築130年のotomo vie cent リノベ その34 移り変わる設備

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最近の2つの設計事例で薪ストーブを設置する建物がある。薪ストーブはこのotomo vie centでも日常的に使用しており、薪は乾いた廃材を使用しているが、それでも点けはじめは多くの煙が立ち上る。

薪ストーブ点けはじめの煙は避けられない。

下降気流があるときには煙は上に拡散されず、下へ向かって漂う。このとき近隣さんが近いとクレームになる。決していつも煙は上だけでなく下へも向かうことを意識しないと折角設置した薪ストーブが使用出来なくなり宝の持ち腐れとなる。

下降気流で下へ溜まる煙。匂いもこの点けはじめは濃く、この匂いが好きで無いと辛いかも。

結局薪ストーブ設置できる条件は次を満たすことで、

1.近隣が離れていること(煙突から40m以上)。
2.近隣で薪ストーブを複数使用している環境。

の2つであり、40m離れてなくても常に風下で煙が漂わなければ問題ないときもあるが、よほど田舎でない限り難しいと思っていたほうがよい。

熾火がしっかりできればほとんど煙は見えなくなり、匂いもほとんどなくなる。
しかし再び薪を追加したときには若干匂いと煙は出る。

さて本題であるが、

otomo vie centで随分前(70年くらい)にリフォームをしたときに設置されている柱の取り変えを現在私が行っている。

130年に建てられた時には間違いなく平屋だったはずが、50~70年くらい前に現在で言うロフトを設ける改良がされ、その時にこの柱が加工された形跡がある。根拠として柱も鴨居も相当燻されて真っ黒の色になっている。囲炉裏を日常使っていた時代から考えると戦後直ぐではないかと考えられる。

その柱はそれを抜いても梁が落ちてくるような構造では無いが、2階柱の下柱もかねているのでやはり新規柱でやり替えたほうが構造的に安心できるので、まずは取り替える柱の隣に仮設の柱をたてジャッキで梁を少しだけ持ち上げる。

既に取り去った時の状態の写真。動かしてしまったがこの丸い石の上に柱がのっていた。

すると取り替える柱にはほとんど鉛直荷重はかからないので、簡単に外せる。その柱は今でいうところの面皮付きであり、それに沿うように鴨居が光付けされている。

3本溝の鴨居。面付きの3.5寸柱に取り付くために相当無理に光付けが行われている。
裏は荒い加工に見えるが、表面はしっかり綺麗にみえていた。

この取りかえる柱には電話線が複数取り付いていて、それはいわゆるアナログの電話配線とTV配線である。最近は家電(いえでん)を使わない家庭が多くを占めるようになったが、つい5年前までは「緑の家」でもアナログの電話線やジャックが標準で設置されていた(現在はご要望時のみ)。

またTVの同軸ケーブルも同様で、最近はTVの同軸ケーブルが一本だけとなっているご家庭が多い。つまり主のTVは1台だけということであるが、このotomo vie centの同軸ケーブルは至ることにまで配線されており、各部屋に一台のTVが常識のころはこんな感じだったな考えさせられる。娯楽がTV、通信は固定電話しかなかったと言ってもよい時代なのが昭和なのである。

思い返すと26年くらい前、マルチメディアコンセント※を設置してほしいとのご要望が結構有り、そのたびに、止めるように話をしていたことを思い出す。当時はISDNの時代でようやくADSLに切り替わる頃であり、その進化の早さからマルチメディアコンセントは10年以内に使えなくなると言っていたが、光ケーブル全盛でやはりそのとおりになった。そのため今思うと説得してよかったと思っている。
※有線LAN(当時100BASEーT)とアナログ電話線と電源が同じBOXに納まっているコンセント。直ぐに1000BASE-Tになると思い薦めなかった。

となると今度無くなるのは多分同軸ケーブルだと思っている。とても重宝されたこのケーブルであるが、線が太く取り回しとジャックが小さく出来ないので10年以内に使われなくなるだろうと考えている。当然「緑の家」では標準で一箇所しか設けていない。では近い将来どうなるか・・・。有線LANは残るとおもうが、ほとんどが無線LANや携帯電波になるので建物の配線が少なくなる。地上波TVは、多くの人がスマホのアプリで見るようになるため(大きなモニターに無線接続)、配線の必要性がもうないと思う。それでも電源線だけは残るが、それも無接触充電が普及しコンセントは家電のみで良い。つまりコンセントさえしっかり計画しておけば将来困ることはない(30年)と思うし有線LANも特殊な用途以外必要なくなるであろう。

そんな事を考えながらotomo vie centの柱を取り外しており、何時の時代でも設備類は最小限度且つ取り換えがしやすい配慮が必要だと感じる。その点床下配線や配管はホントに優れている。

鉄の棒を差し込み地盤面水位をはかると概ね380mm下に水が溜まっていることがわかった。

古い家のリノベはハプニングの連続であり今回もこの柱を支えていた束石を動かすと、直径80mmくらいの深い穴がまっすぐ下に延びている。最初はモグラ穴だとおもって木の棒を突っ込むと、「ボリュリュ」と水があふれ出る音をたてる。古井戸を埋めた名残かと思って鉄の棒を突き立てると、深さ1.5mで堅い地面にぶつかる。水の水位は驚くことに土表面から約380mmと大変浅い(水深1.1mあることになる)。こんな近くまで水がある土地柄ということがわかり、この建物かび臭さがの意味が理解できた。一方砂地では無いので液状化はないとおもわれるが、この穴は何のために空いていて、柱石の下にあったのだろうか?これには適当な理由が見当たらない。想像するにこの家を建てる時につかった遣り方杭がそのまま石の下に残り、木だけ腐って穴があいたとの想像ができる。確かめたいが・・・かといってこの周囲を掘って確認するつもりも無く、意味は無いが腐りにくいアイアンウッドの木の棒を差し込んだままとりあえず埋めることにした。130年以上前の杭の穴・・・その頃の時代の香りがカビ臭に混じる。

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