移転先の事務所はやはり超高断熱仕様になる。上は延床面積約50m2のコンパクトな空間を囲うのに使われる異常な量の断熱材264枚(内14枚は別)である。
トラック一杯に詰め込まれた断熱材は今回はアキレスのQ1ボード。もう15年以上前に発売された使いこなれたウレタン系断熱材でλ⁼0.021。いつもはフェノール系断熱材のλ⁼0.020なのでわずかに性能は低い。が、今回は断熱材の表面処理が重要なのでこれ選んだ。私はいつもこのブログで申し上げているが、断熱材は適材適所で選べばよく、絶対にこれがお勧めということはない。そもそも「緑の家」にフェノール系を選んだのは厚さ当たりの断熱性能が最も良いからであり、その他の大きな理由はない。しかし現在はウレタン系のアキレスZ1ボード(λ=0.018)のようにフェノール系(λ=0.019)より断熱性能が良い商品もある。
性能が高ければ同じ性能を得るのに壁を薄くできるからである。当然コストも大きく、今回の選定ではいつも使うネオマフォームが高い価格での入手になりそのため全部ウレタンボードにしている。当然ウレタン系断熱材は、断熱材の中で経年劣化が最も大きいという欠点が過去指摘されており、その改善にQ1ボードも工夫をしてきた。その一つが表面に貼ってあるアルミ紙である。そしてこれが今回のS造リノベーションにとても重要になる。このことについてはまた後程紹介するが、もう一つの大事な理由は・・・
そしてこのアルミ仕上げは室内の仕上げになる。この少し鈍いアルミのグレー色がなぜか私には大変魅力的に映る。それはまるで茶室を作るかのように普段は使わない身の回りにある材料を逆に使用する精神なのかもしれない。古来の和室の壁は、土塗り壁のまま使われることも多く、それができたのは壁を意識して触れないことで、多少ざらついた素材でも使ってきた歴史がある。土壁は触ればこぼれるように土紛が落ちるが、触らなければなんとか壁として機能する。事務所でも壁を触ることはほとんどなく、ならば断熱材のまま使っても問題ないであろうという考え。これが表面の保護膜がアルミでないネオマフォームやフェノバボードではできないこと。
何度も説明するが、重力以外(自重)建物にかかる外力を考えると、大きく地震と台風と雨(雨を外力とするのはどうかと思うが)である。それを受け持つ構造はスチールのS造。そして快適性を作り出すのが断熱と気密と空調換気であり、これは構造と完全に切り離す。このため内壁代わりとして断熱材を使うこともできるのが今回のS造のリノベーションなのである。触れる場所でなければ、その室内では生火(ガスコンロ等)は使用できないことに注意が必要なことと、排煙もクリアーが必要であるがIHコンロと窓種類と設置高に注意すれば断熱材のままで大概OK。
コメント
Miyazaki 様
コメントありがとうございます。
>気密ラインがどうなるのか気になります。
気密と防湿は同じ位置が一般的だと思います。今回は一番室内側のアルミ箔部分で確保したいと考えていますが、実際は壁では室内から見て一層目のボード外側とし、天井は合板24mmの外側、床は一層目のボード室内側としております。全部位共ポリエチレンフィルムは使用しておらず、このアルミ箔を防湿と気密の部材ととらえております。実際Q1ボードの透湿係数は2以下であり、122mm厚ではポリエチレンフィルム0.2mmの半分程度の透湿抵抗があり、これは合板12mmの10倍以上の透湿抵抗値になり防湿層として必要かつ十分の数値と考えております。実際施工中を見てアルミの鈍い光が美しいと感じております。
断熱材のアルミが表面素材
現代アートみたいな印象を受けました。
そうなると気密ラインがどうなるのか気になります。