現在北海道の南部に建設される住宅を基本設計している。設計者にとって自分の住まいと大きく変わる場所の気候を想像する事はとても難しい。その時に助かるのがアメダスのデーターを取り入れ温熱計算できるシミュレーションソフトである。
新潟県を除く関東北信越(高地の除く)や中部、関西までの気候ならこのようなソフトがなくとも問題ないくらい自身の頭で想像が可能。というよりソフトよりわかる部分がある、しかし高地や北海道、沖縄などの体験している気候とかけ離れた地域では、温熱シミュレーションがないと厳しいかもしれない。
特に今回の条件は薪を燃料とする暖房計画である。薪を燃料とするときに難しいのが、いつ薪を投入できるかがポイントとなる。普段家を空ける人は投入間隔が空くので連続暖房出来ず超高断熱性能でも寒い家になる。一度4度以上も冷えた壁天井を室温と同じくするには数時間はかかる。つまり暖まるまでの数時間は快適ではない。快適になった頃に就寝することになる。
そこで今回の薪による暖房計画はある特殊なストーブを使用することでそれを緩和する計画。それは2.3tもある本体重量で蓄熱させて長時間熱をゆっくりと放熱し供給出来るように考えられたストーブ。2.3トンといえばレンジローバーVOGUEと同じ・・・更にわかり難い例えか。この重量物に51kwh/24時間を蓄熱させて暖を取る計画。51kwhとは薪を一日で14kg燃やし0.9の燃焼効率と0.9の熱効率として得られる。最大では25kg×2回の薪を燃やせる大型ストーブの設置である(今回の条件は14kg/日という比較的少ない燃料量であるが、これを増やせば温度は上がる)。
この条件で家の温度はどのように推移するか・・・そんなことを想像しろと言われても簡単に出来ないが、これをソフトに入れるとある程度把握できる。
プランを作り換気方法を決め年間の最寒日(暖房負荷最大日)に上の条件をいれる。今回は薪代がかからないので換気による暖房負荷が増えてもよいため(薪を燃やせばOK)第三種換気が候補となっている。
常時22度となるエアコンによる空調、ボイラーによる暖房とは違い一日で最大7度の温度幅が出来るが15度以下になる部屋がない。一番温度が下がっているのが給気の2/3を投入する吹き抜け付近となる結果。流石に氷点下18度の空気が130m3/時も入ってくればその冷熱エネルギーは大きい(1.8KWの冷房装置となる)。仮に起床時18度でもストーブの廻りは輻射熱が残っているので体感的には数度上がるとのこと。
晴天も手伝って家族の間では夕方5時の体感温度が25度になるので、最寒日の夕方でも暖かいだろう。
近年県外での設計が多くなっているが、その時にこのようなソフトがあるのはホントにありがたいことである。但し、条件設定の入れ間違い、数値違いをするとまるっきり違う結果が導き出されるので、このソフトがどんな人でも簡単に扱えるとは思わない。やはり手計算で温熱計算を出来るくらいの技術系の知識が必要である。