高気密高断熱住宅(拙宅)の31年目の樹脂サッシの取り替え その3 気密シートで全く問題なし

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写真左手は雨漏れがあった壁内で右側窓下は雨漏れがなかった壁内。

築32年の高断熱高気密住宅を解体して得た結論は・・・

「一般的なポリエチレンフィルム0.2mmによる気密シートもタイベック等の透湿防風防水シートも正しく使えば、冬型、夏型内部結露も特に問題ない」

ということ。特に夏型結露に対し正しく設計・施工していれば海岸部での西日と雨漏れがあった拙宅ような悪環境でも壁内が腐ったりカビたりすることはない。

32年間頑張ったタイベック。防蟻防腐材が染みこんでるが破れはない。

読者さんならご存じだと思うが、過去26年間の「緑の家」ではここで示している拙宅ようなGWだけによる充填断熱は過去一度も行われていない。

「緑の家」での1999年から2008年までの9年間は、高性能フォノールフォーム(所謂ネオマフォーム等)による外貼り断熱である。その後2008年から2015年まではその外断熱にGWを内側に付加した外貼り付加断熱と、GW120mmの充填断熱に120mm又は60mmの高性能フォノールフォーム(所謂ネオマフォーム等)を外貼りしている超高断熱高気密住宅であることをあらかじめお伝えしておく。

さて拙宅のGWだけの断熱施工からみると、「緑の家」の家の壁仕様は理論的には冬型・夏型両壁内結露の危険性は安全側になっている。つまり最も危険側な設計施工である拙宅の壁構成が特に問題ないことは、多少建設地条件が変わっても冒頭に申し上げた結論に変わりない。あまり知られていないが、拙宅が建築されている寺泊町(現長岡市)は、毎年冬は氷点下5度以下の強風が数日間西壁に吹きつけることは必ずあるし、夏は日本海側に接する都市で唯一40度を超える気温を記録するほど暑い。しかも海の真ん前であるため、年中湿気も多い。また室内は住人(私と家族)が冬は24度以上を好み、夏は25度以下を好むので24時間冷暖房を家中で28年間行なってきた。これほど壁内結露発生の悪条件が揃っているにも関わらず、壁内は健全。特に壁構成が最もリーズナブルであるGW、ポリエチレンフィルム、タイベック(一般品)であり、この31年間経た壁の実態が確認された今、私が35年前に高断熱高気密住宅で目指したことが正しかったことを実証できたと思っている。その35年前に思ったことは、

「多くの人が性能の高い家(本当に暖かい住まい等)を手に入れやすいような設計を行うこと・・・つまりリーズナブルに高断熱高気密住宅を手に入れる事ができるようにしたい・・・」

である。このため32年前の拙宅は全てを切り落として極シンプルに設計されている。延べ床24坪の小さな家はワンルームで造られ、コストを減らすため当時では禁じ手だったコストダウンのやり方である扉はトイレと浴室のみで間仕切り壁はトイレ以外無し。何故禁じ手なのかは、扉や壁がないと仕切ることが出来ないので暖房や冷房が出来ない家とされていたから。そこまでコストカットしても高断熱高気密は手を抜かず、当時大変高価だった樹脂サッシで窓を構成し気密工事も0.9cm2/m2程度を実現した。その一方当時99%の住宅で使われていたビニールクロスは大嫌いで一切使わず素材感を大事にするコストの高いシナベニア全面貼り及び無垢材の無塗装化だけは譲らなかった(無塗装はコストダウンもかねていた)。これが今の「緑の家」の原点になって32年後も標準仕様となっている。

外壁をはがし通気胴縁を撤去
タイベックを外す。意外としっかりしている。
雨漏れのない間柱部分は綺麗でしっかりしている。防腐防蟻剤の垂れたタイベック。

さて壁内部は健全だが、とても綺麗とは言えない・・・というより汚い。特に通気層内はカビだらけ。こんなところの空気は汚いし、壁内のGWは汚れがある。黒いところはカビのように見えるが多くが大気中のPM物質とのこと。このことは以前のこのブログ取り上げた論文にある。また虫も少し混じるが、機能上は問題ないので再び使うつもり。この点はGWの最大魅力。

窓交換のために取り外した高密GW16kg。綺麗なGWと汚れが目立つGWが混在。
雨漏れがなく気密の完全維持された部分は新品のように綺麗。
黒ずんでいるところは大気中のPM物質とのこと。
たまに虫なども干からびてしんでいる。

GWを再利用することに「えっ」と思われる方もいるだろうが、室内と空気を完全に遮断する気密シート(防湿シート)のため、空気だけでなく水蒸気や匂い物質もシャットアウトするので、この気密シートの先が多少汚れていても気にならない。そもそもGWを始め、セルロースファイバーは綺麗な物質ではないと考えている。GWは繊維がチクチクする上に、撥水剤、粘着剤が大量に塗布されているし、セルロースファイバーは原料自体が綺麗とは言えない古紙の粉砕物だし、そこに大量のホウ酸が塗布されているから、これが衛生的であると判断し室内に持ち込む事はない。

とどのつまり壁内の空気(気密層より外側)は汚くても当たり前。との前提で造られている。だから壁内の水蒸気の移動ができる全熱交換紙膜のような調湿シートは、匂いまで一緒に室内に持ち込むことが否定できない。このため現時点で調湿シートを積極的に使用することはない。普通の気密シートで必要且つ十分だと判断し今後も積極的に使う考えはないと申し上げている。やっぱり気密シート外の壁内は汚いのである。

そこで高断熱高気密住宅で大事なことは、どこまでを室内空気とするか?であり、どこから気密シートで汚い空気と綺麗な室内空気との結界をつくるかである。その4では気密シートの冬型結露と夏型結露、ブチルテープなどについてに軽く触れたい。

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