ポリエチレンフィルムによる超高気密は夏にこそ本領発揮

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1997年の事務所設立以来全く変わることのないポリエチレンフィルム0.2mmによる超気密施工。

「緑の家」では1997年から26年間、上のポリエチレンフィルム0.2mmで超高気密住宅を設計している。そしてこれは今後も変わらないと強く思う。この理由はこの6月~9月のブログで度々お伝えしているが、久々に心が震えたので何度も載せる意義はある。

人が住んでいない超高気密住宅の湿度管理がこれほど楽だったとは・・・

今年の夏は異常に暑かった。そんな中、旧拙宅となった寺泊自宅は空き家で一夏が過ぎて実感したこと・・・それはポリエチレンフィルムによる高気密施工は、夏期の屋外の高湿な外気が、外皮から入り込む事をシャットアウトする。これはとても凄いことで、換気さえ止めれば外皮を通過して入ってくる湿気はほとんどないので、5時間ほどエアコンを運転することで、RH(相対湿度)60%以下を24時間維持できることがわかったためである。RH(相対湿度)60%なら、カビの増殖はほとんどないので、空き家の管理において大変楽で有る。

ポリエチレンフィルムの効能は冬期の湿気の壁内流入だけを今まで価値ある事と捉えていたし、これは壁内結露防止のため、実際の住まい手の快適性にはあまり関係ないような性能であったが、夏期の室内高湿流入防止は、実際の住まい手に最も関係することで、この実感は大きい。これが今まで感じることが出来なかったのは、人が住んでいると、それに伴う湿気の発生と換気による湿気流入が大きなウエイトを占めていたので気がつかなかったのである。人が住まなくなり換気扇を止めると、その効果は従来の住宅と比較して計り知れないほどの恩恵を与えてくれる。

ここで大事な事はポリエチレンフィルム0.2mmによる防湿であり、これが吹き付けウレタンフォームだけによる気密(防湿)性だったり、可変透湿抵抗のシートやセルロースファイバーでシート省略ならこのように湿度シャットアウトにならないだろう。特に可変型の防湿フィルムは近年多くの超高断熱住宅に使われているが、この可変型の防湿フィルム(調湿シート)が開発されたのが夏期に絶対湿度の少ない地域であり、日本とその環境が異なることに注意が必要である。

そして最も重要なことは、このポリエチレンフィルム0.2mmで31年間24時間冷房(室内温度24~26度を最低2ヶ月連続)を行った壁体内が、全く健全だったことを目視できたということ。しかもそれはGW105mmだけの付加断熱無しの高断熱住宅で、西側の海に面した壁面という、夏型結露に対し最も悪条件での事である。このような実績があるので今後も安心してこのポリエチレンフィルム0.2mmを気密防湿層として使い続ける予定である。

ちなみに壁面にポリエチレンフィルム0.2mmを気密防湿層にしていない普通の住宅では、エアコンを止めると数時間後には高湿になることを確認しており、その違いは歴然である。これがポリエチレンフィルム0.2mmだけの理由かそれとも一般住宅は気密性がないことによる隙間からの空気流入で、湿気が入ってくるのかはわからないが、ポリエチレンフィルム0.2mmでの超高気密施工では夏期こそその恩恵を受けると言えるだろう。

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コメント

  1. Asama より:

    TOMO様

     情報ありがとうございます。

    早速「ボード気密工法」でググると出てきますが、いずれもはっきりと「このようにする」とかかかれていないのでやっぱりわかりません。

    >一応それでC値は出てるようですから問題ないと素人ですが個人的には思ってますが

    問題ないのは気密性能だけであって、防湿の事では冬期の内部結露の理屈がどれもはっきり明言されておりません。・・・ということで、「takahashi様」もこんがらがって私に質問されたその意味が初めてわかりました。

    その返答で言ってもやっぱりソース(具体的なもの)があれば返答はできますが、各社違うことを言っているググり検索だけでは返答のしようがありません。

    でもなんでそんな合板で気密を取ろうとしたのか・・・シートの方がよほど簡単なのに・・・と思っております。

    • WATA より:

      横から失礼します。
      ボード気密についてはこちらに概要がありました。
      https://www.glass-fiber.net/pdf/gijutu_collaborate_muroran_h28.pdf
      ※P.3下~

      P.4図2の構成で同1段落目の理屈は正直不安ですが、付加断熱で面材を十分に保温できれば、地域によっては室内側防湿シートを省略できるんでしょうか。
      気密層が躯体の動きに追随できるか不安ですが、制振テープを気密パッキン代わりにできれば面白いと思います。

      • Asama より:

        WATA様
         わざわざソース貼り付けて頂きありがとうございます。

        >P.4図2の構成で同1段落目の理屈は正直不安ですが、付加断熱で面材を十分に保温できれば、地域によっては室内側防湿シートを省略できるんでしょうか。

        何故そんなに防湿シートを目の敵にしているかがわかりませんが(もちろんWATAさんではなく)、この図2では付加断熱材は見当たりませんから、面材の透湿抵抗が低い建材ボードが前提なのでしょう。それでもしかし・・・気密層と防湿層を別に考えることは、一般の施工者にはとても敷居が高く、シートの防湿気密層を普通に施工できない人が出来るとは到底思えません。内部結露計算やそれらのことを自分で行った人はまだわかりますが、そのような数値で計算したことがない人が、どのように飽和水蒸気量を把握できるのか・・・このところは全く腑に落ちません。何しろ現場であらゆる納まりに対応した家を作るのは、大工さんです。大工さんに気密層と防湿ラインの違いとその応用をさせるコト自体間違ったアプローチだと思います。なぜならこのマニュアルでも天井は面材の気密はなさそうです。そもそも人が乗って施工するほどの強度を建材系の透湿抵抗の低い面材で確保出来るとは思えません(MDFなら可能性があるが)。

        とのことで、やっぱり防湿層と気密層が同じほうが考え方が単純でわかりやすい=間違えにくいと思います。GWを使う時にはここに「防風層」も必要になり、それだったら袋入りのGWが使えないかとの考えになり、さらに面材耐力壁を使うことが多くなったので面材で気密をとろう・・・とのフローとなったのでしょうが、板状の外貼り断熱材だけでその全て網羅するので、一番単純な方法はプラスチック製板状断熱材で防風、防湿、気密と言うことは明らかなのですが、何らかの理由でそれはしたくない・・・のかもしれません。

        多分これで合板で気密を取るとの話題が終わると思います。情報を頂いた方には心よりお礼申し上げます。又一つ勉強になりました。

  2. takahashi より:

    ご質問です。
    只今自宅の設計をしているものです。
    場所は東北の日本海沿岸部です。
    断熱の仕様については、GW充填t105+タイガーEXハイパーt9.5+ネオマフォームt100とし、
    構造用面材で気密を取ろうと考えております。室内側には防湿シート0.2を施工しますが、記事を見ると防湿シートを気密層とした方が、夏場の湿気対策になるとのことでしたので、どう考えればよいのかわからなくなりました。
    気密層は構造用面材でも懸念無いでしょうか?

    • Asama より:

      takahashi様

       コメントありがとうございます。

      >気密層は構造用面材でも懸念無いでしょうか?

      問題あります。

      誤解しているようですのではっきりと申し上げると・・・気密と防湿は実質同じ事です。簡単に想像出来るようにポテトチップスの袋を思い描いてください。ポテトチップスのようなお菓子袋はポリエチレンかポリプロピレンフィルムが基材となってアルミのコーティング(蒸着)が行われております。これはお菓子が外気に触れる事を防ぐための素材です。この外気とは、主に酸素と水蒸気(湿気)のことです。その袋に表面積の1/2000(直径3mm)となる穴をあけると数日でお菓子は湿気ます。袋はほぼ湿気を通さない素材ですが(つまり防湿層)、空気が通過すれば空気の一部である水蒸気も通過するので、穴一つないあのような密閉状態(つまり気密層)になっているのです。素地が湿気を通さなくても、わずかΦ3mmの穴で空気と同様に湿気は入り込みます。よって気密層は防湿層と同義です。
      防湿フィルム=気密層でないといけない・・・それを踏まえて整理するとよいと思います。

      • takahashi より:

        ありがとうございます。
        ポテトチップスの袋の理屈はなんとなくわかりました。
        合板で気密をとる工法があるかと思いますが、それは何なのでしょうか?
        気密は合板でとるけど、防湿層でも壁内に湿気が移動しないように気密をとるという事でしょうか?

        • Asama より:

          >合板で気密をとる工法があるかと思いますが、それは何なのでしょうか?

          私も残念ながらわかりません。少なくとも35年間高気密の家を設計していますが、合板を主材料として気密を取ることは特殊な条件を除いて実質不可能です。

          >気密は合板でとるけど、防湿層でも壁内に湿気が移動しないように気密をとるという事でしょうか?

          そのソースを教えて頂ければわかるかもしれません。

          • tomo より:

            横から失礼します
            おそらく新住協のボード気密工法のことだと思います
            一応それでC値は出てるようですから問題ないと素人ですが個人的には思ってますが

  3. Miyazaki より:

    気密がしっかりしている家なら、換気を止めてエアコンで除湿すれば、エアコンを止めても湿度が低い状態を長時間維持できる。
    空気の出入りがないのだから、当然そうなると思いました。
    そして、理屈ではそうは言えても、それを実行できる住宅が少ないのが現実なんだなと思いました。

    我が家は築25年ですが、袋詰めグラスウール50mmだけで、気密シートはないんですよね。
    だから、31年前にポリエチレンフィルムで気密を取った、浅間さんの未来を見通す考え方はすごいなと思いました。

    • Asama より:

      Miyazaki様

       >当然そうなると思いました。

      そのように想像していらっしゃた事に感心しております。丁度シックハウスがおこったころ住宅設計を学んでいたため、換気を止めるなんてことを考えた事がありませんでしたから、その考えは欠落しておりました。