法律の準拠と構造認識の大切さ

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構造計算をする人は必ず持っているこのマニュアル。もう30年くらい前に最終改定の定番の書。

10年以上前から構造材加工で注意していることがある。それは間柱欠きをできる限り少なくすることである。一般の読者さんにこれをお伝えしても「?」になるだろうが、構造でも最低基準となる「建築基準法施行令」の第44条では「梁や桁の中央付近の下側に、耐力上支障のある欠込みをしてはいけない。」という規定がある。

こちらは「緑の家」が許容している土台上の欠きこみ。応力的には全く問題ない位置。但しこのような耐力壁の梁よりも窓上にある梁がNGとなることが多い。

しかしながら巷ではよくこの梁下の欠きこみを見ることがある。それは建築業界で「間柱欠き」といわれ、間柱を設置しやすいように梁下及び梁上に深さ6mm~4mm程度の欠きこみ入れる加工のこと。この欠きこみがないと間柱を固定する斜め釘やビスにちょっと手間がかかるのである。しかし法律で禁止しているには根拠があり、欠きこみをすると、そこが起点となって割裂が起きやすくなる。ちょうどカップ麺についていくる調味料の袋の切れ込みのように、わずかでも切り込みを入れるとそこが原因となって簡単に部材は千切れる。よって例え6mmでも欠きこみをしている梁ならば、6mm分部材が小さくなったのではなく、本来ある部材の強さの60%(断面係数)になっているとして計算すると冒頭の本で下図のように書かれている。体感でもその程度かもしれない。仮に240mmの梁成で6mmの欠きこみが下端にあれば、その残っている梁の強さは234mmではなく181mmとしなければならいと書いてある(残存材断面係数Ze=bh’ ^2/6の0.6から)※。たった6mmの欠きこみでも234mmの梁成でなく181mmの梁成にしかならない。相当大きな性能減であることがわかる・・・これを知るとちょっと恐ろしい。※h’は正味の梁成

冒頭の本の33頁に記載

一方気を付けなければならないことは他にもある。法では「梁の下端で且つ中央付近の欠きこみを注意しなさい」とあるのでまずこの付近は原則避ける。通常の木造では長期荷重で単純曲げにおける最大の曲げモーメントに丸めて計算されているので、連続梁でもそれ以上の大きな曲げモーメントはない。この単純梁の最大曲げモーメント発生部は梁中央部分なので、ここに欠き込みがなければOKとの解釈。

構造計算ソフトでは無難な単純梁で梁成が計算されることが多い。

しかしこれは柱の直下率(1階と2階の柱が揃っているとき)が100%の時。もし直下率が100%でなく2階の1階に対する耐力壁直下率も100%でない場合、短期曲げモーメントで中央部でないとところにも最大の曲げモーメントが発生するときがある。つまり正確を期すには欠きこみをした梁材は、その一本一本の応力確かめる必要がある。それを通常の構造計算ソフトでは自動検定しないのである。そもそも法で禁止されている梁下の欠きこみをチェックする機能があるなんてナンセンスととらえるのが一般的な感覚。実際私が使う構造計算ソフトでも梁下欠きこみした時の安全検定の機能はない。あるのは仕口の断面欠損考慮のみ(これは欠き込み時のZeではなく面積形状のZe)。つまり梁下の欠きこみが可能かどうか全て手計算で行う必要がある。

短期応力の表示させると中央からずれたところで最大曲げモーメントが発生する場合がある。一般的な条件では中央付近だが、やはりチェックは必要。

そこで「緑の家」では、土台上の間柱欠きこみは原則OKだが、それ以外はデフォルトでは行わない。梁下を欠かないと施工が困難とかである箇所だけどうかと聞かれればそこだけチェックしてOKかNGかを判断することをする。つまり間柱欠きはしないほうが無難なのである。

ところが・・・いまだに間柱欠きという梁下の欠きこみが巷では普通に行われている。当事務所で構造加工図をチェックするとほとんどのプレカット屋さんで、間柱欠きをするがデフォルトなのである。それをしないように要請しているのが構造設計者としてのチェックである。

更に・・・空調ダクトや排水管が梁下を通らないからといって、梁下を欠くことを見たことがある。これは安全根拠(上の計算)がなければ大変危険である。

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