことが明らかになり従来の建物重量の条件では耐力壁が不足する例がでてきた。そこで国交省は2025年の断熱義務化に伴い、原則木造2階建ての構造審査を行政で行なう方針に決めたらしい。

日経アーキテクチャーの一部写真

一般の建て主さん(ユーザー)には理解出来ないと思うが、現在木造2階建ての耐震性や耐風性の構造適合審査は行政では「行なわれていない」。構造の安全性を確認するのは、担当する「設計者(建築士限定)」に委ねられている。行政で構造の安全性を審査する建物は木造2階建てなら「長期優良住宅」などで認定を申請した建物に限られる。

びっくりしていない建て主さんは大体「長期優良住宅の認定」を依頼している方であり、長期優良住宅の認定を必要無いと考える建て主さんの多くはこのことを知らないはず。「緑の家」のオーナーさんでは知っていても「長期優良住宅」認定をあえて申し込まない人も1/3いらっしゃる。これは、「緑の家」が許容応力度設計による構造計算書を必ずお渡ししているので、メリットが少ない長期優良住宅の認定を必要としない事が理由である。

国交省ではあれだけ省エネ義務化に後ろ向きで、話が持ち上がってから10年目で初めて義務化になった事に対し、構造の安全性の義務化は3年くらいで行なわれることになりそうだ。これは冒頭に申し上げたこと、つまり建物の重量が現況の法律に合わなくなり、危険側になっていることが明らかになったためである。このような時の行政は早い。しかもハウスメーカーには殆ど関係ない通常の木造軸組工法がその対象となっている事も関連あるだろう。

住宅の建築数は今後下がる見込み。近年リーマンショックで一度大きく落ち込んだが、今年はそれ並みに悪くなるかも。

一方実はこれは表向きの理由で有り、ホントのところは「民間確認審査機関」の業務(売り上げ)を減らさないためだとの見方もできる。これは以前の省エネ義務化でも申し上げたが、住宅の着工棟数は年々減少している。民間確認審査機関さんではパイが決まっている市場で且つ当たり前だが企業努力では市場は拡大することは出来ない。しかし民間確認審査機関は行政の天下り先となっておりその再就職先を減らすことはしたくない・・・との思惑が働き、量が少なくなるなら質(単価をあげる)ことをすればよい・・・と考えたのかもしれない。しかし過去の業務実績が生かせる良い就職先でもあるし、構造のチェックは素直に良いことだから今回の事は捻くれた考えはよそう(定期講習は廃止にしてほしい)。

とのことで・・・もし行政で木造2階建の構造のチェックを行なうようになったなら、現在の確認申請料金は値上げになるだろう。これは省エネの確認も同時に行なわれるので、作業量は現在の倍程になる。となると単純に料金は1.5倍程度になるイメージか? 木造2階建て建築の一般的な大きさなら現在の確認申請の手数料(検査料)は1.5万~5万程度(指定機関でかわる)なので、これが2万強~7万強程度になる感じか。

日経アーキテクチャーの一部写真

今回のポイントは、大半の現在の耐震性の基準となっている「耐力壁の壁量チェック」において、基準が1.4倍になるだろうとのこと。実はこれだけに納まることはない。現法では雪国新潟での雪の荷重は考え無い壁量となっている。つまり屋根に雪があるときは地震がこないとの考え。しかし太陽光パネルが積載荷重として追加することになれば、雪国において3ヶ月も積雪が屋根にある地域などは、これも積載荷重として加算する必要があるのではないかということ。特に積雪が2mを超える地域では、仮に雪下ろしがされる住宅であっても2m程度として設計することが推奨されている。これをまともに考えた時に、現在壁量が2倍程度になるのではないか・・・と思われる。その議論はこれからだと思うが、半世紀以上改訂されていないこの壁量について、改訂の良い機会であるため是非まともな判断を願いたい。実は「緑の家」では1998年の事務所設立以来唯一一件を除いて2mを超える積雪地域での設計積雪荷重は2m以上である。これは自負するところである。

知らなかった・・・3週間の受付ストップはつらい。

冒頭で申し上げた必ず耐震性を行政がチェックする「長期優良住宅」であるが、この2月20日に法改正があり、現在審査受付がストップしている。ちょうど申請があったのにこれでは出すことが出来ないが、やむ得ない。

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