構造最優先が「平等」と考える理由3・・・今回の液状化

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今回の地震で改めて「液状化」の問題が新潟市を中心に起こっている。何度かお伝えした液状化対策であるが、やはり新築時に行わないととても大きなリスクを常に抱えていることになる。尚、何度もお断りするが、個人の価値観が住宅の敷地の優先順を決定するので、液状化しやすい土地を選ぶこともあって良い。これは土砂災害特別警戒区域等と違い生命の危機に直結することが低いためである。今回の地震でもわかるとおり上物をしっかり造っていれば、液状化での多くの被害は家が傾くことで全壊はするが、倒壊には至らないことがほとんどであるため、人命に関わることは少なく最低限度の安全性を担保できるからである。

最初に液状化について法的にはどのような責任体系になっているかであるが、現法では設計者が一義的に液状化対策をしなければならない。しかし通常の配慮により対策していた場合に起こった液状化による不具合の責任は問われないことになっている。下にその一部の説明が明確な日本建築学会の部会HP(住まいづくり支援建築会議)を紹介する。ソースはこちら

日本建築学会に設置された住まいづくり支援建築会議情報事業部会から一部を抜粋。

ここで重要な事は明確に・・・

責任の所在は設計者と明言していることである。設計者とはだれか・・・

この設計者とは確認申請に記載される「設計者」のことであり、その名前は個人名となる。決して法人名にはならない。つまり液状化対策の責任はまず第一に個人となり、その状況に応じてその設計事務所の管理建築士も責任者となる。

さて誤解がないようにもう一度復習すると、通常工務店さんだけで家造りをしても、法的な確認申請済証には設計者の記入欄が有り、そこに記載された設計者がその設計の責務を負うのであり、間取りの打ち合わせをした自身の担当設計者でない場合があることに注意が必要である。注意しても確認申請を出す頃には、そんな事気にもせずに通過して家造りは進む事がほとんどであるが、法的に設計者は確認申請書に記さされた「個人名」の人になる。当然道義的にもその設計事務所でその責を追うことがほとんどだが、私が「構造最優先」と言っているのはこのような背景もあるからである。つまり自身の担当設計者が「法的な設計者でない」場合、その担当設計者が仮におかしな設計をおこなってそれが原因で将来不具合になった場合、その担当設計者がその事務所を既に辞めていれば、その設計者は法的な責任を問われることはないので、構造責任の甘い感覚で設計を行ってしまう場合がある。だからこそ安全を担保する構造よりウケがよい意匠や設備につい力をいれてしまう。そこを戒めるためにも設計者の矜持として「構造が最優先」となる。当然法的な設計者は辞めても責任は及び、また設計事務所には管理建築士がいるので、事務所として責任は存在するが、当事者がいなくなることで事実の証明が難しくなる。

建物契約時または設計契約時には必ず説明義務がある重要事項説明に記載される「法的な設計者氏名」

最近もてはやされる言葉がある。それは2000年前のローマの建築家ウィトルウィウスの言葉(日本語訳)で、「強無くして用無し、用無くして美無し、美無くして建築ではない」であるが、これも間違った解釈をしてはならない。これは第一に安全であり、次に機能で当然美しさも必要なのが建築である。しかし「強、用、美無くして建築ではない」と3つ同等に語られておらず、優先順位がつけられているとして解釈する。

さて冒頭に戻るが、今回の地震でもわかるとおり上物をしっかり造っていれば、液状化での多くの被害は家が傾くことで全損(全壊)はするが、倒壊(家がつぶれること)には至らないことがほとんどであるため、人命に関わることは少なく最低限度の安全性を担保できる。しかし14/1000以上傾いてしまった場合(住宅寸法7mであれば10cmの不同沈下)で建物自体に変形もあれば、近年の性能が重視された家(高断熱高気密)としては大変厳しい。多分一度一度解体して立て直すか・・・ほとんどの人が他の土地に移り住むことになる。同じ土地に建てたいと思う人は・・・ほとんど聞いたことがない。つまり土地の価値も暴落する可能性があり、資産価値として下がってしまう。そのリスクを折り込み土地を選ぶと後悔が少ない。

では「オーブルデザインさんが土地を斡旋して!」と感じる人がいると思うが、住まいの土地選びはその人が全身全霊を使っての価値基準でえらんでいるので、私にはその価値基準を全て理解できるほど人生経験が多くなく、また斡旋料などのリベートにも目が曇るので建築的にアドバイスはするが、価値にまでに踏み込むことはできないので斡旋はしない。

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