高耐力の水平合板貼りと垂木の接合

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現在刈羽村に建設中の井岡の家に、長岡市で建築中の今朝白町の家での検査を行なってからそのままの足で現地に伺った。事務所からの方位はほぼ同じだが、移動距離は倍ほどである。

今回伺ったのは、電気引き込み工事の打ち合わせと先回確認が全部出来なかった小屋裏の構造確認となる。

基準風速36m/s以上の強風地域、耐風等級2では屋根が浮き上がらないように屋根中央でもひねり金物等高耐力接合が必要な場合もある。青字が引張り力の流れとなる。

屋根の仕上げが瓦葺きの頃は、瓦が重いので強風で屋根が持ち上がる力を相殺出来ていたが、ガルバニューム葺きをはじめてとする軽い屋根は、強風時に屋根が持ち上げられる力が働いたときに、この軽量さが徒となり屋根が吹き飛ぶこともある。実際台風の直撃を受けた地域の報道でそのような映像をみる。

その時には上の写真のような垂木と母屋の接続が甘いことが原因なので、垂木から上が浮き飛べば、母屋や母屋束はのこる。このあたりは力の流れを考えればよくわかる。

通常の切妻屋根なら最大風圧係数は屋根中央面で-1.0となり、この値を満足するように接合すれば、家の中央屋根部分はこわれない。仮に一般的なけらば部分を考えると・・・けらばの出が900mmで基準風速36m/sの地域なら、上図のように②から③へは最大で2.27KN/m2がけらば部分にかかる。ここから屋根の固定荷重0.3KN/m2をひいてその方向の面積(6.5m2なら)を乗じると、約13KN(1300Kg)の引き抜き力を負担する金物を取付けることになる。もしN90一本の釘打ちだけならけらばの垂木と母屋の接合で68本必要である。実際は上写真のようにひねり金物ST15やタルキックなど使う。ひねり金物なら8本ですむし、タルキックなら10本でOK。次に③から④への流れ(垂木から母屋に伝わる力)である母屋と束の接合金物を選ぶ。「緑の家」が使う接合金物はHSP10(HD10)という金物で、許容引張力が10.4KN/本あるので2本あればで伝わる事になるが、実際は8本(母屋ピッチ910の時)使う事になる。

接合金物の短期許容引張力

特に片流れ屋根の上部軒の出は、風圧係数が上の1.0が1.3から1.8程度と最も大きくなるので注意が必要である。

次の話題は床である。
井岡の家では床でつくる水平力を過去最大耐力となるように設計している。これは2階床に対し吹き抜けが大きくなるので、その周囲の床を強くしないと、地震時に予想通り応力伝達とならず、家が損傷を受け壊れるためである。

グレー本 3.5の「面材張り床水平構面の詳細設計法」による高倍率の床を設定。

今回は2階の床は3種類の面材張り水平構面で設計されている。そのチェックを行なった。

N75を@75と通常の2倍の釘量で固定する。
上写真で縁距離が足りなかったので増し打ちを施した。

このような所は、設計者自身が構造計算をする立場にないと、現場でのチェックと指示を見逃すことになる可能性が高い。私でも図面を確認しながら思い出した次第である。このように構造計算を行なっても自身で図面に明記していなければ気づかない場合もあるだろうから、意匠設計と構造設計が分離した(設計者が構造計算しない)システムではミスは起こる可能性は高い。もし意匠設計と構造計算する者を分離するなら、設計者(施工者を含む)と工事監理者も完全に分離した方が逆によいだろう。

さて、春の施工は過乾燥になるので土台木口の干割れも数カ所あったが、いずれも引き抜き金物と基礎が直結しているので特に問題はない。ただし昔のほぞ+接合金物だと注意がひつようである。

木口に干割れを起こしている土台端部。面材耐力壁と直結するホールダウン金物であれば特に問題は無い。

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