昨日otomo vie centで桐ダンスを洗っていた。全部で2竿となり、裏書から古いほうは70年以上、新しいほうでも35年ほどと推測している。
古いほうの桐のタンスはここから40㎞も離れた加茂市(加茂町)でつくられていた。一方新しいほうは長岡市である。
古い桐たんすも新しめの桐たんすでも箱を作る釘は「竹釘」である。この辺りは柔らかい桐との相性で金属では固すぎなのだろう。
古い桐ダンスはキクイムシ(多分ヒラタキクイムシ)で箱の上部のみボロボロである。なぜ上部に加害が集中しているか不明だが、キクイムシは広葉樹を主として好んで食べる。現在怖がられているアメリカカンザイシロアリよりはるか前から木の害虫として嫌われていたが、加害がゆっくりで柱などの針葉樹はほとんど加害がないので家の恐怖とまではいかなかったのだろう。アメリカカンザイシロアリも同じようなゆっくり加害なので、家丸ごと燻蒸処理※より部分駆除として考えるほうが現実的であろう。※家丸ごと燻蒸処理したらご近所さんにアメリカカンザイシロアリがいることを証明してしまい、評判になる可能性もある。よって野中の一軒家以外不可能。
一方新しめの桐ダンスは薬剤処理されているかわからないが同じところに置かれていてもキクイムシの加害がない。
しかし・・・
新しいほうの桐ダンスには背板と底板に桐の突板合板が使われている。その合板だけにカビ(だと思う)が生えてしまっている。
底板は広い面が必要なので、合板が普及した50年以上前から無垢のタンスでも当たり前に使われていた。その合板からカビが発生するのである。無垢の桐材ではカビの主だった発生がないから不思議である。合板の接着剤を餌に生えるのか・・・?
2~3時間かけてまずは雨水(中水)で目いっぱい水をかけ流し、ブラシでこする。その後仕上げに水道水で洗う。昨日は薄曇りの青空で、風もあったのでこのようなものを洗うに絶好の日である。午後には乾くので一度アルコールで殺菌して再び乾かし、今度は空調された離れに置く。後ほど防カビ剤を合板部分だけに塗布して終了となる。今回は箪笥という丸ごと洗えるものだったから再び使えるが、これが壁内や階間であればもう洗えず、その建物が人から嫌われることで寿命(建て替え)となる。
自然素材の木は室内で保管されていても適時メンテナンスをしなければ10年くらいでカビが生えたりする。都会などの乾燥地や市街地の丘など土地自体が乾いていればカビが生えにくいと思うが、郊外や平場、湿地などはカビが最も嫌らわれる。
さてメンテナンスといえば・・・
先日のことを誤解をされないようにもう少し丁寧に説明する。
前回では栃木県のある美術館で築24年で屋根の上に設置された日差しをやわらげ、外観に独特の意匠性を持たせていた杉の格子がダメになって困っているとの報道があった。一方同じ設計者による長岡市のアオーレでは築12年で露地部分の鉄骨(大きな屋根の構造部材)で錆がひどくなってきたので、全塗装を行うとの報道がある。木ではないがスチールも露地で使えば10年~15年で塗装など塗り直しは当然となる。先回の美術館は意匠部材の格子でありこちらが腐っても構造的影響はないが、アオーレの場合は主要構造材の鉄(スチール)である。
今後30年間を見通し、給排水や空調、電気関係など設備全般について、外部委託して策定する。屋根や壁といった建築部分の修繕計画は、市の担当課で別に検討する。 長期計画とは別に、24年度は大屋根の鉄骨の塗装に3年計画で取りかかる。雨水がたまる接合部などでさびが目立ち、放置すると鉄骨が薄くなる恐れがあるという。鉄骨の塗り直しは初めてとなり、24年度は設計に充て、25、26年度に進める。
新潟日報の記事より
このように意匠性の高い建築物はメンテナンスが重要となる。木も露地で使う木橋やスチールも橋などで普通に露地でつかわれる。どちらもメンテナンスを頻繁に行うことが条件であり、このことは前出の栃木県の美術館もわかっていたはずだがなぜ積極的にメンテナンスしなかったのか不思議である。ちょっと厳しく申し上げると、公共建築であるこの美術館は、仮に設計が民間の企業でも確認申請や市の予算の承認を得るときに、必ず町または県の建築の専門家(建築主事さん等)の目を通ることになるので、木が露地で使われれば10年で腐ることは容易に想像できたはず(想像できなければ専門家ではない)。なぜ計画段階でその指摘を行わなかったのか・・・想像だがやはり自身の腹を痛めて作る自宅とは違い、税金でメンテナンスするから何とも思わない感覚だったのだろう。よって一方的にその建物計画した設計者が未熟で木が10年で腐ることを知らなかったとしても(知っていたなら伝えていたはず)非難することはできないと私は思う。私なら露地で木を使う場合、ウッドデッキに限るしその際の木の材種はアイアンウッドのみと20年前から決めている。