一方では問題ないので評価は簡単ではない

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25年経てもほとんど劣化のない透湿防水シート。

当事務所の説明用に作られたモックアップに貼られた透湿防水シートのアウトール。この地震で事務所の本棚が3つ倒れ壊れた時に巻き込まれたのを機に、処分することになった。

事務所設立初期の1999年に高断熱壁の構造を示すために自身で作った。かれこれ25年経ている三菱ケミカル製の「アウトール」。当時は写真にあるとおり防風の要素が多く占めていたのでこのように「防風透湿シート」とある。この後JIS規格で透湿防水シートと統一された。つまりそれ以前のシートとわかる。防風はGW(グラスウールやロックウール、セルロースファイバー、羊毛)にとってとっても大事な機能だけれど、そのことを名称から外してしまったのは残念である。

さて今日の本題は、25年も事務所の明るい日が当たるところにおいてあったこのシートが何か劣化していたかというと、確かに引き裂き性は若干落ちている感じであるが、巷に見られるような著しい劣化は皆無である。当然本来壁内で施工されている状況より紫外線を大量に浴びている暴露状況。ここから考えるにこのアウトールの酷い劣化があるということなら

1.熱的劣化(酸素劣化)

2.水分劣化(湿気の多い状況での生物による)

3.化学的劣化(主に薬剤劣化)

が考えられる。1の熱劣化については、本来通気層がしっかり機能していれば例え真西側でも一般的にあり得ない高温(過去の論文などから55度を超える状況)になることはない。

こちらは通気層を取らないでおそらく高温にさらされた外壁の直下に貼った透湿防水シートの19年経た写真である。

2層構造のシートでないようだが基材が劣化している。一方この下の写真も温度が上がる部分で相当年数つかったシートであるが・・・

本来の使い方から外れ高温になるところで使用したので、2層構造のシートの一層目が破綻している。

2層構造の一層目が劣化して本来の機能を満たしていないようだ。このように正しい条件で無いと熱劣化は比較的早く起こる。

2の水分劣化では、そもそも水分に触れる事を前提に設計しているのでこの点はぬかりないはず。となると3の薬剤劣化が考えられる。化学的劣化では有名な「防腐防蟻剤の界面活性剤」による防水機能劣化があるが、それによって基材までボロボロになることがあるか?もし木自体の成分が湿気により溶け出してその成分で劣化も考える事ができる。一方ブチル系防水テープとの相性はよくブチル系の成分で劣化することはないのはこのモックアップでも確認できる。

さらにブチルテープと木の相性はよい。25年経ったときには木に密着して、簡単にはとれないぐらいになる。手切れができるブチルテープはこの頃より販売され始めたが、その繊維が縦方向にもあるようで、縦にも簡単に引き裂けるようになっていた。一方アウトールの方は簡単には破れない。正常な透湿防水シートに安心している。

3は薬剤劣化が現在最も知られている劣化である。私もこの件で自邸など30年経た透湿防水シートで確認しているがほとんどの場合、透湿防水シートの防水性の要は「撥水剤」である。私も誤解していたが、透湿防水シートは液状の水は通さないで気相の水は通すような基材物理的な穴の大きさで確保しているのでは無く、液相の水の界面張力で大きなクラスターとなり、それを撥水剤の効力で通しにくくすることが主となることを最近理解できた。この界面張力を弱めるのが界面活性剤であり、これらはあらゆる水溶性、油性の防腐防蟻剤に添加されこのため湿気は通すが水は通さないシートの根本的な解決方法は難しいとされている。

劣化と言ってもどれに該当するかが大事であるため慎重に見極めなければならない。

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