付加断熱と金塚の家でみる 断熱材の事 

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充填断熱の終っている壁。右は内部耐力壁合板貼り。

先週金塚の家内部耐力壁のチェックに伺ってきた。
外部防水チェックも同時に行えれば効率が良いのであるが、内部の耐力壁が見えなくなるとのことで、そのためだけに片道90kmの雪道を往復する。

このような雪の中で付加断熱工事が行われる。

「緑の家」は超高断熱住宅であることは当然である。超高断熱とは3~6地域においてUa値が0.29W/m2K以下となる家と考えており、通常は柱間の断熱材だけでは不可であり、外部に付加断熱をして総壁厚が250mm程度の厚い壁になる。この付加断熱材の素材がGW(グラスウール)を代表とする繊維系なのか、フェノールフォームを代表とする樹脂板状系なのかで断熱材の厚さはかわる。

「緑の家」は後者の樹脂板系が標準仕様で、もしご希望があればGWをはじめとする繊維系断熱材で行ってもよいと考えている。特に断熱材の素材に拘りはない。では何故樹脂板系断熱材を標準としているかは、

1.総コストが安価

2.雨に少し強い断熱材

の2つである。

断熱材自体はGW(グラスウール)の方がフェノール樹脂板系の半分以下で入手出来る程安価である。しかしGWの断熱性能はフェノール樹脂板系を1とすると0.6程度の断熱性能しか無い。加えてGWの付加断熱も充填となり木の下地部分は断熱欠損として計算すると、実質外貼りフェノール樹脂板系の半分程度の断熱性能になる。よってGWの厚さを2倍に増やし断熱性能を高めると、壁厚は60mmほど増える。この60mm増やす施工で断熱材自身のコスト安はなくなり総コストはフェノール樹脂板系と同じくらいになる。同じコストなら雨に多少強いフェノール樹脂板系のほうが使いやすい。付加断熱施工は主に外部側からの施工になるので、断熱施工時には雨が降ると濡れる。重要文化財工事のように仮設大屋根をかければ濡れないのだが、北陸地方のような冬期に雨が横殴りに降る地域では、足場ネットだけではまず難しい。また付加断熱工事は3日間はかかるので3日間雨が降らない冬期もないし、施工ができたところから外壁で塞ぎ雨から守ると、正しく施工できているかどうかをみる工事監理者が現場に3日間張り付くことになる。ここでの工事監理者とは現場監督とは違い確認申請の書類に記載される法律によって規定され、建て主さんが自身で選定した有資格者である建築士のこと。そんな事をトータル的に考えると付加断熱は120mmまではフェノール樹脂板系の方が割安となるのでそれを採用している。

さて・・・何度も申し上げるが付加断熱はフェノール樹脂板系であっても繊維系断熱材であっても、適切な使い方ならどちらでも問題ないという認識である。ところが巷ではフェノール樹脂板系の付加断熱は壁内結露などが心配されるので取り扱わないという考えが未だにある。そこで今回は先週行われた「住まいと環境 東北フォーラム」という高断熱高気密では歴史が30年もある団体が開催したセミナーを紹介したいと思う。この団体の理事長は40年ほど前から住宅のシェルター性能について国内では最も多い論文を発表し、高断熱高気密、換気から健康までの解明をされている先生である。そのセミナーで使われたパワポであるが転載禁止なのでここではご案内出来ない。さしさわりのない題名と今回の主点のみは何か無いと話題にならないので勘弁してほしい。

その主点とは、↓のブログ取り上げた内部結露計算の記事にもある透湿抵抗値だる。

プラスチック系付加断熱と内部結露
ご存じのとおり「緑の家」はプラスチック系断熱材を柱の外側に付加断熱として使用している。透湿抵抗がグラスウールより二桁以...

上のセミナーでは付加断熱の防露計算を定常一次計算において安全側で行っており、その時の室内側に施工する防湿シート(気密シート)の透湿抵抗が0.082で行っていることである。私はこの数値を更に安全側の0.07にしているが、一般のネットで検索する防湿シートの透湿抵抗値は0.14と高い。つまり危険側で表示されており以前当ブログで質問があった時に

「なぜオーブルデザインさんでは防湿シートの透湿抵抗値を0.07と厳しい数値でおこなっているか?」

に対し

「実際の現場では防湿フィルムを留めるのに無数のタッカー針を使うので透湿抵抗は実際に低くなる」

と答えている。このセミナーで講師さんが使った透湿抵抗値も0.082と当事務所が使う0.07にとても近い。これはJIS6930:1997防湿フィルムA種50μの数値でB種が0.144であるが、悪い方で計算している。このA種50μとは一般に袋状のGWに付属する防湿層であり「緑の家」では全く使わないが、先ほどのタッカー穴など施工性を考えるとA種数値が妥当なのだろう。尚、袋状のGWはその留め付け特性からタッカー止めの影響が少なく、そのままの0.082の透湿抵抗でもよい。このあたりは施工まで知っていないと机上の空論になる。

この表の数値で外気と室内条件は

外気-11.6度、RH70 %
室内 10度、RH(相対湿度)70%

で樹脂系付加断熱板25mmで内部結露無しとの判定。25mmより厚くなればなるほど内部結露はし難くなる。よって北海道でも現在の主流の付加断熱は樹脂板状の断熱材になってきている。これは過去何度もその情報をのせており、正しく使えば広く市販されている断熱材は何をつかってもよい。このため「緑の家」では付加断熱をGWでも樹脂系板状断熱材のどちらでもよいと考えている。どちらが標準かは同じ断熱性能ならコストの安価な樹脂板状断熱材をチョイスしているのである。

金塚の家の戻るが・・・

綺麗に充填されるGW。外壁の間柱は全て45mm×120mmである。一般の住宅は30mm×105mmであり1.5倍の断面となる。

最近防湿シートの代用として合板をかえして行う高気密施工も多く行われるが、この場合厳密には防湿シートがない計算を行う必要がある。防湿シートの透湿抵抗より合板の透湿抵抗は1/7~1/10まで下がるため内部結露の可能性が高くなりやすい。このため「緑の家」では原則防湿シートの連続で合板はかえさない事が基本となる。原則を守ることが出来ないところとして、外壁に接する面材耐力壁がありこのため内部耐力壁は「筋かい」がメインになる。

内部耐力壁は筋かいがメイン。筋かいなら外壁側の防湿シート(気密シート)の連続性を保ちやすい。

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